神隠し7
ガウェン氏とのやり取りに使っているカードなんだが、日本語とこちら側の言葉と思われる文字が記載されているんだよ。
辞書兼翻訳カードつうところかねぇ。
誰が何の目的で作ったのか分からんが、木板で作られたカードは、今の俺には有用だ。
ただ木板だから厚みがあり、重量もそれなり。
多くを持ち運ぶことはできまい。
しかし必須に近い代物でもあるので、分けて貰えないかと交渉したんだが…流石に貴重な物らしく、分けては貰えなかったよ。
トホホホホッ。
ガウェン氏との交流は昼食を挟みつつ進んだ。
昼飯はホットドック擬きだったな。
まぁ、ソーセージではなく、炒めた肉と野菜が挟んであったけどさ。
サンドイッチではないが、打ち合わせしつつ食べるには良い感じだったよ。
サンドイッチっちてさ、サンドイッチ伯爵がカードゲームしつつ摘まめるために作らせたてぇのが通説だが、実はパンに具をでも挟んで食べるというのは、それ以前からあったらしいな。
まぁ、有名にしたエピソードがサンドイッチ伯爵の行為だったと言うことなんだろうね。
パンを噛りながら、ふと、そんなことをね。
いや、だってさぁ…ゼスチャーを交えつつカードで意思の疎通って結構辛いのよねぇ、これさぁ、ふぅ。
それはガウェン氏も同様なようで昼の2時半頃にはお開きに。
晩餐には彼も一緒とのことだが、それ以外では明日の朝までフリーってね。
ようやく解放されたぜぇっ!
何歳になっても勉強てぇのは疲れるし苦手さね。
ましてや必要に迫られたとはいえ強制ではな。
っか、衣食住が何故か保証され、上げ膳据え膳てぇぬるま湯に浸かってちゃぁ緊迫感がねぇ。
だが…本来、言葉が通じぬ見知らぬ場所へ、いきなり放り込まれたら命の危険さえ有り得るさね。
今の状態がご都合主義的な奇跡であり、もっと緊迫感を持つべきなのだろうが…ダルいでござる~ぅってか。
そんなん思いつつ、ゴロゴロしようと部屋へと到り椅子へと腰掛けるとな、良い笑顔をした女中さんがガウェン氏から借り受けたカードを持って近付いて来た。
いや、まさか…いや、うんね、まさかでした、はい。
今度は女中さんとカードを交えた交流会っう勉強会れすorz
お、俺のゴロゴロタイムがぁ~
まぁ、無言に近いカードを中心のやり取りだったガウェン氏との交流とは異なり、女中さんはカードを示しつつ音読してくれる。
うん、実に綺麗な声ですね。
ってチゲぇっ!
えっ!?俺にも音読しろ?って違う?日本語ではない??そちらの言葉で…
っうことで、カードに書かれた、こちら側の文字を音読する勉強会がスパルタ式に行われたのでした。
サド!鬼ぃぃぃっ…い、いや、なんでもねーっす…
一瞬、女中の背後に多頭蛇をバックにした般若様が見えたぜっ‼
くわばら、くわばら…