対人戦闘訓練Ⅱ(2)
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ブゥゥヴ、ブゥゥヴ……と周期的に鳴り響くバイブレーションの音。二時間後に設定したアラームの音。目を覚ますが、正直寝足りない。
アラームを止めてベッドから降りる。時刻は十六時になろうとしている。
ディスプレイが一瞬固まり、上から『ノブ』と表示された着信が表示される。
「あぁ、起きたよ」
『声ガラガラだな。どうする? 今日は終わりにするか?』
「いや、やっておく」
『まあ、やらんって言われてもやらせる予定ではいるから安心しろ。こうやって休んでいられるなんて、実践じゃ当然無理だからな』
「否定はしないが、俺はコマの治癒をしていたんだ。労働的には仕方がない。あそこまでの傷を治すって、力の消費が相当……」
『それも含めてだ。確かにオレと比べるとその仕事量はまあ、大変だとは思うが、敵の数は把握出来てない。弱音は吐いていられないのは分かるだろ』
「まあ」
『それじゃあ、この後はリョーとで組んでいいか?』
「否定したところで、結果が変わらん。少ししたらそっち行くから」
『OK。腹ごしらえはするんだぞ』
──え?
通話を切られた。腹ごしらえってなに?
よく分からないが、まあ、空腹を満たすだけでも力は増加する。カップ麺とか、エネルギーバーでいいから胃には入れておこう。部屋を出て地下に降りようとリビングの先にある階段へ向かう。
「おっ、と」
コマとばったり出くわした。キッチンの方から来たから何かを食べたのだろうか。
「さっきは助かった。治癒を掛けてくれたんだろ?」
「そりゃ、あの状態じゃあ、投薬打てんし、下手に運ぶことも出来ないからな」
あれだけの負傷を負うことは中々出来ない。だが、メイと戦う前に情報を得られたのは有難くはあった。意外にも《分身》という能力は厄介だ。
「昼食、用意したから食べろよ」
「おお! 気ぃ聞く!」
ササッとリビングへ向かうと、若干不格好なおむすびが置いてあった。
「具は……梅と鮭、それと塩か。すばら……塩からいこう」
手に取って、頬張る。湯気が立ち込めるおむすびは熱々で米の匂いが食欲をよりそそる。塩気が若干強いが、疲労のせいか丁度いいくらいだ。
「あ、のぅ……」
後ろから声をかけられて驚いた。おむすびに気を取られていて全く気づかなかった。
「お茶どうぞ」
「ユイか……驚いた。ありがとう」
直ぐに一個目を食べ終え、次は鮭を食べる。この間の朝食の残りをほぐし身にしたのだろう。
「お味はどうですか?」
「うん、美味しい。塩気ちょっと強いけど、疲れてるからかな……逆に丁度いい」
「……ふぅ、良かった」
次は梅を食べよう。若干紅く染まった米がこれまた食欲をそそる。
「メイ……は寝てるんだろ。コマが作ったの?」
「はい。えっと、私も、少し手伝いました」
驚きのあまりゴフッ、と吹き出してしまった。器官に米が入って今世紀一番噎せている。残りのお茶を流し込み、落ち着いてから更に深呼吸。
「お米研いだとか?」
「握りましたよ、失礼な」
ユイが料理を。
「通りで、少し不格好な訳だ」
「コマの握ったものも不格好です! その評価はあんまり嬉しくありません!」
「いや、申し訳ない。これは、本当に失礼した。うん、すげぇ上手いよ」
「ん……ならいいんですよ」
危ない。気分を害すところだった。ユイは案外ヘソを曲げると面倒だ。
この間の《一騎当千》のとき以来、少し元気無かったようにも見えたけど、杞憂だったかな。
「食べ終えたら島に向かってください。リョーはほぼ準備を終えているので。今頃石積みしてるんじゃないでしょうか」
「分かった」
それから四つほどおむすびを食べ、起きてきたメイと入れ替わるように島へ移動した。
先程までの銃声響き渡る場所とはうって変わり、しんと静まり返っている。地点Aにいると思ったんだけど、誰もいない。
通信機をオンにしてユイに話しかける。
「ユイ、ノブとリョーはどこにいる?」
数秒置いてノイズが入る。
『Cの住居群です』
「あぁ、Dとの境の?」
『そうです』
今いる地点Aからだと、東側の方。障害物の多いところとなると、リョーのパワーより俺の機動力が活かされる。そこは戦い方にもよるけど、俺が有利になるようには感じる。
瞬間移動で住宅地まで行ったが、範囲が広い。戸建てが大半だが、団地やアパートもちらほらと点在する。駐車場があまりにも広いスーパーは、ここらでは一番の目印になるとおもったのだが、ノブもリョーもいない。
「どこにいる?」
『ブランコ乗ってるよ』
「一番大きい団地の近くの公園?」
『そうそう』
現在地からはそこそこの距離がある。いっそ、この場からスタートでもいいかな。
とは言いつつも、瞬間移動をし公園へ到着する。
「ども、お待たせ」
「ユイ始められるよ」
『ソーヘーの準備はいいんですか?』
「あー、まあ、大丈夫だと思う」
火柱は手元にはないが、まあ、瞬間移動で手元に持ってこれる。ジャケットの内側のナイフも新調し、投擲に適した薄くて軽い小型の物に変えた物が十本。腰にグロック17とポーチに入った手榴弾が三つと携帯の出来る色々。太腿に付けたサバイバルナイフがある。操作技も使えるし、あの技もある。
『でしたら、始めていきます』




