神隠し8
なかなかスパルタな音読鍛練を終えたら夕飯です。
言葉は通じないけどさ、老人こと里長とガウェンさんと一緒の晩餐ですね。
ガウェンさんとの交流で多少は現状が把握できている。
やはり、ここは異世界らしく、彼からは「招かれ人」と呼ばれたよ。
どうも過去に、こちらへと迷い込んだ者達が居るらしく、そんな方々による貢献が多々あるのだとか。
無論、一番に帰れるかを訊いたのだが…残念なことに帰った者はいないのだとか。
マジかぁ…
でぇ、あれだけ長い時間掛けて分かったのが、このことと、ここが『ザリュッヅ』の里で老人が里長であることだったよ。
いや、ガウェンさんが郷主に仕える役人と言うこともか…
ただ、これ以上はお互いに疲れて断念。
まっ、仕方ないやね。
ってもさ、部屋でマンツーマンのスパルタ式レッスンが待っていると知っていれば、もう少し頑張ったんだがな。
いくら若くて美人なナイスバディ女中さん相手でもさ、キツいのは変わらんかんな。
まぁ晩餐に現れた俺が疲れ果てているのを見て、ガウェンさんがギョッとしてたが、里長は苦笑いしてたよ。
知ってたな、コンニャローめが…
晩餐だが、テーブルへ料理がズラリと並んでおり、食べたい料理を使用人の方々が取り分けてくれるみたいだ。
いやね女中さん?頼んで無いのに取り分けて…野菜も食べなきゃ駄目?って、そのカードは、あらかじめ用意されてたと…
うん、確かに野菜の煮物、美味いっす。
って、照り焼きした肉ですか、さいですか…
俺は近くに置いてあったマヨネーズを匙で掬い皿へと。
女中さんがギョッっとしているが、知らんプイ。
テリマヨは正義です。
興味を持ったのか、ガウェンさんが真似をしてな、恐る恐る口へと。
一瞬驚いた顔をした後でガツガツと。
いや、そこまで嵌まりやすか、さいですか。
里長も真似して驚いてたよ。
しかし、このマヨネーズは酸味が強いな。
まぁ安全性を考慮すれば仕方ないがな。
元来、マヨネーズは傷み難く雑菌に強い代物。
それは混ぜ合わせる酢の効能によるものだ。
なので、家庭で自家製マヨネーズを使い食中毒なんぞになるのは、混ぜ合わせる酢の分量が少ないんだろうさ。
だいたい生卵の安全性が確保されてない国でもマヨネーズは売っている。
酢で滅菌されるかんな。
で、だ。
酢と卵と油を混ぜるだけのお手軽調味料であるマヨネーズが、ここ異世界にあってもおかしくはあんめぇよ。
ってもテリマヨについては知らんかったみたいだけどな。
えーっと…マッシュポテト…だね。
マヨネーズを混ぜたポテサラじゃないんだぁ…
まさか、マッシュポテトにマヨネーズを合わせることを知らんとか?
で、マッシュポテトへマヨネーズを混ぜ、切ったハムと野菜も追加して混ぜ混ぜってね。
うん、簡易ポテサラの完成れす、うまうま。
流石に行儀が悪かったみたいで叱られましたけどね、なにか?
でな、里長指示で厨房でポテトサラダが作られ運ばれて来やした。
いやさぁ、そがぁに貪るように食わんでも…
どうやら気に入ったみたいです、はい。