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能力者達  作者: 蒼田 天
第一章
6/60

-幕間- 雨宮繰平のある数日

 ラブコメ要素があります。

 ソーヘー君は天才ですよ。

 能力者達という題名ですが、読みはスキルマスターです。

 一日目


 俺は今、(なつ)かしの……いや、忌々(いまいま)しいあの高校時代の通学路を歩いている。

 時を(さかのぼ)ること二週間前。あの日退学処分を(こころよ)く受け入れた俺は、一つ条件を課せられた。それが定期テストの実施(じっし)だった。

 当然、退学=もう学校へは来ないで下さい。あなたはここの生徒ではありません。……の(あつか)いで間違えのない(はず)が、昔、祖母は中々の有名な教師だったらしく、そのお孫さんならと余計なお節介(せっかい)()いた教師達。

 そんなこんなでわざわざ、祖母の家まで行き、制服を取ってきて、学校へ登校。あー、めんどくさい。


 学校へ来ると、元俺の担任教師が声を掛けてきて、話によると椅子(いす)(つくえ)はハケてしまったので持っていかなければいけないらしい。それで、わざわざ椅子と机を持って教室へと向かう。ちなみに、教室は二階。筋肉痛の身体には少し、いや、結構大変だ。

 やっとの思いで教室へ着くと、元俺のクラス委員長、田中(たなか)彩華(あやか)が居た。

「雨宮君! 元気にしてた!?」

 在学していた時はそこそこ(した)しくしていたがそこまで仲が良いという程でもないのだが……何故か(みょう)(うれ)しそうだ。何かいい事でもあったのだろうか。

「田中、悪いんだけど、教科書貸して貰える? 一教科一分で構わない。あと範囲(はんい)を教えて貰っても」

「か、構わないけど。一分といわず何分でもどうぞ。取り()えず……現代文」

 てな訳で、俺は一つ一つ教科ごとに範囲を教えて貰い、教科書の内容を頭に叩き込む。一分と言ったが、一冊三十秒程度で頭に入れ、今日の所はとっととやって、とっとと帰ろう。そう思っていた。


 五分が経ち、クラスの中には人が多くなり始めていた。ちなみに俺は睡眠(すいみん)中。そんな俺を「おい、雨宮君よ」と起こしてくる、うざい奴が。

「なぁに、寝てるんだい? 寝てないで中退お馬鹿さんはお勉強してろよ。何なら教えてやろうか?」

 明らかに喧嘩(けんか)を売りに来ているので取り敢えずかってあげることにした。

「別に教えて貰ってもねー。(すで)に俺の方が頭もいいし知恵もある。お気になさらず。まずは自分の馬鹿さを理解する勉強から始めたら?」

 ──というより生きている世界がもう違うんだ。

 俺は嘲笑(ちょうしょう)しながらそう言った。

「てめぇ」

「何なら、今回のテスト全部九十点以上取ってくれ。すれば認めてあげるよ。頭いーねーすごいねー、って」

 そう、俺は棒読みで言ったら、もう怒り始めて。

「そこまでいうならやってやろうじゃないか。お前は九十点以上取れるんだよな?」

「当たり前だろ?」

 涼しい顔で俺は答えた。

「忘れたは無しだからな! 今の内に謝罪(しゃざい)の言葉でも考えとけ」

 そういい奴は去っていった。どうもまぁ、この学校の奴で俺に関わってくるのは馬鹿な奴が多くて困る。なんてことを考えてる俺の所に、委員長がやってきた。

「ごめんね、雨宮君。そんなに悪い人じゃないんだけど」

「いいよ、別に。田中の謝ることじゃないし」

 そう言って、俺はまた寝ようと思ったらまたもや委員長。

「あのさ、結月さんのこと知ってる?」

 唐突(とうとつ)に聞かれた。

 そういえばあれから、会ってもないし、連絡もしていない。

「何かあったの?」

「いやさ、この間急に引越(ひっこ)すからって……丁度雨宮君が来なくなり始めた時」

 確かに俺が退学を貰う一日前、不良と喧嘩した日に結月はいなかった。

「ごめん、その事は知らない。てか、初知りだ」

「そ、そう」

 と、いう何故か()え切らない、モヤモヤとした会話となった。


 この高校は県内でも有名な進学校で、馬鹿もちらほらいるが中々頭のいい人が多い。定期テストの内容も少し難しい。あいつは自信があって九十点という高めな設定をしたのだろう。下手したら九十五点以上の点を取ってくるとも限らない。だったら俺は満点を目指そうじゃないか……。


 テストは(とどこお)りなく、しかし確実に満点に近い点が取れるよう、集中して取り組み、直ぐに四時間が経過(けいか)し、定期テスト一日目が終了した。


 俺が帰ろうとした時、田中に声を掛けられた。

「雨宮君。あのさ、この後時間あるかな? 勉強教えて欲しいんだけど……」

「え、別に……いいけど」

「じゃあ図書室へ行こう」

 俺はされるがままに図書室へと連れて行かれた。


 一方、その裏では。

「兄貴、アレ雨宮繰平っすよ。どうします?」

「そりゃ、当然(とうぜん)……ぶちのめすに決まってんだろ」



 二日目


 昨日は、さっさと帰りトレーニングをするつもりだったのに、田中に勉強を教えることになってしまい帰るのが(おそ)くなってしまった。

 成績の良い田中が何故、俺が勉強を教えなければいけないのか、よく分からない。当然、満点を取れといわれれば取れる自信はない訳ではない。

 だけど、テストの回答を最後残して、わざと七十点前後を毎回取っている、なんてことは教えてないし、知らないはずだ。それならばいつも、八十点後半以上を取る田中の方が良いはずなのにも関わらず、何故俺に勉強を教えて欲しいことになるのか。

 答えは簡単だった。俺は退学処分をくらって、自宅で一杯勉強をして、テストなんか余裕なんじゃないかと思っていた、らしい。しかも堂々と朝から口論になり、九十点は当たり前と言ってしてしまったから、勉強いつもしているんだと、思ってしまった、らしい。

 更に、田中はレベル付けすると、五段階で五が付く程難しい参考書を買っていた。しかも、その中でも特に難易度(なんいど)の高いC問題が解けないらしい。それは流石に俺も分からないと思ってたのに。──思ってたのに、分かってしまった。

 お陰で、一時近くまで勉強を教えて、挙句(あげく)の果てには昼食まで一緒にしてしまった。

 帰ってメイには心配を掛けてしまったし、トレーニングは夜遅くまで続いてしまった。お陰でメイは、「私は今日は疲れた……。明日、朝食作るのめんどくさい」と、部屋に(こも)ってしまい、しょうがないので今朝は俺が振る舞うという(なぞ)展開(てんかい)になってしまった。

「はぁ……」

 深い溜息(ためいき)()らすと、後ろから声を掛けてきた。

「溜息をすると、幸せが逃げてっちゃうんだって」

 顔を見ずとも分かる。この声は田中の物だった。

「なんかあったの?」

「あぁ、昨日お勉強を優等生の学級委員長さんに教えたから、帰りが遅くなって大変だったんだ」

「それは、ごめんなさい。そしてありがとう。それと、聞いてもいい? 今日も放課後空いてたりする?」

「いわれると思ったよ。はぁ、まあいいけど」

「ありがとう。それじゃあ今日も図書室で」

 万円の笑みで笑うとそそくさと去っていった。


 本日も、全過程を滞りなく終え、図書室へと行き、昨日まとめておいた勉強法、問題の要点、解き方等を書いた紙を渡すと、驚くや(いな)や「これ、凄い分かりやすい! これさえあればC問題も楽勝だよ!」と、ありがたい返答。しかも「これまでしてくれてありがとう! 今日はこれでいいよ。また、明日」と、なんか凄い感謝され、別れを告げてそのまま帰ることが出来た。


 その時、事は着々と雨宮繰平を()る計画が進行していた。

「武器の方は(そろ)ったか?」

「ありったけ持って来やした」

「明日奴を叩く。各自準備しておけ」



 三日目


 俺は、昨晩遅くまで続いたトレーニングと、やっと届いた《グロック17》のエアガンの改造に(いそ)しんでいたせいで就寝(しゅうしん)は午前二時を回っていた。そのせいで今朝起きた時にはホームルームの始まる時間で急いで──といっても瞬間移動してだが──学校へ来たのだ。

 ちなみにヒップホルスターの使い心地とエアガン、グロック17の使い心地を試すべく腰に装着(そうちゃく)してある。

 ホームルーム中、俺が教室へ入ると全員の視線がこちらへと注がれる。教師が何故遅れたか問い詰めるのに対して、寝坊(ねぼう)したと答えるだけ。


 そして数時間後。

 テストが全て終了し上機嫌(じょうきげん)でいると、田中委員長さんがやってきた。

「昨日は、ありがとう。凄い助かった。お陰で今日のテストは手応えあったよ」

「おー、それは良かった」

「ちゃんと話聞いてる?」

 委員長さんは何故テキトーに返答したことが分かったんだ。

「聞いてましたよ」

「ならいいんだけど。ところで雨宮君、この後、少し空いてる?」

 田中からの唐突な質問。どうしよう。また、勉強教えてとか言われるのかな。教えるの苦手なんだよな。

「空いてる?」

「空いてるけど?」

「じゃあ屋上で待ってるから。ちゃんと来てよね」

 そう言い田中は笑顔を見せた。


 俺は職員室で教師と少し話をしてそのまま屋上へ行き、さっさと帰ろうとした。だけど、やっぱり厄介事に巻き込まれたのだった。

「おい、雨宮繰平君よ。ちょいと付いてきて貰えませんかねぇ?」

「すみません。実はインフルエンザにかかってしまったのでもう帰ります」

「うるせぇ! いいから(だま)って付いてこい! てめぇに拒否権はねぇよ」

 いや、あるよ! と、ツッコミを入れたかったが付いてこいといわれたので、怖いお兄さん──別に怖くないが──に付いて行くことにした。

 付いた場所は学校の廃部(はいぶ)した部室だった。(ほこり)っぽくてカビ(くさ)い嫌な場所だ。

 ──あぁ、こう考えるとボゲ部(ボードゲーム部)は良かったな。

「ここに連れてこられた理由は分かるよな?」

 いつだか見た覚えのある顔が数人。恐らくこの間ぼこした方でしょう。

「部活動へのご招待(しょうたい)?」

「馬鹿言ってんじゃねぇよ! 殺されたいのか! あぁん!」

「人を殺す覚悟なんかないだろ?」

「調子乗りやがって! 死ね!」

 男は右にある鉄パイプを(にぎ)ると大きく振りかぶった。だが、無駄(むだ)な動きが多い。俺はその間にホルスターから《グロック17》を引き抜き銃口を(ひたい)に向けトリガーを引いた。バン、と大きい音がしてその時には男は鉄パイプを床に落とし白目を向いて倒れた。

「改造して、威力(いりょく)を上げに上げまくったエアガンの力を思い知ったか」

 額から流血。血に染まったBB弾が転がっていた。

「よくも!」

 集団の中から四人が飛び出してくる。振り下ろされるパイプを()け、手首を(つか)んで背中から落ちるように投げ飛ばす。接近してくる残り三人の内の一人に手にナイフを握っている奴の手にグロック17を向けてトリガーを引く。残り二人の内のガタイのいい方の顔に回し蹴りをかましてもう一人には顔に右ストレートを入れた。

「エアガンってさ中のバネをいじったりすると威力が増すんだよ。昨日三時間掛けて作った甲斐(かい)があったよ」

 そう言い俺はエアガンを向ける。

 全員一本、二歩と後退(あとずさ)る。俺は出口の人間に銃口を向ける。出口方にいる奴らは武器を構えた。俺は額より若干下、そして左右にあるジャラジャラとピアスをした耳を(ねら)って、トリガーを引く。銃声。

 男は耳を押さえて(うずくま)る。その次に右隣の男へ。発砲。次は左へ発砲。

 そうやっていくうちに出口が近づく。と、後ろからのしかかろうとする三人の男達。回し蹴りで部室に無数にある机の山へ突っ込ませる。

 そして出口から出ると、そこにはまた十人程のお馬鹿達。

「おいおい、嘘だろ」

 俺は囲まれた。前、左右に十人。後ろに十七人。

 俺は拳銃を構えると、少し長めのパイプを持った男へ発砲。

 ヒットした男はうがぁっ とよく分からない声を発しながらパイプから手を離す。

 そのパイプを奪うと、後ろからくる馬鹿共を蹴り飛ばして部室の中へ入れる。

 そしてスライドドアの横の所へ、パイプ置く。パイプがつっかえ棒となり、これで中からは開けられない。が、俺はダメ押しにそのパイプを思い切り殴り変形させる。つっかえ棒は扉に(きず)を作りながら完全にはまった。当分は開けられないだろう。

 ちなみに、流石に能力を使わないと鉄は曲げれなかった。

 次に右にいる奴の顔へ(ひざ)をめり込ませる。着地して後ろへ向かってこいつの腹を蹴り飛ばす。後ろにいた三人が同時に倒される。

 そして俺は全速力で逃げた。向かうは屋上。だがそのまま向かえば追い詰められる。俺は能力を使い脚力(きゃくりょく)アップ。遠回りをして屋上へ、到着。

「ふぅ」

「どうしたの」

「いや、気にしなくていいよ。で、俺を呼び出した理由は?」

「ああ、えっと……」

 それから少し黙ってしまった田中委員長。え、何この展開。

「あのね、私、雨宮君のことが……」

「ことが?」

 田中は耳まで赤くする。おずおずと口を開く。

「ことがね、す……凄いと思うの」

 恐らくいおうと思ってたことと違う筈。

「雨宮君はさ、学校退学になって、そんな勉強なんかしてなかったでしょ。なのによく参考書の難しい問題解けるよね。凄いよ……凄いよ、君は」

「俺は別に凄くはないよ」

 俺は少し考え口を開いた。

「俺、この間あって友達……っていうか、仲間になった奴がいてさ、凄いんだよ。俺なんかより強くて、何より皆のこと見ていて。……俺は……ただ物覚えが良いだけなんだよ」

 俺はなんと言っていいか分からなくて言葉を(にご)した。

「やっぱり駄目だ、私」

「え?」

「あのね、私は、君が好きなの」

「うん?」

 状況(じょうきょう)の理解が出来ない。何がどうなってこの展開?

「結月さんがいることは知ってる。でも、自分の気持ちに(うそ)はつけない」

「いや、……俺は」

 言いかけた所で後ろの扉が激しく開かれる。年季の入ってる扉は校舎の壁に当たり、ひびが入った硝子(ガラス)は少し割れて床に散らばる。

「もう、逃げ場はないぜ」

 全く、めんどくさい。

「彩華さ、この返事はまたでいいかな」

「えっ?」

「じゃあ、次の定期試験で」

 そう言い俺は、馬鹿共のいる方向の反対、高くそびえるフェンス。スプレーで、ある漫画(マンガ)の巨人たちから守る壁の名前が書いてある。ちなみに俺が提案者。高さは確かその十分の一、五メートル。

 俺は高く跳躍。と、いってもちょっと能力を使っただけだが、三メートル程跳び、フェンスにしがみつきよじ登る。そして俺は飛び降りた。

「雨宮君!」

「あいつ馬鹿か」

「死体を見に行くか」

「どうなってる?」

 全員がフェンスへしがみつき、地面を(にら)む。

 そこには俺、雨宮繰平の姿はないのだ。


「馬鹿かお前は」

「あははは……」

 俺はあいつらさえ来なければ普通に下駄箱へ向かうつもりだった。が、予想外のことが起きたので、俺は透明化の能力を使った。当然あの時馬鹿共が来たあと、丁度屋上に来た人はこうなる。

 ──この人数で女の子をいじめるとか……最低。

 俺は、対象が目視していたり、何らかの方法で俺を認識(にんしき)している人間は見えてしまう、という透明化の短所を生かし、屋上から飛び降り、あたかも消えてしまった、様に見せかけたのだ。当然、屋上からそのまま飛び降りたら、見ていた人がいたら驚く。更に、瞬間移動で消えるのだ。もっとやばいだろ。

 だから能力を使い屋上から落下。対象の視線が俺から外れることにより、今まで目視していた人間も、俺は見えなくなる。そしてそこで瞬間移動を使ったという訳なのである。

「ソーヘーも無茶するね」

「ノブの普段(ふだん)の闘い方よりも十分安全だよ」

「だがソーヘー、なるべく人前で能力を使うなよ」

「分かってますよ」

「分かってますよ?」

「悪かったって」

 そうやって、俺の数日は幕を閉じた。


 ***


《雨宮繰平のテスト合計点数》


 十三教科1284点



「ソーへーって天才だよね?」

「あぁ、多分な」

「メイは勉強出来る?」

「……そ、そう言うノブは?」

「…………」

「凄いな」

 私も天才になりたかった。

 受験が終わったから気にせず書ける。と思っていたら書いている時に何度も寝落ちした。

 次回からは本編に戻ります。

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