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神隠し38

昨日と同様に鳥車へと乗り込む。

ここは既に俺の領域だ。

言う過ぎました、すんまそぉ~ん。


だってさ、普通に辺りの人達が話してる内容が分かるんだぜ。

これだけでも舞い上がるほどに嬉しいってもんさね。


いやな、言葉が通じない異国へ1人で放り込まれるなんて凄く不安なんだぜ。

ましてや異世界だ。

異国ならば行くまでに準備もできようが、いきなりだったかんなぁ~


流石に成人した男として泣き言は言えない。

けどな、結構不安だし精神的にもくるもんなんだよ。

だが、辺りで話している内容が分かるだけで、大分楽になるもんだ。

疎外感が薄れたって言うかね。

まっ、悟らせんがな。


「さっ、シェフが腕に()りを掛けて朝食を用意してますわよっ!

 晩餐で余った食材から厳選して調理に使用したらしいですの。

 楽しみですわぁ~

 さっ、行きますわよ!」


食いしん坊お蝶婦人が降臨なさっとるがなぁ~

ブレまへんなぁ。


とは言え、俺も朝食は楽しみだ。

昨夜の晩餐料理は、実に実にぃっ!美味かったっ!

次元が違うてぇのは、あのことだろう。


ただ、スプーン1匙づつだったから、ガッツリ食いたいてぇ不満も残ったのだが、多くの種類を色々と堪能できた満足感もな。

ままならんもんさね。


昨夜晩餐料理の味に思いを馳せながらダイニングルームへと。

お、おおぅ…忘れとったぜっ!

旨そうな香りが室内に漂って…いや、充満してるな。


飢餓感に苛まれることは無いようだが…それでも空腹ではある。

腹減ったぁ~ん。


ヒューデリア嬢に急かされるようにして席へとな。

いや、淑女の嗜みとやらは何処行った。

実はこのお嬢様、お転婆さんなのかな?


朝食なのでコースのような感じではなく、食卓へ料理が並んでいる。

完全に洋食だな、うん。


クロワッサン、ポタージュスープにフレッシュサラダ、カリカリベーコンとスクランブルエッグ。

ここらは朝の定番だろう。


だがな、分厚いステーキと数種のソーセージは朝から重過ぎねぇか?

まっ、大歓迎だが。


しかし…器に黒いソースが入ってるのはなんぞや?

汁椀くらいの大きさがある器一杯に入っているのだが、ソースの下が伺えない。


まずは興味を引かれた、この器の攻略からだな、うん。

うや、器はホンノリ暖かい。

熱々ではないんだな?

匙で掬ってみると、オレンジ色の黄身が…

火は軽く通ってるのか?いや、違う黄身も混ざってんな。

掛かっていたソースと混在となって…美味いっ!


なんぞ、これ?

卵の黄身には違いないのだが、卵の黄身と言う概念が吹き飛ぶ美味さだ。


思わず、メイドさんにな。

「この料理…卵の黄身へソースが掛かっていると思うんだが…異様なほどに美味い。

 単純な料理なのに、何故、ここまで美味いんだ?」ってね。


メイドさんは説明を受けていたみたいで教えてくれたよ。

「それは説明させていただきます。


 まずは食材の1つにガムラ卵を使用しております。

 ガムラは、森林地帯の中層から深層へ棲息する鳥なのですが、狩るのは非常に困難であるのだとか。

 ましてや、巣から卵を得るのは非常に厳しいそうなのです。


 そんなガムラ卵の味は極上であることと知られており、卵を得るために赴く者も多いと聞き及んでおります。


 調理法ですが、まずガムラ卵の黄身を味噌と言う品に漬け込んだ物を使用しております。

 その漬け込んだ黄身を刻み、器へ入れたガムラの生卵の黄身へ振り掛けるそうです。


 後は器を器ごと湯煎してジックリと火を通し、リハリタ茸のソースを掛けた逸品なのだとか。


 流石に食しておりませぬので、味までは分かりかねます」っとね。

手の込んだ逸品だなっをいっ!

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