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能力者達  作者: 蒼田 天
第三章 十二支決戦篇:上
59/60

対人戦闘訓練Ⅱ(3)

   3


『それでは、リョーVSソーヘーの対人戦闘訓練を始めます。三、二、一……スタート』

 ソーヘーとリョーの距離五十メートル。

 リョーの能力の利点は圧倒的な攻撃力。それに対しての力の消費量は少ない。

 力の消費量は作用する事象が多ければ多い程激しくなる。

 《超筋力》は自身の筋肉の強化、その力に耐えられるように骨や関節などの身体が自壊しないような強化が発生する。つまりは自身の身体にしか作用しない為、力の消費量が少ない。

 逆に、《地形操作》は地形への作用がある為力の消費は多くなる。それは地形への作用が多くなればより一層消費量が増加する。

 つまりは広域操作をするとそれだけ消費量が多くなる。

 操作可能範囲は半径五十メートル。それはインパクトの地点からの半径五十メートルとなる。半径五十メートルならどのようにでも操作は可能だが、範囲外となる途端、地面から伸びた地形などはピタリと止まる。それは上方向だろうが、下方向だろうが、横だろうが縦だろうが関係ない。

 ただし、距離が伸びれば伸びる程、それだけ消費量は激しくなる。結論、可能だからと無闇に能力の乱用は出来ない。全力での能力使用も数多く使える訳では無いということだ。

 しかしだ、本来の《超筋力》の能力のみで、充分に脅威となる能力で、《地形操作》はそのおまけのようなものだ。

 対するソーヘーの能力は複数ある内の戦闘向きな能力は《超筋力》のみで、《瞬間移動》は使い方が上手いだけで決して戦闘向きという訳では無い。透明化も時戻しも戦闘向きではない。今回の戦闘訓練では透明化は禁止というルールになってしまっている以上、気付かれぬよう近付き闇討ちなんてものも不可能。唯一の戦闘向きの能力である《超筋力》は、リョーと比較すると一般人とゴリラ程度の差ではすまない。刀を使った《纏い》もあるにはあるが、現在刀を持っていない。

 元の力の保有量には差があるが、それでも力の消費量が多く、圧倒的ソーヘーの不利。長期戦になれば、確実にソーヘーが負けるだろう。

 だから、ソーヘーは開始早々に仕掛ける。

 太腿に付けたナイフを抜きながら距離を詰める。五十メートルの距離を《身体強化》で疾走するのは時間など掛からない。

 リョーはそれを予想するようにキックバックして距離を取る。

 リョーがハンマーを構え振りかぶる。地面へ衝撃が吸収されるように無音で波紋が広がる。

 範囲いっぱいに壁が広がる。最高地点五十メートルの高さの壁。最高点からは円弧状に横方向へ広がり左右に五、六十メートル程。

「うっそ……」

 これだけの壁を作るだけで相当な量の力が必要となる。瞬間移動で壁を無視されることがあるにも関わらずこれ程の壁を作った。

 ──厚さがどれだけあるかは分からないが、突き破って行くのが一番かな。

 ソーヘーは手に持ったナイフで、左腕を縦に切りつける。

「《梅腕》ッ!」

 出血した血液が腕を覆うように広がる。

 壁が目の前に差し掛かりソーヘーが腕を振りかぶる。

 途端、壁が向こう側から破壊される。

「えっ、嘘──」

 構えられたハンマーが視界に入る。

 既に攻撃のモーションになっている為、避けることが出来ない。壁への攻撃をリョーへの攻撃へ変更するにも距離がある。リーチが足りずにどうにか届かせてもダメージを与えられない。

 ──仕方ない。

 バッ、と瞬間移動でリョーの反対側へ移動する。

 ──入った。

 そう思った瞬間。ソーヘーの想定がまた崩れた。

 伸ばした腕が上側から強い衝撃を受ける。

 身体ごと捻り、ダメージを軽減させる。

 直ちににキックバックして状況の確認を行う。

 壁の反対側。リョーの破壊した部分を覆うように、壁から新しい壁が地面へ突き刺さるように伸びている。

 ソーヘーの腕にはにヒビが入った。

 たった一瞬で戦況が変化した。

 一見大袈裟に見える壁を作っただけで戦況が変わった。

 戦闘へのセンスがある訳ではないが、元々リョーは頭がよかった。こういった戦い方が得意なのだ。

「以外に強度はある。生身なら盛大に折れていたな」

 リョーは仕掛けて来ないが、壁を挟んだ向かい側で何をするか分からない。たったの一枚の壁を挟むだけで戦いの難易度が爆発的に上がった。

「早く決めよう」

 ソーヘーはナイフで腕を切り刻む。

 肉が削げ、血が吹き出す。地面に垂れた赫い液体が広がる。

『ちょっ、ソーヘー何やってるんですか? 早く止血を……』

「《朱陽蓮華・緋岸赫蘭》!」

 地面の血液が重力に逆らって浮き上がる。

「なるほど、自身の血液量では全く足りない。だから血液を同時に力で複製するのか。本家の人間ではないから、使いこなせはしないが、形を模倣することは出来る。粗だらけの我流だが、問題ないだろう?」

 地面に垂れた血液の量が徐々に増加し、深く大きな水溜まりのようになる。

「リョー、見えてねぇだろ? 屈んでおいた方が身のためだ」

 ソーヘーは武器化した血液を握ると壁へ投擲する。

 赫い刀は壁に深々と突き刺さる。

「あれでは埒があかないな。壁の内部から……」

 更に二振りの刀を握り投擲し壁へ突き刺す。

「《丹爀散華》!」

 壁が吹き飛ぶ。大穴が穿たれる。

「なっ……嘘……」

 リョーは壁からより距離を取る。

「いい感じだ。ならじゃんじゃんいこうか」

 次々と壁が破壊され、既に瓦礫の山となる。

「そうか、武器化するのを扱えるのはこの場だけだから近戦での戦闘でしか有利にならない」

 ソーヘーは地面に残った血液を全て武器化し、そのうちの二振りを手に取った。

「全武器化操作」

 ──不味い。

 リョーは振り返り、距離を取ろうと走り出す。

「逃がすかッ!」

 ソーヘーは跳躍すると瓦礫の山を越え刀をリョーへ向け投擲する。

 リョーは能力を全力で発動し逃走する。

「このままじゃ、逃げられる」

 ソーヘーはリョーを追いながら離れていく距離をどうにか詰めようとする。

「いっそ、このまま捕らえるか」

 ソーヘーは立ち止まると操作していた武器化を全て解く。

「形状変化《炎糸櫻華》」

 刀が全て糸となり、リョーへ伸びていく。

 リョーは振り返りハンマーを振る。地面へ広がった波紋は壁を作りリョーはまた走り出す。

「クソが! 《赫蘭陽》!」

 血液を槍へ形状を変え投げる。ソーヘーの力では到底届かない距離。《超筋力》や《身体強化》のみでは届かない。力の操作技で距離を伸ばす方法。抵抗を分散させながら威力を殺さぬように。ソーヘーが考えた方法は《ベクトル操作》だった。身体の捻りや腕の伸ばしを槍の飛ぶ向きへのベクトルへ全てを変換させる。風の抵抗などをベクトル操作で推進力へ変更させる。

「届けッ!」

 バン! と空気の壁を破るように飛ばし、リョーの作った壁を貫いた。

 槍はリョーの数メートル前方へ突き刺さり、リョーを踏み留ませるには充分だった。

「《丹赫散華》」

 リョーの目の前の槍が爆散する。爆風に足元を持っていかれ飛ばされるが、地面に転がる前になにかに縛られる。

「動くな。捕縛完了」

 ソーヘーの左手に握られた拳銃はリョー額に当てられた。

『そこまで。勝者ソーヘー。治療をしますので瞬間移動装置の起動をお願いします』

 リョーを縛る糸が消えるとソーヘーは拳銃を下ろしとふぅ、と溜息をつく。

「あぁ、ダメだ。疲れた……」

 そのままふらっと倒れ込む。

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