神隠し5
屋敷へと上がり座敷へと案内される。
つかさぁ、玄関の土間で靴を脱いだ際に靴下も脱がされてな、今は素足で歩いとります。
っと言うのもね、土間で足を手拭いで女中さんが拭ってくれたんよ。
お湯を張った盥へ手拭いを浸けつつ、丁寧に拭ってくれたのはさ、意外と気持ち良かったぜ。
時代劇の旅籠で女中が客の足を手拭いで拭うシーンがあるけどさ、時代と共に消えた良き風習だったのかもね。
手拭いで拭いながら軽く脚マッサージもね。
お陰で少し脚が楽になりやしたよ、ええ。
ご老人に案内された座敷の床は畳だった。
ちと日本の畳とは肌触りが異なる不思議な畳でな、半絨毯ぽい肌触りなんさ。
見た目は完全に畳なんだが…変な感じだぜ。
そしてな、畳だって言うのに何故かテーブルに椅子がね。
和洋折衷ですか、さいですか。
んでな、なんでか違和感はないんよ、これがさぁ。
そんな不思議空間へと分け入れば、テーブルの上には様々な料理が鎮座している。
カテトラリはナイフとスプーンに…箸?
いやいやいや、異世界なのに箸ですかい?
料理も川魚の煮付けに味噌汁、何かの肉の香草焼きにサラダだな。
サラダにはドレッシングが掛かってんぞ。
で、パンとライスが並んでらっしゃる。
どちらかを選ぶのではなく、どちらもですか、さいですか。
老人にゼスチャーで促され食すことに。
「いただきます」ったらさ、何故か感動された。
訳分からん?
そうそう、「いただきます」を命を頂くと宣う輩がいるが、そんな浅い意味合いではない。
食材となった命への感謝は当然だが、その命を育んだ自然、育てた生産者や猟師に漁師、更には食材を届けて下さった皆様や調理して下さった方々に至るまでの感謝を込めての言葉だ。
想像すれば口に入るまでに様々な方の尽力に、自然の恩恵などが関わっていると分かるだろうさ。
つまりは、自分は様々な方々や環境に生かされていると気付くはずだ。
それに対する感謝の念を込めてる訳だな。
「ご馳走さま」にも同様な意味合いがあるんだぞ。
走り回り食材を集め饗して頂いたことに対する感謝の念を込めているそうだが…基本は「いただきます」と同じだな。
まぁ古き良き日本の本当の風習だが…なんだか、ここには日本で廃れた良き時代の香りを感じてしまう。
なんでだろね?
いやね、食べてる料理は美味いんだが華美と言う訳ではないんだ。
けどな、素朴で朴訥な旨みはさ、何となく日本人の郷愁を誘う。
だからかな、柄でもないことを考えてしまったぜっ!
余りの旨さに黙々と食を進め完食です。
無論、「ご馳走さまでした」と感謝の念で締めると…また感動された。
なんでやねん?
その後、風呂へと案内され風呂を頂く。
大変良い湯であり…温泉でした。
ラッキー。
そして綿布団が敷かれた部屋にて就寝と…いた競りつく競りだが…良いかいな?
なんで、ここまで優遇してくれるのか…正直不安です、はい。
つうことで…お休みなさいです..zzZZ