神隠し131
正気に戻ったお役人様のエスコートにて、宰相府内の廊下を進む。
後ろの喧騒?なんのことでしょう?
まぁ…増援も来たみたいだしね。
でも、小鹿ズの方へも、他の小鹿や…何故か親鹿まで参戦してるのが、チラリと見えた気が…
気の所為だな、うん。
お役人様に案内されて辿り着いた部屋は会議室だったようで、中では既に会議が始まっていた。
遅れたのかな?って思ったが、朝から続けて行われているとのこと。
昼食も運び込んで、ブッ通しで行ってんだとさ。
大変ねぇ。
でぇ、議題は…俺の創製について?
いや、その…お世話を掛けますです、はい。
俺達が部屋へ入るとな、宰相様がね。
「外が騒がしいようですが、何事かご存じで?」
そう尋ねられたお役人様が、何故か困ったように俺を見るんだけど…なに?
したらな、エドワード執事長がね。
「庭の鹿達が宰相府へ入り込もうとしておるようですな。
衛兵が阻止しておりましたが、その騒ぎでございましょう」
いや、事実だし、嘘も言ってはいない。
だが、俺が関わったことを告げなくても良いのか?
だが宰相様は、こちらをチラリと見て…見たんだよな?
脂肪に覆われて目が見えないのに、何故か、こちらを見たのが分かった。
なんだろね?
ほんでな、こっちを見た宰相様がさぁ。
「葵天が、お関わりになられておられるならば、致し方ありますまいな。
それよりも、ほれ、何時まで葵天をお待たせしておるのですか?
早く席へ、案内差し上げないか!」ってね。
いや、そのね…
「なんで、私が関わったと?」尋ねたらさ。
「違いましたかな?」って。
いや、違わないけど、そうじゃなくてね。
「普段は大人しい鹿達。
人に懐かない筈のパッジャー鳥が葵天の肩へ。
レクイア鳥による運用は、聖女様へレクイア鳥が懐いてから。
これらを総合的に鑑みますに、葵天へ懐いた小鹿辺りが騒動の原因かと。
更にパッジャー鳥が懐いている様子が、小鹿達の警戒心を解したものかと」
あっ、それは考えてもみなかったよ。
そうかぁ~パッジャー鳥のねぇ…
そんな考えが悟られたのかは分からんが…
「むろん、飼い主の責任でもございますが」って、チクッとね。
「とは言え、来られたばかりの葵天には、酷でしような。
なればこそ、側に控えし者が、お諌めすべきかと。
エドワード、分かっておろうな?」
あや、エドワード執事長へ飛び火したった。
だがな。
「ならば俺の責任だな」ってな。
「庇われなさりまするか?」
いやいや、違うて。
「実はルリ…このパッジャー鳥なんだがな。
宰相府へ赴くってことで、1度エルドリアさんが捕獲して鳥籠へ入れたんだよ。
だけど、大人しいし、話してる最中は邪魔しないことは分かってたんでな、俺が頼んで出して貰ったんだ。
俺も会議は苦手なんでね、少しでもルリで癒されたかったんだわ。
まっ、こんな騒ぎになることは、想定外だったけどな」
そう俺が告げると、宰相様が、しばし目を瞑り黙考を。
っかさ、脂肪に隠れてる目が瞑られたのが、何故か分かるんだけど…なんだぁこれ?




