神隠し58
数人が擦れ違えれるほどに広く、そして長い廊下を移動する。
エレベータホールへ着くと、エレベータが待機していたよ。
もしかして、俺のために?なんて勘違いしそうだが、他に人の姿はない。
俺と執事さん、メイドさんが乗り込むと、エレベータガールにより手動でエレベータドアが閉じられる。
格子状の折り畳み式ドアがだったよ。
しかし…他の人を待たんで良いんかい?
尋ねてみるとだな。
「招かれ人であらせられる葵様用に待機させておりますれば、人払いなど、当然でございます」ってな。
いや、なにそれ、こわい…
俺ってさ、この世界へ迷い込んだとはいえ一般庶民な訳でな、こんな仰々しい待遇に戸惑ってしまう訳さね。
思わず戦慄ってね!
「もしかして…これから全てが、この待遇とか?」
恐る々尋ねてみるとだ。
「そうなりますな。
ある意味、皇王様よりも上、いえ、上皇様を凌がれると、お考えください。
葵様と同等と見做されるお方は、聖女様だけと存じます」
いや、重い、重過ぎるよ、それ。
「いや、俺って庶民の出っうか庶民なんですけど…
そんな待遇は、勘弁して貰えんですか?」
拝み倒す勢いで告げたが…
「申し訳ござりませぬ。
当方の一存では決めかねますな。
上には葵様のご要望を上申いたしますが、通りますかどうか…」
流石に困った顔でな。
アリンさんやヒューデリア嬢の場合はさ、頼み込んだら結構フレンドリーにしてくれた。
あれも当初は色々と揉めたもんだ、いや、俺の我が儘なんだがな。
それでも友人に違い関係となれたのでは?って思ってんだ。
だが、こちらでは融通を利かせて貰うのは難しいかな?
俺だってさ敬って貰らえりゃ人間だから気分は良いよ。
だが、こんな待遇に慣れたら人間ダメになりそうで怖いんだよ。
元の世界へ戻れた時とかにさ。
えっ?戻れる気か?って?いや、戻る気ですが…なにか?
そんな遣り取りやら考え事やらをしている間にも晩餐会場へとな。
っても、デカく長いテーブルへ着くのは、3人だけ。
俺、アリンさん、ヒューデリア嬢だな。
他の席は空いてるが、テーブルの上には3人では食べられないほどの料理が…
食べたい料理をメイドさんに告げて取り分けて貰う形式らしい。
この形式はフランスなどで昔に流行った形式だと聞いたことがある。
テーブルへ豪勢に盛り付け、豪華絢爛さを演出していたのだとか。
それがコース料理と変化したのはロシアの影響とのこと。
フランスの有名なシェフが宮廷料理人として招かれたのだが、一度に提供すると料理が冷めると言う問題が…
そら、ロシアは寒いかんなぁ…
そのため、冷めないように料理を提供するコース料理が普及したそうな。
だが、こちらでは真素操具が存在する。
それを使用して料理の保温と保冷だけでなく乾燥を防ぎできたてのように保てるのだとか。
そらコース料理形式は普及せんだろ。
いや、海外からコース料理の概念は伝わっているらしいんだが『同じ釜の飯』的発想から、こちらの形式が選ばれることが多いんだとさ。
俺も適度にメイドへ取り分けて貰い食べてるが、どれも美味い。
食事中の話題は鳥車内で俺が行使した真素操作だったよ。
執事さんが妙に感心して聞いてはったが…なんだったんだろね?




