神隠し102
鳥車が飛び立ち、鳥車の車両置き場へと。
ここで鳥車を取り外し、レクイア鳥を厩舎へ移動させるのが、本来の流れとなる。
だが、車両置き場へと着き、鳥車が取り外されたにも関わらず、レクイア鳥が車両置き場から離れようとしないんだ。
「やはり、葵天が居られる場から、離れようとしませんな」っと、エドワード執事長が困惑顔でな。
車両置き場は厩舎と違い、レクイア鳥の世話をする施設はない。
レクイア鳥は巨鳥であるため、その世話には専用の施設が必要となるそうだ。
だから、ここへレクイア鳥を止まらせる訳にはいかないんだよ。
なのに…この子は、頑なにな。
さて、困ったぞ。
って、思っていると、またヒューデリア嬢がな。
「これは葵天がレクイア鳥の調教室へ行かれ、厩舎まで一緒に行かれた方がよろしいのではなくて?
この侭では、このレクイア鳥は、動きませんわよ」ってな。
え~っと…調教室?
いやね、調教師が居るとは聞いてはいたけどさ、その人が何処に居るのかは聞いてなかったな。
「その調教室って、何処に在るんだ?
鳥車を取り外したと言うことは、鳥車には無いんだよな」
未だに鳥車へ止まっている俺達は、今後のことを話し合っていた訳なのだが、そこへヒューデリア嬢からの提案がな。
正直、対応しようが無いと、困りきっていたところなので、新たな提案は有難いっと思ったんだがな。
「トンでも、ございません!
そのような危険な場所へ、葵天の玉体をお運びするなどとはっ!」
いやっ!どんな所なんだよっ!
って、レクイア鳥の下に鳥車を吊るしてたよな。
下からレクイア鳥を見上げたことはあるが、何かを吊るしているようには見えなかったぞ。
それならば、レクイア鳥の下ではなく、上かっ!?
「まさか…調教室ってさ、レクイア鳥の背にあったりは、しないよな?」
そう尋ねるとな。
「まさか、そんな所にはありませんわ」
そ、そうだよね。
ハハハハハッ、ふぅ。
「頭の上に決まっているではありませんのっ。
飛行先を確認したり、レクイア鳥へ指示を行うのですわよ。
頭部から離れた場所であるはずが、ありませんわよ」
当然っと言った感じで、ヒューデリア嬢がな。
いや、さぁ、ははっ。
当然ですか、さいですか…
「いや、そんな所へ、どうやってレクイア鳥の頭へ乗るんだよっ!」
思わず突っ込むとな。
「もちろん、レクイア鳥に頭を下げて貰ってから乗り込むに決まってますわ!
背に乗り込む方が、遥かに困難ですわよっ!」だってさ。
「詳しいんだな。
ヒューデリア様は調教室へ乗り込んだことがあるのかい?」って尋ねたらさ。
「葵天、私のことは、ヒューデリアと呼び捨てになさってくださいまし。
既に私の方が、身分が低うございますゆえ」ってさ。
ああ、呼び方ね…気付かなかったよ。
戸惑う俺へヒューデリア嬢が続けてな。
「むろん、調教室へは参ったことなどございませんわ。
人伝に伺ったことですの。
レクイア鳥の顔近くへ近付くなど…考えただけでも、恐ろしい…」
をいっ!その恐ろしいことを、俺へ遣れってんだよなっ!




