神隠し63
食事を終え、お茶をいただきつつ寛いでいると、エドワード執事長がさ。
「では、そろそろ、謁見の準備をいたしませんと」ってな。
っか、待て、いやさ、待て、ついでに、待て。
謁見って…どゆこと?
普通は謁見のためにアポイントメントは必須でしょうよっ!
俺はさ、昨夕に、ここへ到着したばかりだぞ!
そんな俺が謁見って、おかしくね?
慌てる俺へエドワード執事長がな。
「葵様が、こちらへ向かわれておられることは、逐次報告が上がっておりましたゆえ、それに合わせてスケジュール調整を行われておりました。
ですので、何時でも謁見可能となっておりますな」
どうやら本日の謁見は、決定事項のようだ。
「それでは謁見、頑張ってくださいまし」
ヒューデリア嬢は、役目が終わったと言わんばかりだな。
「王城貴賓の間へ留まる栄誉までいただき、感謝いたします」
アリンさんまで別れのように。
そんな2人へエドワード執事長がさ。
「はて?何を言われておられるので?
お2方も葵様の付き添いとして謁見となっておられますが?」っと。
執事長に告げられて、驚く2人。
自分達だけ逃れようとするからだ!
ざまぁっ!
っても、俺の謁見がなくなる訳ではなく、俺をメインとする謁見な訳で…
胃が痛い………
貴賓室へと戻るとな、ケバケバしい装飾がなされた服がさ。
下は…まさか、タイツ?
中世貴族が纏うような出で立ちってね。
まさかさぁ、それを、俺が?
無理ぃぃっ!っても逃げられません。
回り込まれてしまいます。
あの絶対に逃れられない…しかし、回り込まれてしまった…です。
やはりメイドさん達は、忍者なのではないでしょうか?
イヤだぁぁっ!ダメっ!アーっ!
服を、ひん剥かれ、アノ伝説的なる出で立ちへと。
姿見で自分を見て絶望を。
なに、このモッコシ感…
「大変ご立派ですこと」
いや、何が?
この世界の貴族は、おかしいのかぁっ!
っか、同じ出で立ちと聞いている中世ヨーロッパ貴族達もだっ!
恥ずかしくないのかよっ!
俺は凄く、恥ずかしい、です!
特にタイツのせいで浮き彫りとなったナニがぁぁっ!
「エレクセントでダイナマイツですわぁ」
いや、ダイナマイツって…ダイナマイト、あんのかよっ!
って思ったらな、言い回しだけが伝わったらしかった。
ちなみに、外来語だそうです。
要らん言い回しを伝えなっ!
上は金糸銀糸で刺繍が施された紺色ベースのケバイやつ。
靴が金色ブーツって、なによっ!
まるで芸人、チンドン屋だな。
それが、今の俺だとは…トホホホホッ…
面妖な出で立ちへと仕立てあげられた俺は、嫌々貴賓室より出る。
貴賓の間玄関にてアリンさんとのご対面。
互いに顔を見合わせ溜め息を。
「王都貴族の出で立ちは、凄ざまじいと聞いてはおりましたが…ふぅ」
そら、溜め息も出るわな。
「やはり、こちらだけの仕来たりなので?」
尋ねたら諦めたように頷いたよ。
して、真打ち登場!
言わずと知れたヒューデリア嬢だな。
豪奢なドレスを纏い現れた。
「ぷっ、何ですの、お2人の格好…」
言うなっ!っか!
「1人だけ狡ぃぞっ!」
思わずな。
「何が狡いてますのっ!
コルセットで締め上げられて倒れそうですわよっ!
替わりたいなら替わって差し上げますわっ」
いや、そっちも酷いな、をいっ!




