対人戦闘訓練Ⅰ(1)
修正です。
1
目が覚める。
体が軽い。内側がポカポカする。
感覚が鋭くなっていく。
「ああ、ソーヘーおはよう。よく眠れたか?」
「んー、まあ、多分?」
「どうして疑問形?」
リョーに声を掛けられて一気に覚醒していく。
「今どうなっている?」
「今は、メイとコマが準備を始めた。もう少ししたら起こそうと思ってたんだけど……手間が省けたよ」
よっこらせ、と立ち上がると刀を拾いあげる。
サクッと腕に切り傷を入れる。
「ふぇ?」
「あ、切りすぎt……」
「何やってんのぉ!?」
リョーの声が裏返って変になった。
「いや、ホントに出来るかなって?」
「何を言ってる? いいから血が……止血……包帯……いや、投薬?」
「いや、大丈夫だから」
想像。血液そのものを操作。硬化。形状を刃に。
上手く、はいってないけど出来た。
でも──
「ドロドロ、というか、血液」
形は成しているような気もする、がドロドロと血液のまま。
「うわ、何やってんのさホントに」
「うーん、出来るはず、なんだけど」
足元に大量の血液が滴り落ちる。
イメージを変えよう。あの時見た赤い糸。
想像。靱やかで伸縮、それでいて硬い。
ピンと張り詰めた糸というより棒。上手くいかない。
頭を掻きむしる。想像がズレている。力から創造する武器とは扱いが異なるのか、形状が上手く定まらない。
何か、糸状の物。強靭であり伸縮するような。身近で、想像しやすい、糸状の物。
今触れてるじゃないか。
「髪の毛を元に想像を膨らます……」
繊維は複数で靱やか、かつ強い糸状。身近にこんないい例があるとは思わなかった。
創造の構築。複数の繊維で一つに纏めあげる。
「──出来た」
単一の物として考えるのではなく、組織と構成から創造を構築する。
「これなら」
血液を糸から鋼材へ。反りや長さ、刃の薄さ。想像の幅を先程よりも広く。
垂れていく血液は重力を無視して浮き上がり、反り返る刃となる。
「んぁ、出来たか」
「ソーヘー」
「ん?」
「止血をしてくれ」




