神隠し103
ヒューデリア嬢の無茶振りではあるが…他に手があるかと言われるとな。
「むっ、むむむっ…
ですが…しかしですなぁ…」
エドワード執事長が悩んでるな。
有用性と危険性とを天秤に掛けて考えているんだろう。
けどなぁ~レクイア鳥が俺の居る、居ないで行動が変わるのだとしたら、俺が同行することが前提となるだろう。
そう考えると、選択肢自体がなくなってしまうよな。
「取り敢えず、調教室へ行けるか知りたいんだけど、行けるものなの?
それにさぁ、調教室とは、どうやって連絡を取り合っているんだろ?
調教室へ行くにしても、調教室と連絡を取り合わないとダメだよね」
疑問点を尋ねてみると…
「実は調教室と鳥車の間を飛ぶ鳥がおりましてな。
この鳥は、元々レクイア鳥へ住み着いておりまして、レクイア鳥へ寄生する虫を獲ったり、毛繕いを行う習性があるのです。
その鳥、パッジャーを飼い慣らし、調教室と鳥車との間にて連絡しておりまする。
これへ」
エドワード執事長が告げると、控えていた執事が、鳥籠へ入れた鳥を持ってな。
いや…これは、想像を裏切るほどに綺麗な鳥だなぁ~
エメラルドグリーンを基調とした体毛で、翼はサファイアブルー。
首輪をしたようにルビー色の輪がね。
そして目の回りだけ白色になっているんだ。
嘴と足は黄色だな。
派手ハデな鳥に見えそうな物だが、絶妙な調和を保ち、高貴ささえ感じさせる、美しい鳥だったよ。
「この鳥がパッジャー鳥なんですか?」
そう尋ねると、執事長が頷きつつな。
「さようでございます。
この鳥の足に文を付けましてな、放つと調教室と鳥車の間を取り外し飛び着させる訳ですな。
まずは、このように文を足の器具へと入れます。
開けた蓋をシッカリと閉めることが肝要ですな。
その後は、このように、鳥籠の扉を開けますとな………………」
いや、エドワード執事長…そんな顔で、俺の顔を見てもさぁ、俺のせいじゃ無いべっ?
いや、ないよね?
いやな、扉を開けたタイミングで出てきたパッジャー鳥がさ、何故か………俺の頭へ居ますね。
非常に非常にぃ嬉しそうで、楽しそうなんですが、なんで?
そんなに、俺の頭の上はさぁ、居心地が良いの?
けどね。
「あのね、お手紙を届けて欲しいなぁ~」ってね。
いや、俺…なんで鳥に話し掛けてんだろね?
言葉が通じる訳が…
「飛んで行きましたなぁ~」っと、執事長が呆気にとられたようにな。
もしかして…言葉が通じた?
まさかね。
「まさかパッジャー鳥までが、葵天へ懐くとは思いませんでしたぞ」
そんなことを言われても、照れますなぁ~
っか!鳥や馬に懐かれるよりも、人間の女性にモテたいわいっ!
っても、ハニートラップは、御免だがなっ!
待つことしばし…パッジャー鳥が戻って来たな。
鳥籠へ戻らずに俺の頭へ乗るのは決まりなんですかね?
「この指に止まってくんない?」って、人差し指を胸の前へ出すと、その指へ飛び移ってくれる。
執事長がパッジャーの足に付けられた器具から文を取り出す。
きちんと返信の文を受け取って来たようだな。
こんな小鳥がなぁ~
凄いもんだ。




