神隠し108
ユラちゃんとパッジャー鳥に擦り寄られていると、皆が俺の近くへとな。
皆は車両置き場から別の鳥車にて、こちらへ帰って来ていたらしい。
俺の状態は、常に別のパッジャー鳥にて遣り取りして把握してたんだとさ。
当初は、別の鳥車にて厩舎へ俺を迎えに行く話になったらしいのだが…
「迎えに行った鳥車で、同じことが起こりましたらどうなさるのかしら?」っとのヒューデリア嬢の一言で取り止めにね。
でぇ、取り敢えずは、俺を信じて出迎える準備のため帰ることにしたそうな。
まぁ、正解だった訳だがな。
しかし、パッジャー鳥って、何気に凄いな。
あの距離を遣り取りって、かなり速く飛んでね?
そんな俺の疑問にな、執事長が応えてくれたよ。
「パッジャー鳥はレクイア鳥へ寄生する鳥ですが、レクイア鳥から離れる場合もございます。
その際に寄生するレクイア鳥へ帰還を行うためには、レクイア鳥より速くなければならないのではないかと。
ゆえに、パッジャー鳥は素早く飛行し、飛行距離も長いとされておりますな。
また、寄生するレクイア鳥への帰省本能ゆえか、レクイア鳥から離れても、必ず戻れるそうでございます。
また頭も良く、訓練すれば、ある程度の指示をこなしましてな、寄生するレクイア鳥の羽が置かれた場所へ飛来しても来るのです。
その習性を利用して、メッセンジャー・バードとして、活用されておりますな」
何気に凄くないか、パッジャー鳥。
レクイア鳥には、数え切れない程のパッジャー鳥が寄生しており、レクイア鳥へ寄生する虫を啄み駆除しているのだとか。
レクイア鳥が快適に過ごすには、欠かせないパートナーなんだとさ。
パッジャー鳥の巣は、レクイア鳥の背にあるらしい。
羽毛の根元付近に、羽毛などを編んで作られた巣があり、そこへ卵を産み、孵化した雛を育てるそうな。
そんなパッジャー鳥を捕らえるため、年に何度か、羽を休めている状態のレクイア鳥にてパッジャー鳥の卵を確保する試みがな。
感応室から卵の確保へ向かう者達が、寝ているレクイア鳥の上を移動する。
そして、レクイア鳥の背にて、パッジャー鳥の巣を探し確保するそうな。
実はこれ、命懸けの危険な仕事なんだってさ。
なにせレクイア鳥が起きて動けば、下手したらレクイア鳥から落下。
高所からの落下だから、ほぼ助からない。
更に、レクイア鳥が気紛れに飛び立てば…
うん、命懸けだね。
だから、パッジャー鳥の巣を確保する作業は、感応師は行わない。
時期になると募集され、採用された者が執り行う仕事なんだってさ。
賃金は非常に高価であり、仕事を始める前に先払いされる。
確保した卵の数で上乗せもな。
得た賃金で贅沢しなければ.10年は遊んで暮らせるそうな。
だから非常に人気は高い仕事らしいが、年に十数人以上は命を落とす過酷な仕事でもあるらしいぞ。
そんな命懸けの行為で得た卵を孵化させた雛を、メッセンジャー・バードになるように育てているんだとさ。
何気に大変なんだね、うん。
そんな稀少なパッジャー鳥の内の1羽が、俺に懐いて離れないんですが…どないしょ?




