神隠し6
一夜明けた朝、お早うございますってか。
しかし綿布団もだが、ベッドがちょうど良い寝心地でグッスリよグッスリ。
目覚めが良いたらありゃしねぇ。
元の世界へ戻れるならば、是非とも持ち帰りたい逸品だな、うん。
そんなん思いつつベッドから這い出す。
早い目覚めてぇか…うん、そのな…もよおした訳よ。
女の子なれば花摘ってか?
厠、便所、御手洗い、トイレ、御不浄、どれでも良いが、それにな。
生理現象なんだから、しゃぁあんめえがよぅい。
しかしなぁ、トイレだけは参ったぜ。
流石にボットンは初体験だったよ。
えっ!ボットン知らない?
あれだよ、アレ、水洗じゃないトイレさね。
汲み取りってヤツだ。
気を付けないと御釣りが来るってか?
流石に大丈夫だったが…今時の日本人にゃぁキツい仕様さね。
仕方ないけどな、ふぅ。
トイレから出ると女中さんが待機してらっしゃった。
っか、何時の間に?
案内されて洗面所へと。
身支度整えてから部屋へとな。
借りた部屋着と言うか甚平から自分の衣服へと着替える。
その着替え終えたタイミングで朝食が部屋へとね。
うん、これって…湯付けっうか茶漬けかな?
受け取り食せば良き出汁の効いた旨き味なり。
飯に埋ってた魚の塩焼きや漬物などの具がさ、食べ進める度に現れて味に彩りを。
意外と贅沢な味でしたとさ。
その後は部屋へ留め置かれた感じで過ごすことに。
うん、ゴロゴロ過ごすのは大歓迎です。
っうことで、のんびりと過ごしてたんだけどな、昼に近い頃に呼び出しがさぁ。
女中さんゼスチャーにて促され案内された座敷には、如何にも武人て言うか、その筋の人っう感じの方がね。
正装なのかもしれないが、鎧姿が厳めしく感じやす。
そんなお方がな、おもむろにカードを俺へと提示してきた訳だ。
(なんだろ?)っと不思議に思いながらカードを見るとだね。
『初めまして』って日本語でな。
って、日本語ぉっ!?
驚いてっとな、『御名前は?』っと書いたカードときたもんだ。
思わず「葵 和弘」って本名をな。
っかさぁ、普通に告げたら速すぎたようでな、もう一度言い直す羽目に。
俺も相手が示したカードを指差し名前を問うと新たなカードを提示しつつ、ゆっくりと「ガウェン」ってな。
どうやら彼の名が日本語っか片仮名で書かれたカードだったみたいだな。
いわゆる名刺に相当するヤツだろう。
その後は、彼が持参したカードを元に、断片的ながらも会話をな。
そして明日には彼の主人と会うために、ここを発つことと決まったぜ。
詳しくは分からんが、日本語を話せる者が居るみたいだな。
正直この現状を打破できるやもしれんから、日本語が話せる相手と出会えるならば会いたいところだぜっ!