神隠し72
「つまり葵は、働かなくても良いのに、働きたいと?」
「いや、働きたいと言うか…何もしない状態での放置はキツいな、っと。
遊び暮らすと言う訳には行かないし、っか、遊び暮らすほど、娯楽もないだろ?
暇を持て余すくらいならな」
えっ?働かざる者?まぁ……せやね。
「そうか、そうか!
なら、俺の……」
「陛下?」
「コホン、いや、なんだ…
なかなか殊勝な心構えであるな。
しかし、天位階級の者が行う仕事か…
なにかあるか?」
宰相様へキラーパスってか?
「葵天が働くと仰るのならば、鳥車で真素を探究されればよろしいかと。
ハウマン家の鳥車は帰さねばなりませぬので、代わりを皇家から出せばよろしいでしょうな」
いや、そんな簡単に用意できるのかよっ!
「ふむ、仕事にしても、申し分ないんじゃないか?
よし、それで行こう」
決めるの早いな、をいっ!即決かよっ!
まぁ、元々予定してたことでもあるから、構わんちゃ構わんがね。
「分かった、それで良いよ。
それで俺は、用意される鳥車で暮らせば良いのか?」ったらさ、皆に怪訝な顔をされた。
なんか変だったか?
「葵天、畏れながら申しあげまする。
鳥車は移動に使用すする乗り物であり、住む場所では御座りませぬ。
あのような場にて、葵天ほどに位高き御方が住み暮らすなど、とんでもない話で御座います」
宰相様が血相を変えてな。
いや、鳥車ってさぁ、下手な屋敷よりデカイよな。
少なくとも、日本の平均的な一戸建て家屋が小屋に思える規模だぞ。
俺の住み暮らしていたワンルームマンションっう名のアパートその物より遥かにデカイんだぞ。
俺の6畳1間の部屋となんか…悲しくなってきた、止めよう。
「じゃぁ、俺は、何処へ住むんだ?」
元の世界の自宅レベルではないんだろうが…お手柔らかに願いたいものである。
「何処って…何処かへ行くつもりだったのか?」
皇王様が、そんなことをな。
「何処かへって、王城へ住む訳にはいかないでしょうに…」
謁見のために訪れたが、ここで暮らす訳ではなかろ?
「いやいや、何を言っておる。
天位階級の者は、王城の屋上へあつらえた屋敷へ住み暮らすものだぞ。
俺も招かれた時にしか行けないが、それは素晴らしい屋敷だったな。
王城の造りを近付けたいと考えてはいるのだが、国の最高技術で常に改修されている屋敷だからなぁ…
あそこへ住み暮らすのだから、羨ましい限りだ」
そんなことをな。
っか、決まりごとなのね…
豪華絢爛な住み難い場所に思えて仕方ない。
チェンジで!って…ダメ?ですよねぇ~ふぅ。
「既に葵天の荷物はヴァルハラ館へ運ばれておりますれば」
をいっ!名前ぇっ!
ヴァルハラって、あの世逝きかよっ!
誰が名付けやがったんだよっ!
天位階級が暮らす天宮に相応しい?
なんか違わね?
「むろん、お付きと成りし2人にも同行させますし、貴賓の間にて執事長を勤めておりましたエドワードと、メイド長を勤めておりましたエルドリアを専属に付けます。
暮らし易いように配慮致しますが、我々は普段立ち入れない場所なのです。
なので、何かあればご連絡いただければと。
なお、王城の屋上へは鳥車の待機場がございます。
徒歩にて然程時間が掛からぬばしょにて、明日にでも葵天専属の鳥車を用意いたしましょう」
そう宰相様に宣言されてしまう。
もう決定事項なのね、分かりたくないけど、分かりました。
ふぅっ………




