神隠し55
王城には城壁と言う存在はなかった。
道から直に城門へとな。
何せ辺りが大貴族達の邸宅と偽る城が、交互に入り組む形で存在し、それらの城壁が干渉して迷路化している。
うん、既に、あれが城壁変わりだな、うん。
しかし、王都は広い、広過ぎると言っても過言ではないだろう。
東京23区の数十倍はあるのでは?
いや、感覚的な話だから正解ではないが…
鳥車が降りたのは王都内の中央区付近だったことを考えるとだね。
バームクーヘンではないが、城壁が何層にも重なった中央付近と言えば分かるだろうか?
鳥車からは上空から俯瞰していた関係で規模感が狂っていたのだろうか?
っか、どれだけの高高度を飛行してたんだ?
王都へ着いて圧倒されてばかりだが、ここへ1人で放り出されたら迷子になること必須だな。
下手したら王都内で遭難てぇギャグみたいになる可能性も…気を付けよう。
王城の巨大城門を抜けて王城内へと。
っかさ、玄関ホールって聞いたことはあるが、玄関庭て新しくね?
巨大な空間が広がり、外から、どのように採光しているのか分からないが明るいな。
芝生の生えたら場所とか林が見える。
噴水なども存在し、ウサギや鹿などが放たれ遊んでるよ。
っか、ここ…王城内なんだよね?
さきほどにも告げたが、王城は山を刳り貫いて造られている。
山を巨大岩盤っと言い替えても良いが、規模から考えると山だな。
そんな山肌へは巨大なレリーフが彫り込まれており、その存在感に圧倒されたものだ。
作成中や補修中の箇所も多々見受けられたが、作業中の方々が点にしか見えないことから巨大さが分かって貰えるだろうか?
そんな偉容に圧倒されつつ城門を潜れば、庭。
いや、訳が分からん。
そして馬車は進み、進み…降りんの?
俺が不思議に思ってっとさ、ヒューデリア嬢が溜め息を吐いてな。
「話には聞いておりましたけれど…広過ぎるですわ」っと。
「広過ぎって…確かに、そう思うが、馬車からは何時降りるんだ?」
普通は城門前で降りるよな?
「さぁ?流石に分かりませんわね。
私も登城するのは初めてですもの…
何階へ向かっているのすら知りませんわ」
をいをい。
「普通、下車して歩かないっけか?」
そう告げたら飽きれられたよ。
なんで?
「徒歩だと、どれくらい時間が掛かるか分かりませんわよ。
土地勘のない方が場内を出歩き遭難したと言うのは、結構、有名な話ですの。
城内勤務の方でも、知らない場所へ迷い混み救助されることもあるそうですわね」
いや…俺が想定していた王城…ちゃうねんけど?
城が広過ぎたり、入り組んでいたりして迷う、なんて話は聞いたことがある。
だが、既に規模感が違い過ぎね?
城内へ坂道が存在し、馬車が往来している。
っかさ、普通に店舗が開いてんだが?
外と違うのは、道沿いに壁を刳り貫いて店舗が造られている様だな。
そら岩盤山の内部だから当たり前ちゃあ当たり前なんだが…
そんな洞窟内に等しい場所だから暗いのかと思いきや、案外明るいな。
外からの採光と言うには違和感が…
「洞内と言って良い場所なのに、なんで、こんなに明るいんだ?」
不思議に思い尋ねるとだ。
「真操具の恩恵ですわね。
王都は真操具の研究が進んでおりますから、最新の真操具が、惜しげもなく使用されてますもの」
羨ましそうだな、をいっ!




