対人戦闘訓練Ⅰ(3)
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ドローンのカメラにはスナイパーライフルを用意するメイと、拳銃に弾を込めるコマが映る。
『それでは、メイVSコマの対人戦闘訓練を始めます。なお、両者の了承が取れているため実弾の使用を許可します。三、二、一……スタート』
コマは幾つかの駒を人形として各地へ散らばせた。メイはというと三人の分身を残して、他の分身を何十体にも分けて散らばせた。その数は三十。これはメイが出せる限界に近い数の分身で、これ以上増やすことはメイ自身の力の総量的に無理がある。
コマの分身一体につき、メイの分身では五、六体でいい勝負というところ。
メイの分身三十に対し、コマの分身は十一体。
メイも自分が不利だということを重々に理解していた。だからこその戦略と立ち回り、想定を幾つも重ねての戦闘。
コマもそれは同じ。この距離での戦いとなると、メイならば狙撃、あるいは奇襲が妥当。狙撃ならば隙を作り、奇襲なら数で攻める。どちらを取るにしても分身を大量に作ることは想像出来る。
だからこその駒の扱い方、配置。
駒の合計は白黒合わせて三二。その内ポーン八駒、ルーク、ビショップ、ナイトの三駒。その十一の駒それぞれに武器を持たせて、残りの持ち駒は十駒。
使える駒は限られている。
建物の影でメイの出方を探る。
メイの分身はその間に少しづつ、近づいて行く。
一分以上の時間を停滞が続いた。
沈黙を破ったのはメイだった。
ほんの一瞬、コマの作り出した分身を発見したメイは建物の間を縫うような狙撃を成功させた。
銃弾は頭を撃ち抜き、駒となり地面に転がった。その形はビショップ。
流石にコマも建物の間を縫う狙撃では発射位置を特定させることが出来ない。
駒が二つ失われた。分身の残りは十体。
次に動いたのはコマだ。
メイの分身を発見。すると同時に持っている剣で眼の位置を突き刺す。
一撃で確実に分身を消す為に狙うなら、頭、心臓、首のどこかだろう。だが、頭は頭蓋骨が邪魔をし、心臓はズレる可能性が出てくる。首に至っては切った後に攻撃を加えてくる可能性がある。それならば攻撃から身を守りにくく、装甲、邪魔をする骨が無い部分、つまりは眼玉は攻撃で狙うべき場所としては妥当。
だが、メイの分身は残り二九いる。一体倒されたと分かればそこには、何体もの分身がやってくる。
その駒は三体の分身に囲まれた。銃声が鳴り響く。それを機に各地で銃声が響きはじめる。
メイは依然ビルで待機したまま、スコープを覗いている。
コマはメイを捜すため、地点Aを駆け回る。
三分が経過し、メイの分身は十三体。コマの残りの分身は四体となった。そのうちの二体はルークとナイト。
メイの狙撃した回数は三度。消炎機着きのライフルを使っているので、マズルフラッシュが起きない。そう簡単には見つからない筈だった。
三度目の狙撃でコマは場所を特定した。簡単な予測演算と狙撃された位置、撃ち抜かれた所から狙撃地点を割り出した。
一度目の射撃でビルの合間を縫って撃ち抜いた。その次は大通りへ出てすぐに撃ち抜かれた。一度目の狙撃であらかたな位置を数箇所に仮定、二度目の射撃で発射地点を三箇所に絞込み、その後の三度目の狙撃で場所の特定をした。
まずは特定をしたことを悟られないこと。そして上手くその場所に近づくこと。
メイはそんなことは知らずにスコープを除き続けた。分身の能力は力の消費量も莫大だが、それ以上に精神的な消費の方が激しい。能力として、ある程度の補正はあるが、それでも十体を超えるような数の分身を操るのは、並の精神力では出来ない。メイもコマも精神的な疲労は激しかった。
駒を敵陣に少しづつ近づける。同時にコマもメイのいるビルへと近づく。
一体道路に出るように駒を動かす。
途端、頭部を撃ち抜かれる。狙撃された。狙撃地点は変わらず。
メイの分身が少しづつ集まってくる。狙撃地点にいる事で全体が見渡せて、分身への命令が与えやすいのだ。
今コマにとって一番避けたいことは狙撃地点が分かっているということ。そして、コマ自身の場所がバレること。狙撃地点の死角になるようなビルの間を移動しているが限界はある。
コマがビルに近づきつつある中、メイの分身も少しづつ行動を始める。分身の原理としては、自分の分身を三体。その分身の分身が三体、と枝分かれ状に三体づつ増加していく。枝が本体に近ければ近い程分身としての性能がいい。
メイは分身を三体、全て狙撃手として手元に残している。今までやられていた分身は分身の分身、即ち分身としての質は大して良くはない分身なのだ。
その分身のうちの一体をビルの中へ、一体を移動させた。
分身は五百メートル程離れたビルへ移動。そこからビルの方角へ索敵を行う。狙撃地点が絞られていることは確かなので、裏をつく為の分散。
狙撃地点の本体のいるビル周辺をまずは索敵。見える範囲は限られるが、ビルからは見れない死角は数箇所見ることができる。
コマはビル手前でキングの駒を用意する。
上からは覗き込まなければ見えない位置。駒をメイのいるビルの中へ投げ入れる。中に入った駒は人形にして着地させる。
キングの駒は他の駒とは違い、白駒だけなら作り出すことが出来る。自律型の分身人形。
──出し惜しみはしない。
コマが動き出す。ポーンとナイトの駒をメイに向かって走らせる。
運悪く、メイの分身はコマを見つける為、別方向の索敵を始めた。どれだけ早くても、銃を構え直し正確な射撃を行うのは困難だろう。
どれだけメイが早く気づけるか。それによっては分身の位置からの狙撃も可能。
分身一体が駒を捉える。
双方銃を構えて引き金を引く。
メイの分身の撃った弾はポーンの駒へ当たり、分身の額には風穴が空いた。
ポーンの傷は浅くはないが深くもない。未だに走って迎えている。
メイは銃を構えて、駒が出て来ると予想される場所へ向ける。
影が見えた瞬間。引き金を絞り弾丸は駒の足へと直撃する。直ちにもう一体の駒へ向け引き金を引く。
確実に直撃した。
ポーンは自立することが出来ず倒れ込む。集団で戦う時一番戦力が落ちるのは死者が出た時ではなく負傷者が出た時。
後ろから続く駒へ分身が引き金を引く。これも軌道は駒に直撃する。
──筈だった。
駒は進み続ける。
倒れるポーンの駒を担ぎ、盾にしながらビルへと近づく。
メイは次弾の装填をして引き金を引くが、ポーンに阻まれて弾は当たらない。
──不味い。
メイは横に転がり対物ライフルを構える。
駒は飛び上がり、メイのいる屋上へと更に距離を詰める。
分身が銃を撃つが掠るのみで当たらない。
トリガーを絞ると同時にズドンッ と重たい音が響く。
ほんの一瞬の間に狙いを定めて、正確に当てることは難しい。撃った弾丸はポーンの右肩を直撃し腕が吹き飛んだ。ナイトの肩を掠り、後ろで地面に着弾すると同時に爆散した。
すぐさま立ち上がり拳銃を抜く。総制作期間一年と半年。改良を重ねた《ベレッタ92-MOC》。距離、精度、腕への負担、発射速度、連射速度、重量、様々な項目で他にはないオリジナルカスタム。
セレクターレバーをフルオートにし、トリガーを引く。
武器を構えたナイトの身体を穴だらけにする。
マガジンが空になり、スライドが下がった状態のまま止まる。
「はぁ……」
間髪おかずに分身が何かを見る。
建物の影からコマがクイーンの駒を投げる。
分身はコマに向かって引き金を引くが、建物が障害物となり銃弾が当たらない。
クイーンは変形して人型になるとポーンの駒の短剣を構える。
その時には既にメイのいる屋上に達している。
メイは左足のホルスターに収められている銃を引き抜いて構える。
だが、それよりも早くメイに短剣が突き刺さろうとしている。
途端、クイーンの頭が内から破裂する。
メイから離れたビルにいる分身がクイーンの頭を撃ち抜いた。
メイもコマも場所が特定した。
メイはビルの分身をコマへ向けて走らせる。
コマはメイのいるビルから離れる為に移動する。
キングの駒を動かす。
メイはライフルを構え直しコマ探す。
駒が階段を駆け上がりメイに近づいていく。
最上階まで来て、屋上までの階段を登る。蝶番が壊れて屋上の入口に転がっている。
無駄に横幅のない扉をくぐる。拳銃を引き抜き構える。
後ろからの奇襲。メイはライフルを構えたまま動かない。
微かな違和感。
──まさか……。
後頭部を撃ち抜かれた。キングの駒が消える。
──ビルの中に一人居たのか。
コマも背後からやられることは想定外だった。
キングの駒が使えるようになるまで五分。
残りの駒は白駒と序盤に撃たれた黒ビショップと未だ健在の黒ルーク。
一度下がるか。そんなことを考えているとルークの駒が撃ち抜かれる。
──不味い。
ビショップの駒を分身化させ武器はマシンガンにする。
ビルの柱に隠れて牽制射撃を行う。戦略的高地、メイには銃弾一つ当たらない。そうこうしているうちに、メイの分身がこちらに近づい来るかもしれない。多少闇雲に銃を連射する。
メイがライフルを構えると同時に柱の影に隠れる。分身を台座にメイはライフルを構える。
壁をも撃ち抜く対物ライフル《OSV-96》だ。ズドンッ、という銃声と共にビルの壁ごと駒の身体を撃ち抜いた。
想定外に想定外が重なる。影に隠れて周囲の危険察知をしていた所を、柱ごと胴に風穴を開けられる。
持ち駒が白駒だけになる。
──何か策を……。
後ろから足音が聞こえ振り返る。近づきながら銃を発射してくる。
コマは慌ててクイーンで防壁を展開。ホルスターから拳銃を取り出し撃ち殺す。
──位置がバレた。
コマはビルの合間に隠れようとするが、上から狙撃される。メイの分身一体が空気圧縮弾で飛んできた。銃弾は当たらなかったがこの後は分からない。
残った駒も多くはない。
──そろそろ潮時かもしれない。
ポーンの駒を握り締める。いつ撃たれるかも分からない。かといっていつまでもここにいれば囲まれる。
スタングレネードへと駒を変えビルの上へ投げる。と同時にメイからの銃撃もある。
当然、メイの分身とはいえ射撃能力は相当である。銃弾はコマの肩を撃ち抜く。
「ぐッ……」
目と耳を塞ぎ、グレネードが爆発する音を聞くと跳躍する。
──能力《キング・千里眼》。
グレネードを投げて目くらましをした後逃げることは可能だが、不利な状況で逃げるよりもメイの分身を減らすことをコマは優先とした。
コマが分身への奇襲をすることは、メイにも予想出来た。だからこそライフルを構え、目視出来た瞬間に撃ち抜けるよう、トリガーに指を掛けた。
コマが出た瞬間、トリガーを引く。
その光景をコマは見ていた。
能力《千里眼》のスペックは高くはあるが万能ではない。明確な見たいものの位置、形、それら多くの条件が揃って初めて能力として役に立つと言えるだろう。条件が不十分になればなるほど、見える範囲は狭くなり、見える情景は不鮮明となる。
だからこそ、不鮮明な情景から銃弾を避けることは難しいと考えた。既に右肩は焼けるような痛みが伴い、腕を上げることが出来ない。これ以上銃弾食らうわけにもいけなかった。
銃弾はしっかりと脇腹を貫いた。
だが、それはコマが作った人形。ポーンの駒を一つ失った。あと数十秒で一つ復活するとはいえ、捨て駒として使いやすいポーンが失われるのはあまり良くはなかった。そして、コマの精神的にも人形はもう作ることは困難だった。
ビルの屋上へと着地し、クイーンの駒を刀へと変える。ソーヘーの刀《火柱》のレプリカだ。
眩惑した分身はコマを狙うことが出来ない。
太腿から抜いたベレッタの銃口はコマを捉えなかった。
銃弾はコマには当たらずに、少し先のビルの屋上の床へ着弾する。
コマは距離を縮め刀を構えた。
ここまでは順調だった。銃口がコマを捉えたのだ。
マズルが火を噴く光景を見ると同時に身体を逸らす。銃弾は腕を掠っていった。
何が起きたのか分からず距離をとる。銃口は尚こちらを捉える。
メイの本体がスコープを覗き分身を動かしているのだ。一発目でどの程度のズレが発生するのかを見て、二発目からコマを狙い銃を撃ったのだ。
──能力《ナイト・雨宮繰平》。
駒を握ると能力の模倣をする。能力《瞬間移動》。分身の後ろへ移動すると振り返った分身は銃を向けるが腕を切り飛ばす。肩口から斜めに胴を一薙する。
能力の模倣は力を多く使う。
これ以上、戦いが長引くことは不利であることをコマは理解していた。
──能力《ルーク・身体強化》。
ソーヘーの《超筋力》を上乗せして跳躍する。メイとの距離を縮めていく。メイの狙撃を避けながらコマは迫っていく。メイは分身一体をコマへ向かわせる。
空気圧縮弾で飛んで行く分身。サブマシンガンで牽制射撃を行うが防壁で阻まれる。
メイはライフルから手を離し立ち上がる。このまま分身一体で戦わせればいずれ負ける。分身二体でも状況は大きく変わらない。だったら残りの分身と一緒に奇襲を仕掛ける。
木箱からアサルトライフル《ベレッタARX160》を拾い上げる。スリングを肩へ掛け、長さを調整する。弾倉の弾を一発抜き、そこに新しく空気圧縮弾を入れる。
銃を後ろに構え引き金を引く。メイは勢い良く飛び出し、コマのいるビルへ飛んでいく。分身も同じように移動を始める。十一体同時の奇襲。十三人での同時攻撃。
引き金を引くとダダダダダッと、適度な反動でコマに向かって弾丸が飛んでいく。
コマの防壁は360度全部をカバーするように張られている。
次々とビルへ上がってくる分身も銃を構える。構えるが、撃たない。この状況でいつまでも防壁を張っている訳にはいかないと考え、メイは持久戦へと持ち込ませようと考えていた。
実際力の残量はメイの方があり、コマの精神的疲労もメイと比べると大きい。
だからこそコマは防壁を解かない訳にはいけなかった。
そのタイミングをメイは与えない。遠方からの強力な銃撃は三時間は続けられる程度には残弾数も残っている。下手に防壁の壁を薄くすれば撃ち抜かれる。かといって一部分に張り、銃撃を防いでも周りからの集中砲火には耐えられない。
ここで大きな一手を打つことで状況がガラッと変わる。
それを打ったのはメイだった。
ガガガガガッ! と、明らかに今までの銃音とは違う腹の底に直接響く音。一発が防壁内を跳弾して肩に直撃した。
足元。つまりはビルの屋上の一フロア下から何発もの銃弾を浴びた。
左足の脹脛と太腿を一箇所ずつ。跳弾が当たった肩。左腕を数箇所。激痛と尋常ではない出血量。
だが、ここで画期的な手を打ち出す。
満身創痍だからこそ、力の残量も身体中から吹き出る血液も、数分の間に破壊された自分の武器が限られている中で戦う方法。全く合理的ではない、コマは自分でも驚くだろう。
「アァアァァァァッ!」
キングの駒。武器化した普段と代わり映えしない警棒。
ただ、いつもと用途が違った。
「ラァッ!」
床を砕いた。
四方を囲まれた中で唯一スペースのある位置は、敵からの攻撃で気づいた。
向けられた銃口が火を噴くことはない。この距離でこれ以上銃弾を食らえば、きっと死ぬ。殺し禁止のルールに縛られた中ですることは恐らく……
グニャッ、と二つに分裂をする。距離を取りながら小さな銃を構える。
ワイヤーを射出する《ダブルデリンジャー・CWA》。小型の銃で一発限り。緊急時の場合に限り使用する程度。メイ以外はもちろん持ち歩くことはないであろうもの。
用途としては、緊急時、高所での壁へ射出したり、敵の捕縛に使ったり程度。一度だけメイの使用をコマは見たことがあった。その用途は捕縛。
バジュッ、という射出音と共にアンカーが向かってくる。
左腕は上がらない。右腕は武器を持って塞がっている。いつもなら武器で弾いていただろう。
武器を口で咥えアンカーを素手で掴む。ターンと同時にアンカーを投擲する。
ビッ、と音を立て分身の頭に突き刺さる。一体はそれを盾にし防いだ。残りの駒を身体強化に全振りする。
グラッと足元が縺れる。流石に限界を感じている。
身体強化で距離を一気に詰め、盾にしたまだ消滅しない分身ごと殴った。床へ叩きつけ床を一枚抜く。
一度このビルから離れるのが一番いい選択なのだろうけど、それをすれば戦況は変わらないし、力はほぼ枯渇している。身体強化の反動も大きいだろうし、これ以上長引けば負けが確定する。
だからこその、最後の力を振り絞る。
窓から飛び出す。序盤に無くなった駒が使えるようになった。それで《デリンジャー》を複製する。
アンカーを壁へ打ち垂直の壁へ着地する。
アンカーの音に気づき、メイの分身が顔を覗かせる。
──アンカーを外される前に。
垂直の壁を円を描くように走る。一歩をしっかりと踏み込まなければ、たちまち足が壁を捉えずに元の位置まで戻るだろう。
屋上まで一気に走りきる。到着すると、デリンジャーを手放し、口に咥えた警棒を手に移す。
集団戦での銃器の弱点は、味方に銃弾が当たる可能性があること。つまりは密集した場所への着地。
その為にメイ本体に近い場所にいる、分身へ警棒を投擲した。直撃した警棒を追うように跳躍する。その間に分身を二体潰す。着地と同時に向けられた銃を奪い周囲の分身を撃つ。
分身を一瞬で八体撃破する。残りの分身は三体。全員がナイフを構えた。
組手ではノブやソーヘーと互角に戦う。白兵戦でも油断は出来ない。
だが、今のコマの状態は身体強化により、通常の速度を超えていた。
一瞬でメイとの距離をゼロにした。一度目の打撃を何とかナイフで受けることが出来たが、いとも容易くナイフは砕けた。
分身が投げたナイフを警棒を握る手で掴み、そのままメイへ突き刺す。左腕に深く突き刺さる。防いだ腕を掴み背後へ回る。
右腕で引き抜いたナイフは足で蹴り飛ばされる。腕と小指が折れたのを感じた。
そのままメイを盾にするように分身へ向ける。
「チェックメイト」
分身は銃を構えたが撃つ気配はない。
『そこまで。勝者コマ。治療をしますので、ソーヘーは手伝いをお願いします』
分身は消え、コマもメイの腕を離す。
全身を強化したコマの身体は、力に耐えられず何ヶ所も骨が砕けている。
その場で気を失い倒れるところをソーヘーが支える。
「不味いな。力が枯渇している。投薬使える状態じゃない」
ソーヘーの影がコマの体へ登り治癒を始める。
「メイも無茶しすぎでしょ」
「仕方がなかった……」
メイは案外負けず嫌いなのかもしれない。




