神隠し71
天位にて真素を探究する場は整えて頂けるとなった訳だが、謁見後の過ごし方は全く不明だ。
なにせ、この世界へ迷い混んでから移動に次ぐ移動であり、ろくに腰を落ち着かせてない状態だ。
今逗留している貴賓の間も仮の宿に過ぎない訳で、どのように暮らして行けば良いのかさえ不明ときた。
元の世界と同じ仕事と言う訳にもいかないだろうしなぁ~
サラリーマンなんて、こちらの世界に…ないよね?
「この世界にサラリーマンって、居ますか?」ってね。
「サラリーマン?
居ると尋ねるのだから生き物なのだろうが…どのような生き物のことなのだ?」
ですよ、ねぇ…
「生き物ではなく、職種?
雇われて給料を貰い働く者達のことですね」
「んっ?雇われ賃金を貰い働く者なら普通に居るぞ。
城で働く者達もだが、商家の使用人などなど、色々だな。
その者達のことで良いのか?」
皇王様が首を傾げながらな。
しまったっ!明確な説明が難しいぞ、これ!
「元の世界で会社に勤める勤め人のことなんですが…会社って、分かります?」
無理だよね。
「会社?他国の招かれ人が告げていたと聞いたことがあるような…」
「商家形態の1つと捉えてよろしいかと。
商家とは違い、個人所有でない営利団体も存在するとのこと。
葵天が申されるサラリーマン?は、これへ所属する者のことかと」
宰相様が皇王様へ説明をな。
なるほど、そう告げても良かったかのかもな。
「ふぅ~む、でっ、そのサラリーマンが、どうかしたのか?」
そう尋ねられた訳なのだがな。
「そのですね、私が地球でサラリーマンだったので、同じような仕事があるのか気になった次第で」
「そのサラリーマンとやらか?」
う~ん…サラリーマンじゃぁ対象が広過ぎるか…
「そうですね、いや、物販って訳でもないし…」
ネットワーク機器の営業支援に機器設定の支援、トラブル対応などが、最近の仕事だった訳だが…流石にネットワークは、なぁ…
「物売りの手伝いや、それを使えるようにしたり、問題が起きたら対応したりですかねぇ」
「えらく大変そうな仕事だなっ!?」
確かに…いま告げた内容なら、かなり厳しく感じられてしまうか…
だが、今時の会社で、1から部品を造ってる会社などない。
修理は部品交換が基本となるし、テスターを使った確認もマニュアル化されているしな。
まぁ…想定外のトラブルも多々発生するが、そこら辺は慣れだな。
特に新商品ってヤツがヤバイ。
大概がトラブル付きだからな。
改定リリースの方が、まだ良いだろう。
それでも、トラブル時には、トラブルがなっ!
物販の方は営業同行などで自分から営業へ行くことはなかった、だが不勉強な営業のフォローに四苦八苦したこともな。
報連相もできんヤツもいたし…
そんな話をしてもみたが…解らんってさ。
ですよ、ねぇ。
「それで、結局、何を言いたいのだ?」
困惑させてしまったな。
「いや、戻れるまで、何の仕事をすれば良いのかな?って思いまして…」
働かざる者は食うべからずだな。
したらさ、呆気にとられたような顔でさ。
「いや、招かれ人で天位階級なのに、働くのか?」
気が知れんった感じでな。
いやいや、異世界ニートになるつもりは、ないかんなっ!




