対人戦闘訓練、開始(2)
『それでは、ノブVSリョーの対人模擬戦闘訓練を始めます。能力、武器の使用は無制限です。こちらも治療の方は精一杯やらせて頂きます。三、二、一……スタート』
ノブの体制が落ちる。超前傾姿勢の状態で左足だけに体重が乗っている。
「《デス・スプリング》ッッ!」
消える。
それはもう瞬間移動と言っても過言では無いほどの速度で一瞬でリョーとの距離がゼロになっていた。
ノブの膝を顔ギリギリで受け止めているリョーだが、体制は大きく後ろ向きだ。
ノブの足がフッ と動く。
「《ドリフト》ッ!」
この一瞬の間に掴んでいた足を押し飛び退る。リョーもノブの一触即発の闘いが始まる。
ノブは飛んで一度様子を見ようとする。それを追い掛けるようにリョーは地面を叩く。波紋が広がり地形が変わる。突起した地形がノブに襲いかかっていくがそれをするりと避ける。
だが、それを足場にし凄まじい勢いで距離を縮めながら、背中のハンマーを能力で出せる最大の速度で投げつける。一瞬反応が遅れたノブは反射的にであろう、左足の《ショックアブソーバー》で受け止めていた。
──詰める!
リョーは一気に跳躍しハンマーをノブの脇腹へと攻撃をした。──筈だった。体制が崩れる。
──足場から滑り落ちた? 攻撃は当たったのか?
そんな思考を他所にハンマーは宙を舞う。二の腕から先がハンマーを握り締めた状態で地面に落ちていく。
激痛。
──腕が切り落とされた。左脚が痛い。力が入らない。
地面が近づく。
どうにか右脚だけで着地をするが、崩れるように倒れる。
「ぐぁあぁぁ…………」
左脚が大腿から切り落とされて五、六メートル先を転がっている。
『そこまで。勝者ノブ。治療をしますので直ちに欠損部の回収と瞬間移動装置の起動をお願いします』
「──リョー……ごめん。本当に……」




