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神隠し59

つつがなく晩餐を終えると執事が声を掛けてきたな。

「本日のお料理は如何でしたかな?」っとね。


実に美味かった、それは間違いではないなだが…

「色々な料理があり目移りしましたね。

 取り分けて頂いた料理も大変美味しかったです。

 ただテーブルへ大量の料理が残っておりますが、流石に全ては食べられません。


 このまま破棄とかはないですよね?

 庶民感覚で申し訳ありませんが、どうなるか気になります」


勿体ない精神っか、勿体ないお化けがぁ~

いやいや、大体さぁ、食べる時に感謝の念を込めるのに大量に残し破棄とか…呪って欲しいのかなってね。


そんな俺の懸念(『勿体ないお化け』や『呪い』ちゃうぞ)を聞いた執事さんがね。

「そちらは、後で下々(しもじも)にて処分いたします。

 無論、破棄ではなく食しますゆえ、ご安心を。


 取り分け形式なれば、コース形式とは違い下賜し易いですので」


ああ、だから取り分け形式なのね。

納得していると、更に執事さんがね。


「他に気になられたこととか、ございますか?」っと、再度問うてきたよ。


「う~ん、充分に美味しかったとしか…

 まぁ、鳥車でいただく料理は別格だから、アレを除けば満足ですよ」


俺の口も奢ったもんだぜ。

つい最近、牛丼チェーン店やイタリアンチェーン店なんぞに満足してたてぇのにさ。

戻れたら生活できんのかね?


俺の感想を聞いたヒューデリア嬢が呆れた感じでな。

「あのような、特殊な場所で作られた料理を引き合いに出されても、困られてしまいますわよ」

そう、諌められてしまったよ。


いや、全くだな。

「確かに、そうだな。

 あそこは場所的に特殊なんだから、料理の引き合いに上げるのは不当だったよ」

軽く頭を掻きつつ反省ってね。


だが、執事さんにとっては、聞き逃せない話だったらしく…

「それは誠のことでございますか?」ってね。


あまりにも真剣に尋ねてくるので、思わず頷いてしまう。

そんな気圧されたような俺に、苦笑しつつアリンさんがね。


「鳥車内は色々と特殊なのですよ。


 レクイア鳥にて鳥車を運ばせるため、鳥車へ結界を張るのは必須となります。

 換気などの問題もあり、清浄化の真操具にて浄化もしているのです。


 実は、このことが鳥車内へ影響を与えておりましてね。

 結界とレクイア鳥が操る真素により結界内真素濃度が上昇しているのです。


 高濃度真素が食材の調理中に影響を与え、更に浄化作用にて、食材から不純物が取り去られているのではないかと。

 調理法や技術以前の問題ですね。


 更に高濃度真素に曝された乗員は高濃度真素に過剰反応するのだと思われます。

 そのため、飢餓とも言える空腹に苛まれることになりますな。

 そして空腹は最上の調味料でもあります。


 そんな環境にアシストされた場所の食事と比較するのは、フェアではありませんね」


執事さんも、アリンさんの説明には納得したようだ。

だが…

「場が違うなれば整えればよろしいかと。


 王城の迎賓の間にて提供する料理に妥協があって良いはずがございません。

 これは実に良いことを、お教えいただきました」ってね。


いやいや、なんだか知らんが…執事さんの押してはならない、禁断のスイッチを押しちまったか?

オラ、知ぃ~らないっと。

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