神隠し37
清々しい朝が来た、希望の朝だぁっ、喜びぃにぃ胸を開き、青空仰げぇってかぁっ!
うん、良きかな、良きかな、実に清々しい良い朝だ、うん。
しかし、俺を空かさず轟沈させるとは、大したベッドだったよ、遣りよるわっ!カッカッカッカァッ!
そんな朝を迎えたので、顔を洗いお手洗いへと。
お手洗いだけは部屋にはない。
いや、ボットンが室内へ誂えてあるのは問題だしな、妥当だろうよ。
朝の身支度を終えた頃にアリンさんが迎えにな。
彼の側には屋敷の執事さん達も控えている。
何故かメイドさん達の姿は見えないな、どうしたんだろうか?
部屋を出ると直ぐに玄関へと。
いや、朝食は?
「朝餉の支度は鳥車にて行われております。
葵様にはなるべくなら鳥車で過ごして頂いた方が良いと思われますので行きましょう」
そのように促され、玄関を出て馬車へと。
うん、俺の荷物は何時の間にか馬車へと運び込まれているな。
荷を纏める時間がなかったので、別の入れ物へ入れて馬車へ運び込んでいるみたいだ。
今、馬車の中で荷物整理してくれてるよ。
あれもメイドさんの仕事なんだね。
しかしなぁ、相変わらず馬車と言うより小屋だな。
広い室内のソファへと腰掛け寛ぐ。
○風と国王○の黒馬2頭が牽く巨大馬車だから、安定感が半端ないよ。
「先程から松○とか国○号とか、家のノルトとヒルトを呼んでられますけれど…どのような意味合いがあるのかしら?」
ヒューデリア嬢が小首を傾げてな。
いや…そんな説明できませんからぁっ!
そんな俺達を乗せた馬車が領都を進む。
来た時は感じなかったが、通りに人が群がり馬車を見てるな。
巨大黒馬が牽く巨大馬車が珍しいのだろうか?
「流石に昨夜の晩餐会の話が広まったようですね」
「そのようですわね。
滅多に御降臨なされない招かれ人を一目見ようと、民が集まってますわ」
そう2人が告げるので、思わず。
「いやいや、巨大黒馬が珍しいんじゃね?」っとね。
したらさぁ…
「そんな訳ありえませんわぁ!
だいたい、このクラスの馬車なれば、ある程度の地位を持つ者なら保持しておりますのよ。
ですから、珍しいと言うほどではありませんわね」
そのように否定されてしまったよ。
ってことは、本当に俺を見に来てんのかいな?
俺って一般庶民だから、本来はアチラ側で見物する方なんだが…なんだか見せ物になってるようで、ヤダな。
パレードの如く街を走る馬車は辺りへ配慮し速度は上がらない。
ゆっくりとした移動だったが、ようやく街を抜け…遅れを取り戻すかの如く疾走へと。
なのに揺れが余り感じないな、うん。
そんな馬車にて鳥車へと。
やはりレクイア鳥はデカイなぁ~
遠目で見ると頭部も視認できたが、近付けば腹下と巨木みたいな足しか見えない。
それも鳥車へと近付けば視界に入らなくなるんだがな。
ただ…
「昨日のレクイア鳥と違います?」
思わず尋ねるとヒューデリア嬢が驚いたようにな。
「判りますの?
確かに違いますけれど…見分けは困難と聞いてますのに…
むろん、私は見分けなどできませんので、使用人に聞いて存じているだけですの」だってさ。




