神隠し35
だがな、だがだぞっ!
「このホールのように環境を作り出すのは困難だとしてもだ、鳥車内ならば何時も、この環境ってことだよなっ!
なら、鳥車内へ長く止まれば、真素操作し易くはならないか?」
そう告げるとヒューデリア嬢が考え込んでしまったよ。
っか…俯いて考えていた顔を、いきなりガバッっと上げんじゅあっねぇっ!
びっくらこくでねぇかぁっ!
「あり…有りですわぁっ!
素養にもよると思いますけれど…我が一族で一番長く鳥車へ乗り込んでいるのは私ですの。
だからでしょうか?
私が真素使いになれたのは?」
そのようなことをな。
「いや、ですが…それは鳥車を保有されておられる場合限りですよね?」
アリンさんが困惑したようにな。
「それはそうですけれど…我が領内にて選抜した方を試しに鍛えるのは有りかと思いますの。
領内に優秀な方が増えれば領としても潤うと思いますわ」
なかなか壮大なことを考えるものだなぁ…
そう感心しているとだ、パンパンッパンパンって拍手さ。
なにごとぉ~
そう思い辺りを見回すと…俺達は囲まれていた…
はぁっ!?
したらな、ご領主様が拍手をしつつ、こちらへと。
「実に、実にぃ~有意義な議論を聞かせて貰った。
我が娘であるヒューデリアもそうだが、ザウント郷のアリン殿も優秀とは聞いておった。
だが、ここまでの議論へ至ほどとは思えぬ。
流石は招かれ人と言ったところか?
実に素晴らしい方ではないか」
そのようにね。
って、あら?俺って褒められてる?
「明日には王都へと旅立たれる訳だが、我が娘ヒューデリアとアリン殿を供に付けよう。
先は分からぬが…我が領を気に入って頂けるなれば、我が領へ受け入れたいものだ。
ご一考願えないだろうか?」
そんなことを言い始めたよ。
をいをい、それってさぁ、引き抜きってヤツじゃね?
そんなことして大丈夫なのかねぇ~
「閣下、葵様への同行、謹んでお請けいたします」
そうアリンさんが告げ一礼を。
「父上様、私も尽力いたしますわ」って恭しくな。
2人の同行は決まったようなのだが…俺と話そうと見ている方々がな。
なんだかさ、目がキラキラっうよりギラギラしてて怖いんですけど…
特に女性がさ、更に言うと20代後半と思えるお姉様方にロックオンされてるような…
「葵様、私から離れないように。
そして、私以外は部屋へ通さないように注意して下さい。
葵様が優良と判じられたようなので、下手な返事をして言質をとられないようにしてください」
アリンさんが日本語でな。
っか、ゼショウ語と日本語が判別できたよ。
マジかぁ!
って、そっちじゃねぇわっ!
なに俺、狙われてんの?
葵を狙えって?御蝶婦人がいる弊害かっ!
領主様が引かれると、雲霞の如く集まって来るのを華麗に執事達が捌き並ばせている。
1人数分でチェンジしつつ招待客との対話をな。
既に流れ作業っか握手会やサイン会みたいな様相へと。
いや俺、一般人なんやけど…




