一騎当千(2)
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「ソーヘー、留守番中のことはよろしく頼んだ」
「了解」
色々と面倒なことになりそうな予感しかしないが、そのことは取り敢えず忘れて俺はユイとゲームをしていた。
「ソーヘー、回復ポーションを貰いたいです」
「その余りに余ったクレジットで買ったらどうだ?」
「ソーヘーの持ってるそのレアポーションが欲しいんですよ」
《プラント》を倒して手に入れたレアドロップアイテム。《プラント》は倒すとドロップするのは、ポーションの素材になる薬草等が大抵だが、稀に希少価値の高い《プラントの種》というレア素材や《プラントの秘液》という回復アイテムを落とすのだ。今回はボス戦へ備えて素材集めに来ているのだが、先程から結構な確率でドロップする俺と引き換え、ユイは一つもドロップしない。
「《プラント》なんてカスモンスターを、一回の攻撃で何体倒しているのか知らないが、何故そんなにドロップ率が低いんだ?」
「システムエラーですかね? 先程からパーティーを組んでいる方の作業速度は私より遅い筈なのに」
「場所を交換するか?」
「このステージの全体のドロップ率は同じです。ただ単にソーヘーの運が影響しているんだと思いますよ」
ユイのアバターは残酷とも取れる様な速度で《プラント》を消している。
「まあ、どちらにせよ街に戻ったらアイテムは分配だし、いいだろ?」
「それもそうですね」
ユイも了承したし、俺も作業を進めるか。
アバターが攻撃を与える。一体、多くて二体に攻撃を与えれば一撃で倒せる。それでも周りの《プラント》は攻撃を仕掛けてくる。一度攻撃が当たる事にHPは5程減る。それでも《バトルスキル》の《戦闘時持続回復+5》で十秒に一回HPが100回復するから、痛手にはならない。
《プラント》と戦闘すること三十分。
「ユイ、収穫は?」
「《種》が六つに《秘液》が五つです」
「俺は《種》が二一で《秘液》が二四ある」
「合計で《種》が二七で《秘液》二九ですか……まあ、そこそこですね」
そこそこと言うが、正直一人二十個位は欲しいと思う。他にも必要な素材は少なかれあるし、レベリングもしたい。
「《葉っぱ》はどのくらい持ってる」
「えっと、一Kと三二四ですね」
千三二四個。たった三十分の間、一人で千体以上の《プラント》を倒したことを考えると、驚異的な強さであることが伺える。
「それだけあれば普通のポーションは作り放題で使い放題だな」
「いや、作り放題って、《クレジット》はあるんですか?」
「三万Kくらいはある」
「ああ、じゃあ、余裕ですね」
「ユイはどの位ある?」
「四百万Kはありますね」
四百万ってことは? 四百億、か。どうやったらそんなに稼げるんだ?
「取り敢えず、ホームへ戻るか」
「ソーヘー」
「どうした」
手荷物を整理し、要らないアイテムはそこそこの値段でオークションに出品する。
「物達が……」
「物?」
──物? あの? 今?
「何体?」
「大まかな数ですが……今のところ五百はいます」
──マジですか。
数人で五百ならともかく、一人で五百はちょっと……。
「瞬間移動装置は?」
「ドローンに設置させます。なので囮を……」
ああ、はい。囮ですね。いつもと一緒。
「了解」
俺はすぐに部屋着を脱ぎスーツに着替えようとする。
「ちょっ、部屋に女の子がいるのですから……」
「今更だろ、早く機材室行かないとドローンを転送出来ないんじゃ……」
「このノートパソコンで遠隔操作可能です」
便利だなー。そう思いながらTシャツを着てズボンを履く。ナイフが全てのシースに入っていることを確認すると、ジャケットを羽織りファスナーを閉じる。刀を二本とも持つ。
「準備出来た」
「数は八百強。それではお願いします」
「おう、行ってくる」
正直八百体の物を相手にするのは不安しかない。でも、この数を相手に出来れば更に強くなれるだろう。これから闘うことになるだろう《十二支》はもっと強い筈だ。
「ソーヘー、《一騎当千》行きます」
俺は瞬間移動で物達が出たところへ向かう。
久々のソーヘーとユイのゲーム回。




