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神隠し122

まずは、晩餐に招かれた挨拶からだろうな。


「今晩は晩餐へお招き頂きありがとう御座います。

 私は先日、この世界へ迷い込んで来た(あおい) 和弘(かずひろ)と申します」ってね。


したらさぁ…


「固い、固過ぎるんちゃあうんね。

 同じ日本人なんじゃけぇ、もっと気楽にしんさいやねぇ。

 でぇ、もう400年以上前ん話で申し訳ないんじゃけど…戦争、どがぁなったんね?」


そっかぁ…

当時は8歳の幼児(おさなご)だったとしても、戦争時代に生きた方だ、結果は知りたいだろうな。


「太平洋戦争は日本の負けですね」っとシンプルに。


したらな。

「太平洋戦争?大東亜戦争じゃないんね?

 鬼畜米英と争っちょったと思うちょったんじゃけどねぇ…」ってね。


大東亜戦争?太平洋戦争でなく?はて?

「え~っと…第2次世界大戦のことですけど…」


「呼び方が変わっちょるんかねぇ。

 天皇陛下の神敵に負けちょるとは、情けないねぇ」


神敵、神敵ねぇ…確か戦前は天皇を神格化していたと聞いたことが。

終戦時に現人神から人へ降りたと宣言されたと聞いたが…


「へっ?

 何を言うちょんね?

 天皇様よ、現人神なんじゃけぇね。

 神様が人になる筈がないわいねぇっ‼」


いや、ないと言われても…俺が産まれる前の話だしなぁ~


「私が聞いた話だと、当初は戦争犯罪人として処刑も有り得たそうですよ。

 ただ、そうすると、国民が自殺覚悟で襲い掛かって来る危機感を得て取り止めになったのだとか。

 天皇制廃止も同様ですね。


 けど、ケジメとして、現人神から人へ下天となったと…」

俺も聞き齧りじゃけぇ、詳しくは知らんわいっ!


ただ聖女様は、戦争に負けた話よりも、天皇の現人神から下天して人となった話にショックを受けてたよ。


「この400年の間に、そんなことが…」

いやいや、期間が…


「こちらでは400年以上経ってますけど、あちらでは戦後75年ですからね。

 どうも、こちらと、あちらでは、時間の過ぎる早さが違うようなんですよ。

 聖女様が戦争末期に、こちらへ来られたご年齢と過ごされた時間を知って気付いたんですけどね」


そう教えると、たいそう驚いてたよ。

俺としたら、あなたの若々しい姿が仰天ですがねっ!


その後は、用意されている料理を食べながらな。

鍋が絶品だったが、肉の味噌漬けを炭火で焼いたヤツも堪らんかったわい。


何時もは西洋風の食事も多いらしいが、日本人が招かれたと聞き、日本食となる物を各地へ赴き掻き集めて来たらしい。


まぁ…聖女様の生きた時代の日本食と令和時代の日本食では、全く違うんだがな。


なにせトンカツを和食と言い切る輩もいる。

歌にまでして、世に売り出しているから驚きだ!

トンカツは洋食で、昔はカツレツと呼ばれた西洋風輸入料理だな。

間違っても和食にはならないぞっと。


むろん、食文化の違いも告げてみたが…理解して貰えませんでした。

まぁ、生きた時代も年代も違い過ぎるから、仕方ないわな。

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