神隠し32
ご領主様がお立ち台のような場所へと。
会場内の視線が、ご領主様へと突き刺さる‼
うっわぁ~
オラ絶体にぃっ、あんな場所には立ちたくねぇっ!
「コホン。
あ~、本日は招かれ人ご降臨を祝う祝賀会へ参加ごくろう。
皆も存じておる通り…」
長いから割愛ね。
どうして偉い方の挨拶ってさ、あんなに長いんだろね?
自分が聞き手だった頃のことを忘れてんだろ~なぁ~
学生の頃を思い出すぜっ!
体育館などでなら睡魔と戦い…嘘です、戦ってもいませんね。
だってさ睡眠導入剤を盛られた上で、子守唄と言うより眠りの魔法を掛けられたか如き睡魔がさ。
不眠症の方は、是非ってヤツだ。
だがな、最悪なのは校庭での全校集会だろう。
それも夏間近な炎天下な。
そらもう、盛大にさ、パタバタと倒れる訳さ。
睡魔に勝てんかったか?えっ、違うて?
そんな思い出を…
「では招かれ人たる葵 和弘様に、ご挨拶をいただこう。
っと言いたい所だが、なにぶん葵様は、この世界へ招かれて間がない。
故に、葵様のからご挨拶は割愛とする。
また同理由から、葵様へ長々とした挨拶も控えるように。
では、祝賀会を楽しんでくれたまえ」
ご領主様の挨拶が終わったな。
一瞬、ドキッっとさせられたが…挨拶せずに済んで助かったよ。
しかし…長かったなぁ~
昼ほどの飢餓感はないが、流石に腹減ったな。
ここへ着いてねいただけなのに、それでも腹は減るんだよなぁ~
そんな俺の前にメイドさんが皿を差し出して来る。
皿の上には、当然料理が乗っている訳なのだが…
「なんで一品づつスプーンへ盛られてんだ?」
一口で食べれるようにスプーンへ小分けされつつ盛られているぞ。
「それはですね、様々な料理が用意さるているからですわっ!」
いや、それはスプーンへ料理を盛り提供する理由にならんから…
「おそらくですが、挨拶に忙殺される前に様々な料理を味わいたいためかと」
そうアリンさんが告げるとな。
「そう、その通りですわ!」っとね。
………この御嬢様…食いしん坊モードになるとポンコツになるな。
気を付けよう、うん。
皿へと盛られたスプーンを手に取り食べるが、淡い味の料理から食べれるように盛られているな。
なかには食欲を促進させる効能を持った料理もさ。
簡単に食べれるから、既に3皿目だったりする。
だってさ、お代わり持ったメイドさんが常に控えてるかんな。
気分は椀子蕎麦である。
椀子蕎麦形式の立食パーティー…なにそれ、新しい…新しいけどさ、なんだかヤダな。
せして、ふと気付いた。
誰も挨拶に来んやんね。
辺りを見回すとだ、皆が皆、品良く料理を貪ってらっしゃる。
まるで飢えているが如しだな。
って、ハッ!まさか…いや、絶体に、そうやんね。
「ヒューデリア様」
「なんでしょう?」
「このホールって、鳥車と同じ環境なんですよね?」
なんで今更っう感じで見られたよ。
「その通りですわ。
ですから葵様もゼショウ国語しか使えない方と話せる訳ですわね」
まぁ、それは、そうなんだろうけど…
「いやな、鳥車内って異様に腹が減ったやんね。
だとしたらさ、この会場に居たら飢餓感を覚えね?」
そう尋ねると、ヒューデリア嬢がハッとした顔にな。
気付いてなかったんかいっ!




