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能力者達  作者: 蒼田 天
第三章 十二支決戦篇:上
56/60

対人戦闘訓練Ⅰ(4)

   4


 瞼が重い。目が覚める。

 不思議と身体は軽かった。

『おい、そこのクソガキ』

 声がする方へ向くと反対方向へ吹っ飛んだ。

「ぐっ……」

 急な攻撃。全く対応出来なかった。重たい攻撃だったが不思議と痛みはない。

『テメェ、オレの残した傑作(けっさく)を使っていてなんなんだ?』

「まず、誰だ貴様。出会って早々、人の顔を殴って罵倒とは」

『あぁ?』

 身体が重く感じる。新人の頃に包丁を向けられたことがあった。人の殺気というものを初めて感じた瞬間だったかもしれない。その時の比にならない程の圧。

『オイ、誰に向かって口聞いてんだ?』

 口を開くことが出来ない。

(だんま)りか? つまらん。まぁいい、今日はテメェに教えることが会いに来てやったんだからよ』

 ──教えること? 会いに来る?

『初代糸牙家当主、糸牙結。その能力の扱い方と《血闘術》について、少しだけだが教えてやる』

「結? 血闘術とは一体何だ?」

 額に衝撃が走る。頭から後ろに数メートル飛んだ。

『テメェ、言葉伝わってねェのか? 今から教えるっつってんだろ?』

 額から血が流れ落ちてくる。私のではない、彼女のだ。

「しかし、糸牙家には結という先代はいなかった筈」

『テメェは三百年前のことが紙に記された事だけだと思ってんのか? だとしたら相当なバカだな』

 先程から言わせておけば私のことを愚弄(ぐろう)することばかり。

「五月蝿いぞ女。あまり私をイラつかせないでくれ」

『あァ? テメェそれでキレてんのか?』

 力の差を見せればこの減らず口も抑えられるだろう。能力《駒・キング》武器化。

『軽いな。寸止めなんつーヌルいことやってると死ぬぞ』

 距離を詰めて軽い攻撃を加えようと思ってた。かといって能力者の可能性がある。だから気絶するかもしれないくらいの力で攻撃をした。それを片手で受け止めた。

『先に殴り方から教えた方がいいか?』

 能力《駒・クイーン》身体強化。

 回し蹴りをした。さっきの中途半端な攻撃とは比にならない威力の。だから、足を掴まれた瞬間にゾッとした。

『今のはイイな。若干軽いが速さがある』

 本気だった。それを止められることないと思っていた。キックバックくらいすると思っていた。それが、食らった本人はケロッとしている。

『早さは大事だ。ただ、それよりも重さの方が大切なんだよ』

 そう言うと腕を挙げる。

『時間も限られている。手短にだ』

 掴まれた足を振り回されて投げられる。空中で何とか体制を整えると、目の前に女がいた。

『こうやって殴るんだ』

 例えるなら、リョーにハンマーで吹き飛ばされた時。その時と同等の力。

 能力者。超筋力で間違えないだろう。

『対応したか。これは想定外。まぁ、ここなら兎も角、現実でまともに食らってれば、その腕はくっついちゃいねェだろ』

 現実? 言葉に引っかかりを感じる。

『今の感覚忘れんな。時間もない。始めるぞ』

「待て。現実とか時間とか、さっきから」

『時間がねェって言ってんだろ? とやかく言わずに駒を出せ』

「訳は後で聞く」

 警棒を元のキングの駒に戻す。

『血闘術の知識は? ねェんダロ。面倒だなァ。とりあえず……』

 ブンッ、と振るった手には真っ赤に染まった大剣が握られていた。

『スマン……やりすぎた』

 右腕から出血をしていた。

 不思議と痛みはないが、背筋に不快感が走る。

「貴様ッ!」

『落ち着け。瀉血(しゃけつ)もまともに出来ねェんだ。その位の出血問題ない』

「何をしたいんだ!」

 頭に血が上る。さっきから話が通じないし自分のことばかり。こちらへの配慮もせず話を進めていく。

『それはな……その駒は、オレの作った術式を組み込んである』

「どういう意味だ?」

『つまりはな、そいつは《使用者の血を吸って》強くなる』

 右手に持つ駒を見つめる。血が付着した駒は汚れて、本来の透き通るような白ではない。

『ン? っかしィな? テメェホントに糸牙の血を引いてんのか?』

「私は糸牙景紀。糸牙の血を引いてるものだ」

『ンじゃ、なんで血を吸わねェ?』

 女は手を出し、血を一滴垂らした。駒が赤黒く染まった。

『テメェ、そうだな……センスがねェな』

「はぁ?」

『イヤ、さきの蹴りはまぁ、良かった。及第点と言える。オレのガキの頃といい勝負するだろう。ただなぁ、オレの次男坊がな、それりゃまァセンスがねェ奴でな、テメェも同じなんだろ』

 この女の子供の頃と同じ? センスがない?

「やってみなければ分からないだろ?」

『イヤ、そりゃァわからんが、術式が機能しねェなら何も始まらん。多少は使えるだろうが、能力値が若干上がるだけだろ。そろそろ時間も終わる。あのガキに教えて貰え。なんつったかな? イレズミを持ってるアイツ。テメェ仲間なんだろ?』

「イレズミ?」

『あぁ、思い出した。雨宮だ。雨宮繰兵』

 ソーヘーが? 血闘術を?

『時間だ。オレから教えられることは限られている。血の記憶は残っている筈だ。テメェの身体を流れるソレは、テメェの力だ。瀧血流(りゅうけつりゅう)を上手く扱え。そ……て……を…………メェの………………────』

 声が遠くなる。視界がぼやける。


 そして目を覚ます。

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