神隠し74
馬車へ乗り込むと馬車が走り始める。
貴賓の間に帰るのかとか思ってっと…
「まさか、私がヴァルハラ館を訪れる日が来るとは…」
「訪れると言うか、住まうのですわよね、私達…」
アリンさんとヒューデリア嬢が、行き先について話してたから、貴賓の間でなくヴァルハラ館へ向かってることが分かった。
そいやぁ、俺の荷物は、既にアチラへ運び込まれてんだっけか?
相変わらず、ご主人様よりも先んずる荷物だなっ!
それは、そうと…
「謁見室のことで訊きたいことがあるんだが?」
そう尋ねると、アリンさんとエドワード執事長が同時にな。
「なんでしょう?」
「いかがなさりました?」
ってな。
互いに顔を見合わせ…
「王城の情事には、そちらの方が通じておられると」
そう告げて、アリンさんが引く。
流石、大人の対応だな、うん。
「では、僭越ながら、私目が」
執事長が告げるので質問を。
「色々と訊きたいことはあるんだが、まず、皇王様の横に居た武人、騎士か?
あれは、誰なんだ?」
皇王様の横へ居た巨人。
アレってさ、誰?っか…人間?
「グリム閣下のことで、ございますな。
グリム閣下は元帥であらさられ、丞位御3家が1つ、ドーマ家の現主でもあらせられます。
ドーマ家は祖皇、善昇 義昭忠常様が、深森より連れ帰られた巨人妃様の係累で御座います。
ドーマ家の方々は膂力に優れ勤勉実直、質実剛健と称される方々が多く、近衛として重用されてますな。
謁見室にて控えて居られた方々も、ドーマ家の方々で御座います。
そしてグリム閣下は、数世代ごとに現れる先祖返りと言うもので、祖となる巨人族の血が、色濃く出られておられるとのこと。
そう言う意味では宰相閣下であらさられる、コウスケ閣下も祖先の血が濃く出ておられる方ですな。
宰相閣下も丞位御3家が1つ、ゼシュル家の現主であらさられ、祖皇様が深森より連れ帰られた妃の1人を祖とされておられます。
あの場にて、お気になろうことは告げたつもりではありまするが、他にも御座いましょうか?」
こちらが訊きたいことの大半は聞けた訳だが…
「そうですね、あそこへ居た方については、取り敢えず分かりました。
それでですね、聖女様について、教えて欲しいんですが…どんな方なんです?」
いやさぁ、謁見中に聖女様のことが、何度か出たよな。
宰相様の話振りから察するに、聖女から想像するような、お淑やかな性格とは思えないのだが…
「ああ、聖女様…の、ことで、ございますか…」
どんだけ、躊躇うんやねん!
「聖女様が招かれ人であらさられることは、ご存じだと思います。
御名を升末 靖子天と申されまする。
性格は天真爛漫、ですが、大雑把と言えば言えるでしょうな。
大らかで優しく活動的ですが、細かなことは気にしない奔放な方で御座います」
なんかさぁ…聖女=お淑やか、を、完全に覆してきたぞ、をいっ!
聖女様…いったい、どんな方なんだっ!




