神隠し64
貴賓の間玄関にて馬車へと。
あんなぁ、城内を馬車で移動って、なによ?
昨日もだったが、馬車で移動しないと時間が掛かり過ぎるって、アータ…
まぁ、岩盤で出来た山を刳り貫いて造られたてぇ~んだからデカイのは分かる。
分かるんだが…そもそも、巨大岩盤たる山1つを城に仕立てようてぇ考えが理解できない。
まぁ、実際に出来ちまってる訳なんだが…俺ん中の城てぇイメージが、ガラガラとな。
軽快に走る馬車は次々と坂を昇って行く。
坂を上がる毎に層が変わると考えるならば、結構な層を走破したはずだ。
って、いつ着くんだよっ!
そう思い始めた頃に、通路から刳り貫かれたドーム状の庭へと。
貴賓の間玄関前の庭と似ているとも言えるが、規模が違う。
様々な彫刻像が、さりげなく飾られてもいるな。
噴水もだが、滝まであるぜ。
芝生と林に花壇が調和するように整備されているんだよ。
この規模だと整えるではなく、間違いなく整備だろう、うん。
鹿やウサギに小鳥とかリスね。
うん、見える範囲だが小動物…なんて、チワワ?
こちらにもチワワって居るんだねぇ。
おっ、白猫さんだね。
なんで2足歩行?
猫、猫なの?
そんな庭を馬車から見ている間に玄関へと。
城門内に、何ヵ所玄関があるんだよっ!
誰も答えてくれませんけど、なにか?
ただな、玄関前のお出迎えが、今迄とはなっ。
重厚たる鎧兜とマントを纏った騎士達が、花道のような感じで左右に列をなして並んでおり、俺達に、その中を歩いて行けと…
イヤ過ぎる‼
「ヒューデリア様、レディファーストです。
どうぞ」ったらさ。
「そんな嫌過ぎるレディファーストは結構ですわ」って断られたよ。
ですよねぇ。
そんな俺に溜め息を吐いたエドワード執事長がさ、俺達をエスコートしてくれるようで。
いやぁ、出来る執事長は違いますなぁ~
そして、俺の右にアリンさん、左にヒューデリア嬢がな。
3歩後ろが定位置なのか、エルドリア・メイド長が陣取ってる…はず。
気配が全く感じられないため、後ろに居るのか分からないんだよっ!
流石は忍びの者っ!
花道を抜けるとな、恰幅の良い中年紳士が出迎えに。
いや、その…貴族の装束なんだろうが、俺達と同じ衣服なのに、俺達が霞むほどに酷い!
あれはギャグではなく醜悪で害悪とさえ言えるだろう。
5段腹がタイツのために強調されとるがなぁ~
でっ、そんな方は宰相様でな、招かれ人を出迎えるためと、態々出向いて来られたと。
いや、チェンジで。
そうは行かず、執事長に替わって宰相様がエスコートを。
執事長はメイド長の横へと下がった…はず。
もう、ヤダ、この長々コンビっ!
見えないと存在が感じられないんですがっ!
隠密過ぎるだろっ!どこの服部君だよっ!
でぇっ、タイツでムチムチな足を締め上げ、上に寄せた肉と5段腹を、ゆさゆさと揺らしならがらエスコートして下さる宰相様。
後ろ姿も厳しいものがなっ!
この宰相様、良い方、うん、良い方なんだとか。
姿は慣れるしかないだろうなぁ~
たけど自分で歩けるだけ良いのかね。
星戦争の邪魔な帽子みたいに輿に乗らないと動けないほどじゃないし…
だからさぁ、眉を顰めるのは、およしなさいってば。
ヒューデリア嬢にも困ったものだ。




