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能力者達  作者: 蒼田 天
第三章 十二支決戦篇:上
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一騎当千(7)

    7


 コンと軽い音がしながら頭に何かが当たる。目を覚まし周りを見ると、最初に俺に持たれながら眠るユイの姿。手元には空のペットボトルが転がっている。

「っつ──」

 全身が痛い。腰周りは鈍器で殴られるような痛みが走り、肩や腕は痺れるような痛みがする。

「ユイ、ちょっと起きてくれ」

「あと、五分……いえ、十分……」

「無理だ」

「あわよくば三十分程……」

「いいから起きろ!」

 俺は旋毛を親指で押し込むようにする。

「や、痛いです。ハゲちゃいます」

「こんなんじゃハゲねーよ!」

 ユイは起き上がって頭を擦りながら近くにある椅子に腰掛ける。こちらを睨みつけるように見てくる。視線が痛い。

 俺も続いて立とうとするが力が思うように入らない。少しだけ見える前髪が白くなっている。枯れてるな。

「ユイ、ちょっと来てくれ」

「はい?」

 椅子から立ち上がって俺の前で膝立ちになる。

「そしたらそのまま後ろ向いて……」

 後ろを向いたユイの後ろ髪をかきあげて、白い脰を掴む。

「ひゃっ……ちょ、やめっ──」

 力を少量流してユイの力と結びつかせる。そのまま自分の体に戻って来るように力を循環させる。

 そのまま一分程力を少し頂いて身体が軽くなる。

「あー、身体が軽いー。ありがとうユイ……」

「そーへーのばか……」

 さっきまで膝立ちだったユイは床に完全に座って──世に言う『ぺたん座り』ってやつ──いる。

「力取りすぎた? ごめん」

「そういう問題じゃないです! 出てってー! 変態! 女の敵!」

「え? 変態? なに、ごめん。なんでか分からないけどごめん」

「なんでか分からないことが問題なんです!」

 機材室から押し出されて扉を閉められる。

 ──なんなんだ? ホント。

 俺は自室に戻るとボロボロなスーツからナイフを外して処分する。今日の闘いで特大遊物を撃ち抜くことが出来なかった。もっと上手く出来なかったものか。真似物を斬ることに関しては凄まじくスムーズに、しかも一瞬で出来た。コマや影との日頃の戦闘のお陰だろう。だが、あのデカい物は最後の最後まで斬れなかった。

 もっと腕を磨かなければ。

 一度伸びをして、風呂に入るため部屋の扉を開ける。

「おつかれ、ソーヘー」

「うぇっ、ビックリした……」

「何したんだ? こんなに怒り狂ったユイは見たことないぞ?」

 そりゃまあ、ノブの後ろに隠れてタブレットにいつ触れるか分からないユイは怖いよな。廊下の機銃が全部俺を向いてるんだよな。

「ちゃんと謝罪してください」

「え、いや、悪かったって」

「…………」

 これは長くなるやもしれん。どうするべきだろう。

「……りん」

「え?」

「プリン買ってきてください。鎌倉の瓶の、甘すぎずスッキリしていて美味しいやつ」

「その位いいけど……って、なんでそんなの知ってる?」

「ソーヘーの部屋の冷蔵庫に入っていたので」

 俺、上げた記憶ないんだけど。まあ、でも許してくれそうにないな。

「今ある分は全部食べていいから、ホントごめん」

「マジ? お兄さん嬉しいなぁー」

「いや、ノブにはやらねぇよ?」

「分かりました。今回はこれで許します。これからはなんか言ってからにして下さいね」

「わかったよ」

 ユイはタブレットを操作すると壁の中に機銃が仕舞われる。

「にしても疲れただろ? 特大遊物と真似物がいたらしいが、大丈夫だったか?」

「まあ、真似物は大丈夫だった。でも、特大遊物は今まで見たことないような大きさで、硬さだった」

「ドラゴンだっけ? どの位の硬さだった?」

「メイの対物ライフルで抜けないから、戦車の主砲位じゃないと無理じゃないかな?」

「なるほどね、ソーヘーの攻撃は通ったんだろ?」

「対物ライフルで表皮が少し禿げて、そこを思いっきり爆破させたけどあまり意味が無かった」

「そうか。最終的にはどう倒したんだ?」

「え」

 そんなこと覚えてないな。必死だったし。

「っと、焼き斬った。口に入って内側から核を叩いた」

「口に入った? ホントに無茶苦茶するな」

 無茶苦茶か。生傷の耐えない戦い方は避けるようにしているし、最近は怪我をすることも少なくなっていたから問題ないだろ。そう言えば影にも無茶とか言われたな。

「まあいい。今日のところはちゃんと寝ろよ。そうだ、次全員で集まることの出来る日にちょっとやろうと思っていることあるんだ。後でユイにも言うけど、しっかりとした休息と健康的な生活をするように」

「了解」

「それじゃあ、夕飯には起きろよ」

 いつ取ったのか分からない俺のプリンを片手に部屋から出て行った。

 最後は改まってやりたいことか……。キャンプとか、ドライブか? 地下にある車は乗ったことはあるが、実際に使ったところとかは見たことがない。

 今日は風呂に入って寝るか。


 浴槽に浸かって、今日の戦いを振り返る。

 真似物に対しての対処は早かった。特大遊物には苦戦しすぎた。最後のあの刃は力の消費量が激しすぎる。もっと、力の基礎量を増やす必要がある。

 明日はまた、影と闘うか。コマとも最近は出来ていないし、そろそろ勝たなきゃな。

 もっと強くならなくちゃ。

 俺は風呂から上がるとそのまま布団に潜り泥のように眠った。

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