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能力者達  作者: 蒼田 天
第三章 十二支決戦篇:上
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Memorial episode 昔話Ⅲ(1)

   壱


 何年も昔の事だ。オレがずっとガキの頃。糸牙の家は長く続く《コロシ》の一族と聞いた。シキャクだかニンジャだかの末裔らしい。オヤジやオフクロは勿論強かったし、ジジイやババアはそれ以上だった。オレもその技や術を教えられた。ただ才能があったのだろう。オレは直ぐに技を覚え使えた。

 ジジイは自らの血液を操作する《血闘術(けっとうじゅつ)》を編み出した。ババアはそれを十分コロシの出来る武器に変えることを成し遂げた。オヤジは血液を表皮の上に(まと)う《楳腕(ばいか)》を、オフクロは血液を高温に溶かす《溶蒐火(ようせんか)》を作った。

 オレは固くて柔らかい、それでいて強靱な《糸》をオレは作り出した。矛盾した血。固いにも関わらず靱やかな動き。オレ以外には出来るヤツはいなかった。

 オレは《赫蘭(かぐら)》も《楳腕》も《溶蒐火》も直ぐに使えるようになり、《炎糸(えんし)》と《散華(さんげ)》を 作り出し、コロシの技も覚えた。

 家は下町のゴミ山のようなところにある、周りの家よりはデカい家だった。

 オレは花街のアマやヤロウが来るのをたまに見たが、奴らからは平和ボケした変な臭いがした。甘い花の匂い。櫻や楳とは違う、オレの知らない花の匂い。

 ある日、空中を歩いている女のガキを見つけた。歳はオレと変わらない程のガキだ。家系の問題や、最近のストレスだろう。いつもじゃあそんなこと考えすらしないだろうが、オレは行動していた。花街のガキにオレは負けることはないと思っていた。目視することも出来ない程気配を消し、距離を詰めて首を飛ばそうとした。だが受けられた。俺の刃は肉を断つ訳で無く、受け止められた。赤い刀。血闘術だ。間違い無い。空中を跳び退る。

「テメェ、その刀は血闘術か?」

「貴方も血を操るのですね。もしや糸牙家のお方ですか?」

 これがオレとサクの出会い。

 この後オレはオヤジに止められて退くことになったが、その後小櫻の家と幾度か会食をしたり手合わせをしたりと、オレとサクは両家の見世者として幾度も殺し合いをした。

 サクは小櫻家でも才能があるとチヤホヤされていたらしく、オレと同じ位血闘術を操る。更にはサクは《カゲ》ってのを操れるらしく、オレとは気の操作量が大きく異なる。攻撃はオレより重く、防御はオレより硬い。オレが勝るのは糸を操れることのみ。比較対象のサクに負けそうになれば、オヤジに焼かれるように血を浴びさせられた。

 一度、オヤジを斬ってしまったことがあった。あれ以来オヤジからもオフクロからも何も言われなくなった。その頃にはジジイも死んじまっていて、オレに何か言ってくるのはボケの始まっているババアだけだった。

 ──結に与えられた力はワシらの受け継いで来た力。絶やしていいものでは無い。使い方さえ誤らなければいずれ、大きな力にも抗える。

 訳の分からんことしか言えねえババアの言葉は、オレには理解出来ねぇしする気もねえ。ただ大きな力ってのには興味が湧いて、ずっと忘れずにいた。

 オレは一度サクに大火傷を負わせ勝ったことがある。

 血を霧状に噴射させる《躅躑燭(ちょくてきそく)》と血液を爆発させる《散華》でサクに致命傷を負わせた。

 勝った事でオレはオヤジやオフクロに何を言われるか分からなかった。オレを見たオヤジとオフクロは口を空けると掠れた声で『化け物』と言った。

 オレはこの日、オヤジを殺した。殺意と怒りに身を任せ奴を滅多刺しにした。

 それから両家の公開戦闘は無くなり、依頼された《コロシ》をする時でも、血闘術を使うことは辞めた。

 何年も独りの時にだけ血を使い、それ以外では大太刀《雷雨(らいさめ)》を肌身離さず持ち歩いた。


 そんな生活が十年続いた。

 こうやって、過去編・回想編を少し挟みつつ、本編が進むにつれ、過去の理由や意味、キャラ同士の関係性がより強固になり、本編と過去編がシンクロした時に、三章はクライマックスを迎えます。

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