神隠し75
なんだか、お転婆聖女って響きが似合いそうなんだが…
「聖女様で御座いますが、現在は深森へ探索に出向かれておられますな。
どうも室内で大人しく過ごされるのは苦手とされておられまして、外で走り回る方がよろしいのだとか。
まぁ…聖女様の森歩きにて、様々な恩恵も受けておりましてな。
そのため、強くお諌めも出来ませぬ。
聖女様が鍛え上げた、戦乙女達で構成される騎士部隊である、ヴァルキュリアを引き連れ、度々遠征されておられるのです」
をいをい…お転婆っうレベルを越えてんぞっ!
「銀白の鎧を纏った乙女騎士…憧れますわぁ!」
ヒューデリア嬢が食い付いたな。
「なら入隊したら良いじゃん」
そう軽く告げたらさ。
「そんな簡単に入隊など出来ないですわぁっ!
乙女騎士になるには真素操作に優れることもですが、何よりも武術を修めないとならないのですの。
私には乙女騎士と成れるほど、武術の才はありませんもの…」
余程憧れていたんだろうな、非常に悔しそうだ。
まぁ、見た目が御蝶婦人なヒューデリア嬢が鎧を纏った騎士…イメージがな、無理。
「人には向き不向きがあります。
ヒューデリア様は真素使いの才が、おありではありませんか」
アリンさんがフォローを。
流石、できるイケメンは違うぜっ!
そんな話をしている間にも、馬車は進み…
「うおっ!」
思わず声がな。
真操具にて明るく保たれていたが、日光と比べるとな。
馬車の窓から明るい日の光が差し込み、その明るさに驚いてしまったんだ。
っか、外?
登って…そうか、王城の屋上だったよな。
馬車の窓から外を見ると青空が広がっている。
やけに空が近く感じるな。
俺がイメージする白亜の宮殿といった感じの城が窓から見える。
もしかして…あそこにむかってる?
城下町と思わしき場所もな。
いやいや、ここが王城の一部でしかなく、単なる屋上って…おかしくね?
屋上部のみで王城と、その城下町と言われても信じてしまうぞ、これ…
「俺、城下町で暮らしても、良いかなぁ?」
是非、そうさせて頂きたいです!
したらさ、エルドリア・メイド長が呆れたようにな。
「あそこへは、天位階級である招かれ人のお世話をする者が、住み暮らす場所でございます。
住人のお世話対象である、招かれ人が住む場所ではございません」
そう却下されてしまったよ。
いやいや、俺には過ぎるほどの屋敷も見受けられる規模なんだがな。
っかさ、ヴァルハラ館って、絶対に館でなく城だよね。
イヤにデカイんですが?
ヴァルハラ館の城門内へ小高い丘が見えるわ、滝が流れ落ちてるのも見受けられわで、地上言われても違和感はあるまい。
遠目に伺ったらだけで、その規模なんだがな。
城壁内は、いったい…どうなってんだ?
っかさ、巨大岩盤山の頂上でこれって…どんだけデカイんやねん!
絶対に王城扱いは、おかしいやろっ!
ヴァルハラ館の周囲には水堀が回らされているな。
魚が放たれているようだぞ。
なぜ分かるって?
それはな、水鳥が魚を捕らえたのか、嘴に咥えながら飛び去って行くのが見えたからだよ。
大自然だなっ、をいっ!




