神隠し107
感応室からレクイア鳥へ向けて、声に出して願ってみる。
「ヴァルハラ館の第1宮屋上へ行きたいんだけど、お願いできるかな?」ってね。
第1宮の屋上にある発着場をイメージしてみたんだが、伝わっただろうか?
ドキドキしつつ待ってると、レクイア鳥から飛ぶと言う意思が感じられた。
俺達は既に、感応室に備え付けられている椅子へと座り、ベルトで身を固定している。
なにせ、ここはレクイア鳥の頭部へ据えられた小屋のような場所だ。
そのためレクイアの頭が動けば、ダイレクトに影響する。
本来は人が乗り込むには的さない過酷な場所だった。
考えてみて貰いたい、頭部は手足は別として、体で動く範囲が広くないだらうか?
上下左右を確認のは飛行中であろうと行うのだ。
そんな頭部へ設置された感応室は、地面が動いているに等しい。
地震のように揺れるのではない。
文字通りに移動するのだ、固定した椅子へ身を縛り付けておかないと、場合によっては吹き飛ぶからな。
身構えていると、レクイア鳥が厩舎?から飛び立った。
屋外なのに厩舎とは変だが、人に伝わり易いから、この呼び方らしい。
「に、2回目ですが…相変わらずキツいですねぇ」
思わず告げてしまう。
「はははっ、離着陸時が一番衝撃を受けますから…
飛行中は、感情予測で首が動くのを察知して行動すれば、ある程度は安全なんですがね」
そう、乗組員の1人がさ。
いや、ある程度の安全性なんだ…
改めて、エドワード執事長が止めた理由がわかったよ。
行きは興奮していたのと興味心からか恐くなかった。
だが、復路となった今は、冷静になったからか、結構恐いぞ。
ただな…
「なんだか、何時もよりも感応室が動かないな」
「ああ、凄く乗り易いぞ」
そんなことを、感応師の皆さんがね。
「おそらく葵天様が、ご乗車なされておられるからであろう。
さきほどから、レクイア鳥が気遣うような感情を感じているが、このようなことは、初めてだからな」
感応師長が、そのようなことをね。
俺が脅えていることを感じて、感応室が揺れないようにしてくれてるのだろうか?
全く揺れない訳ではないが、感応師の何人かは命綱付きで席を離れている。
そして、保存箱から水筒を取り出し、皆へと配っているぞ。
今回は短距離移動だが、それでも緊張で喉は渇くからな。
受け取った水筒から水を飲んでると、席を離れていた感応師さん達が、慌てたように席へと。
レクイア鳥から着陸の意思がね。
俺も、慌てて水筒の蓋を閉める。
そして椅子へと、しがみつくと同時に降下がな。
まるで、俺の準備が整うのを待っていたかのようなタイミングだったよ。
レクイア鳥が着陸したので、俺は妄想魔術にて風玉を作り地上へと。
レクイア鳥から困惑の感情がね。
俺は厩舎で待って欲しい旨をイメージすると、寂しいような、拗ねたような感情が…
言葉でなく、イメージで説得を試みる。
すると、俺が困っているのが伝わったみたいで、仕方ないっと言った感じの感情がな。
そして、納得したのか、飛び立って行ったよ。
でぇ、ユラちゃん?
体ごと擦り寄るのはお止しなさい。
パッジャー鳥も対抗するように、止まった俺の肩から俺の頬へ擦り寄らなくてよろしい!
なんで、こうなったし?




