神隠し73
謁見と言うか、顔合わせと言うのか…不思議な対談が終わる。
まぁ、国としては招かれ人を保護と言う名の取り込みを行い。
招かれ人たる俺は衣食住の補償と身分の補償を得た訳だ。
放り出されないようにしないとな。
皇王様は、俺との謁見のため特別に時間を開けていたそうなのだが、仕事が暇な訳ではない。
なので、何時までも邪魔は出来ないだろう。
「皇王様、お時間とか大丈夫なので?」
そうつげると…
「ドルフだ」っと。
っか、なに?
「皇王様じゃねぇ、俺の名はドルフ!
せっかくタメ口を利く相手なんざ滅多に現れないんだ。
だから名前で呼べ」
へっ?皇王様を名前で?
「流石に、それは…」
「ドルフだ、簡単たろ、和弘」
あっ、等々名前呼びになってぇーらぁ。
なんだか引きそうもないな、面倒臭ぁ~
仕方ない…
「ドルフ様…」
「様は要らん、ドルフだ」
っ!もぅ!敬承付けたらネバーエンデング?黒山羊さん化ってな。
「分かったよ、ドルフ。
で、そろそろ謁見は終えた方が良くないか?
目的は達してるんだろ?」ったらな。
「こんな楽しい謁見なんぞ、滅多にないんだ。
もう少し楽しませろ」
そんなことをな。
「陛下、後で苦労なさるだけと、お分かりの筈と存じまするが?」
うん、宰相様、多分だが額に青筋が浮かんでるんだろーなぁ…
肉に埋もれてっから分からんけどさ。
宰相様は、ある意味で最強のポーカーフェイスと言える。
顔が肉弛みに埋もれて窺えないかんな。
額、繭、目、口が肉弛みの下だ。
顔と呼べるパーツが、殆んど埋まってるて思えば良いかな。
初めて顔を見た時は、妖怪?なんて…
失礼ですね、はい。
「コウスケ、たまになんだから、もう少しくらいは…」
「陛下、卑の名前呼びは、お控えくださいませ」
皇王様…ドルフが告げると、すかさず宰相様が訂正をな。
しかし宰相様の名はコウスケなのか…
つくづく、予想に当て嵌まらない人だなぁ~
「分かった、分かった。
では、カズ。
会えて楽しかったぞ。
時間が合えば、また会おう」
とうとう愛称みたいな呼び名になっちまってるよ。
俺もドルちゃんとか…うん、ないな。
「畏まりました。
お時間が合えば、ですね。
では、ご自愛を」
そう告げて、退室てぇか、退散ね。
「ぬっ?カズ、それは、どう言う…
あ"っ?
いや、コウスケ…あ、いや、宰…」
なぁ~んも聞こえん、なんも知らんもんねぇ~
謁見室から出ると、エドワード執事長がエスコートしてくれる。
っか、良く考えたら前後を執事長、メイド長に挟まれ、左右にはアリンさんとヒューデリア嬢。
なんだか、護衛されてるVIPのようだな。
そんなん思いながら謁見の間から出て馬車へと。
車内へ入りドアが閉まると…
「っはぁ…
流石に疲れましたわっ…
しかし葵様も、とうとう葵天、天位階級となられましたわね。
態度を改めませんと」
そんなことを言い始める。
「止してくれ、息が詰まちまうよ。
逆に葵天として2人へ言うぞ。
俺のお付き扱いらしいからな、もっと砕けた接し方にしてくれ」
俺が告げると呆れられる。
「そこは普通、「もっと敬え」なのでは?」っとアリンさんがな。
「止してくれよな、もう十分以上だ」
ほんと、勘弁して下さいな!




