神隠し21
既に痛みと感じるほどの飢餓感に襲われつつヒューデリア嬢との話を続ける。
っかさ、朝食を摂ってから、さほど時間が経ったとは思えないのに、飢え死ぬほどの飢餓感って…
2人も同様なのか、非常に辛そうだ。
ヒューデリア嬢の話しでは真素は空気のように空間を満たしているとのこと。
そして真素は真那が固まらなかった物であり、地中などは真那で構成された物質なので真素にはあたらないらしいな。
厳密には空気も真那で構成されており、真素ではないと…
んっ?それってさ、元素のこと?
知っている元素記号のことを伝える。
原子が物質を司る最小存在であり、分子は原子が結合した最少の組合わせ構成だったか?
学校を卒業してから、それなりに経つため空覚えではあるのだが…あってるよな?
そうするとな、ヒューデリア嬢が戸惑ったように告げてくる。
「最小で、ございますか?
それは物質を司ると言う意味での最小なのではないかしら?」っと。
いや、どう言う意味だ?
「こちらでは原子とか分子と言う呼ばれ方はされてませんの。
原子と言われておられる存在が真那で構成されているのではないかしら?」だってさ。
だからぁっ…
「あんなぁ…原子が最小単位、最小存在だと言っとろうが」
呆れて告げるとな。
「あら、それは葵様の世界でのお話ですわよね?」って言ってくる。
「どう言う意味だ?」
理解できずに尋ねるとだ、ヒューデリア嬢が困ったようにな。
「実はですね、似たような議論が過去に他国でなされたことがあるようですの」
彼女が告げるとアリンさんが驚いたようでな。
「それは、誠ですか!?」っと。
どうやら一般的な話しではないようだな。
「ええ、実証がとれませんので普及してない話しらしいですわ。
原子が真那で構成された代物であり、霊素などの一種でしたかしら。
なにせ真那は真素を感じることができないと認識できませんから、真那がどのような物かを証明できた者はおりませんの。
ただ、元素、原子、分子などを唱っていた招かれ人の方も、真素が感じられるようになって説を曲げられたのだとか。
その方の話しでは「これはアチラでは観測不可能だろう…いや、数十世紀を隔てた未来なれば…」とか言われてたそうですわね」
俺より遥かに詳しそうな人だよな?
そんな方が認めたのか?
原子より最小って…っか、観測不能って、なに?
っか、それを人の感性で検知しろってか?
いやいや、無理っしょ!うん!
原子や分子を人が感じて理解するのに等しい…いや、それ以上の難度だよな。
本当に真素なんぞ感じられるようになるのか?
「正直…真素を感じられるようになる自信がないのですが…」
そう告げるとな、ヒューデリア嬢がコロコロと笑って仰る。
「いくら招かれ人だと言われる方でも、そんなに容易くは無理ですわよ。
特別に才能がある方は、こちらの環境に馴染み易く、最初から体力的な上昇が認められるそうですけれど…まぁ、希ですわね」
さいですか、って、んっ?
俺ってば、この世界へ来た時に猟師親子に案内されて歩いたよな。
何時もなら歩けない速度で、普通ならヘバッて歩けない距離をさ。
もしかして…俺ってば才能ある?
いやいや、勘違いの罠に嵌まるのは、まだ早い。
だよね?




