神隠し70
思わず口にした言葉が不敬ではなかったかと、青くなる俺を、不思議そうに皇王様が見て告げる。
「如何した?」っと。
すると、おもむろに宰相様がね。
「ふぉほっほほぉっ、葵天は陛下へ発したる砕けた言葉に気付かれたのでしょうな。
不敬を仕出かした、とでも、思われたのでしょう」
宰相様が告げると、合点したような皇王様がな。
「はっはははぁっ!
そんなことで青くなっておったのか?
葵様は俺よりも身分は上。
対当に話しても問題はないのだ。
いや、畏まられてしまっては、かえって俺の立場上、外聞も悪い。
俺もタメ口効くヤツが居らんで、もの足らんかったところだ。
どうだ、兄弟分扱いで、タメ口てぇのは?」
な、なんだぁ~
急に、益々フレンドリーになったぞっ!
「全く陛下にも困ったものですな。
聖女様に影響され過ぎですぞ!
それは、そうと葵天。
御霊におかれましては、お言葉使いについて、お気に掛けられる必要など、ございませぬ。
過去に招かれ人の言葉使いについて、色々と問題となったことがございます。
それもあり、最高官位とも、なっておるのです。
御霊より同等あれど、上などございませぬ。
そのような理由から、お言葉使いに、お気を使う必要は無用かと」
そのための天位でもある訳ね。
言葉使いで、不敬っで、バッサリ、は、回避されると…
その点については、天位てぇ官位には感謝ではあるんだが…
「あ~そのな、確かに、言葉使いに関して気に掛けなくて良いのは助かるんだが…
その、妙に畏まった態度と言葉使い…なんとか、ならんかね?」
そう宰相様へ告げるとな。
「申し訳ありませぬが、なりませぬ」っと。
「そこをなんとか!」
「如何ともし難く」
埒が明かない…
「言葉使いについては、追々で良かろう。
それよりもだ、葵は真素操作について悩んでおる、で、良かったか?」
葵様から葵になっとる。
皇王様の中では兄弟分扱い決定か?
「そうですね。
さきほども言ったように、鳥車内でしか真素操作できないんですよ。
鳥車って特殊だから常時用意できないでしょ。
だからって、普通に真素操作できるように習ったら、真素感知を覚えますよね?
推論ですが、鳥車内で行った真素操作は、真素感知ができないことが、前提なんです。
つまり、真素感知を覚えてしまったら、行えなくなる可能性がある訳ですね。
だから真素操作を覚えるため、色々と試行錯誤を行いたいんだけど…」
「鳥車が用意できぬゆえ、行えないと?」
分かってんじゃんか。
皇王様が俺の言葉へ被せるように告げるとな。
「なれば、鳥車をご用意いたしますぞ」っと、宰相様がな。
「えっ!?鳥車って、そんなに容易く用意できるの?」
思わずヒューデリア嬢を見てな。
「皇家と一緒にされては困りますわ。
領家ていどで鳥車を得て運用するのは、なにかとありますの。
葵天は最高権力者なれば、命じれば御用意いただけるかと」
いや、そのな、何時もと違い過ぎる…
まっ、謁見室内なんだから、仕方ないのかね。
どうもヒューデリア嬢には元気に突っ込み気味での返答を期待してしまうな。
っか、そんな性癖は無いがなっ!




