神隠し4
延々と連なる木壁と平行して造られた木壁へと辿り着いた。
これって入り口を隠すための衝立みたいな物やね、うん。
木壁と木壁の間を通ると入り口へ。
うや、門番さんがいらっしゃる。
少年の親父殿が門番さんへ何かを告げると…はい、ここで引き渡しってね。
狩人親子は森へ引き返して行きましたとさ。
お仕事頑張ってなぁ~邪魔して御免ね御免ねぇ~
言葉が通じんから礼も言えへんかったわ。
ちと後悔。
俺を引き渡された門番さんが、同僚へ何かを告げてから俺の引率をね。
いやいや、また移動かいね、そうかいね、ふぅ。
やけに丁寧な扱いをしてくれてるような…
まぁ、言葉が通じんから実際には分からんがな。
木壁を越えて内側へ入ると林が所々にある草原だった。
踏み固められた土道を辿り進んで行くと集落が見えてきた。
流石に疲れたが…おかしい。
俺って、こんな距離歩けたけか?
決して遅い歩みではなかったはずだぞ。
普通ならヘバッテへたり込んでるだろうよ。
急に体力付いたとか?
んなアホな…
まぁ、へたり込まずに歩けてるから良いっちゃ良いんだけどさ、なんか納得がね。
で、疲れはしたが、なんとか集落へと。
案内の門番さんとは別に集落へ知らせに走った門番さんも居たのだけど…なんだか騒ぎになってるような…
っか、限界集落を越えたって感じの場所やね、うん。
文明の利器なるものが一切存在しません。
明らかに異常でしょう。
日本に、このような場所があるとは思えない。
だってさぁ、明らかに全員が外人さんなんよ。
う~ん、信じたくはないのだが…異世界ってヤツかね?
そう考えると、いや、そう考えるしかないか。
しかし、異世界とパラレルワールドの違いってなんだろね。
パラレルワールドってばさ、ifの連なりって聞いたことがある。
例えば1分前の自分を想定して考えて見るとしよう。
1分前に立ち止まっている自分と、1分前に歩み続けていた自分がいると考えたら…いや、実際には有り得んよ、だからifなんだってば。
そうなるとな、立ち止まった自分と歩み続けた自分とは別物となる訳だ。
つまりは別物、別存在、別世界へと分離してる訳やね。
このようなifの連なりで世界が無限に分岐し存在するのをパラレルワールドと呼ぶそうな。
そんなパラレルワールドと、今、俺が居る世界は異なると思うんだわ。
つまり、元の世界とは独立した別の世界ではないかなっとね。
だからさ、ここは異世界なんやね、などと現実逃避してみたり。
だってさぁ、騒いでる人達の言葉が一切分からないんだぜ。
俺が原因で騒ぎになってるは分かるのだが、理由が分からん。
どないせいちゅうねん。
そんなん思ってるとな、偉そうな老人に大きな平屋へと招かれた。
いや、招かれたんだよな?
身振り手振りだかんよぉ、いまいち自信がな。
ん?日本のように靴は脱いで上がんのね。
玄関の土間で靴を脱いで屋敷へとお邪魔することにね。
案内してくれた門番さんは、既に持ち場へと戻って行ったよ。
また礼を言えなかったなぁ~
困ったもんです。