運命の始まり
これから第一章。
そしてやっと第一話です。
毎度投稿が遅いですが学生の本分は勉強なので……実際私、受験生ですし。
十日に一回か二十日に一回程の投稿速度で勘弁してください。
能力者達という題名ですが、読みはスキルマスターです。
1
八年前。小学校にいた頃、俺は浮いていた。右目が見えず、左耳が聞こえないお陰で色々と大変な思いをした。今思い出しても腹立たしい。あの時はケンカもよくしたし、いじめも受けてもいた。
四年前。ちょっとキャラでも変えようかな……なんて思って部活を色々と見た。体験入部などでは「君は天才だ」とか「本当に初心者かい!?」だとかいわれ最終的にはバスケットボール部に入った。
練習はキツくてだるくて嫌だった。なのに試合とかでは誰も相手にならない。ただつまらなかった。挙句の果てにはなんかスタメン出場してその時の大会は優勝とも思われた。だが、日頃の練習のサボりすぎで足がついて行かなくなり、体力的にもキツくなりそのままベンチに下げられた。そのお陰で部の全員から忌み嫌われた。
何もかもつまらなかった。だから部活は辞めた。
ある日、学校に行くとホームルーム前にも関わらず教室に教師が入ってきた。「繰平君、急いで先生に着いてきなさい」と肩で息をしながら教師はいった。教師の車に乗り、いつもの通学路を通った先には、真っ黒な我が家があった。両親は死んだ。家は全焼し住む場所も大切な者も失った。
──そんな時に助けてくれたのは結月だった。
俺が物心つく前に死んでしまった祖父の家で、祖母と一緒に暮らしている。俺は引き篭もりがちになり、祖母の家の自室で小説を読んでいた。突然、扉をノックされた。祖母かな? そう思い扉を開けに行こうとしたその時だった。
「繰平? いる?」
誰の声かは直ぐに分かった。
──結月は幼馴染で、お人好しで、お節介で、ドジで、不器用で、それでも優しい奴だ。
「ねぇ、学校、来ない?」
「…………」
「みんな心配してるんだよ……」
「そんなの嘘だろ」
「えっと……」
「嘘なんだな」
当たり前だ。授業中も休み時間もずっと独りで小説を読んでるか寝ているかの俺に、話しかけるのは結月位だ。
──だから俺は……。
「わ、私は心配してるよ!」
「人の家で大声だすなよ」
俺は冷たく言う。
──お願いだから頼むよ……。
「ねぇ、独りで楽しい?」
「あぁ、学校よか十分楽しいよ」
呆れたようにそう言った。
なのに結月は帰らない。
「ねぇ、私の事嫌いになっちゃった?」
「ば、馬鹿言うなよ。……お前の事なんか……元から……」
「…………」
「はぁ……」
俺は扉を開ける。扉に寄り掛かっていた結月はわぁぁっ! と間抜けた声を上げた。
「嫌いな訳ないだろ……」
「じゃあ……好き?」
「言わせんな……馬鹿」
俺は顔を背けながらも、結月を立たせたことを今でも覚えている。
2
変な夢をみた。それは結月が駅のホームから落ちようとする所を、俺が助けるが死んでしまう。が、そこで謎の神と出会うという夢だった。上手く思い出せない。
気づくと時計はAM.9:00を指している。駅には30分に集合という話だったので少し急がなければ。
身支度をし、家を出て、駅に着いたのは既に20分だった。周りには結月の姿はない。電車が来るまであと十分ほど。
端末型の携帯電話を見ると、数分前に『猫本結月』から『今家出たーあはっ遅れるー』とかいうふざけた着信履歴があるが、無視しておいた。
時間を持て余す俺は、近くにある自動販売機でパックに入ったバナナオレを買った。
3
電車が来るまで五分を切った。
そんな時に聞こえた「痛ったー」という声。結月か。
「ごめんごめん、遅れた」
笑いながらいう結月に「大丈夫か?」と訪ねるも、「大丈夫! 鍛え方が違うから」と微笑みながらいった。
そういうなんと無いやり取りをしていると、前を通る迷惑なおっさんが一人。酒臭く、ベロンベロンに酔っている。その上、周りの人達にぶつかっては「邪魔だ! 退け!」と怒鳴り散らすわ、ふらつき危うくホームから転落しそうになったり。
迷惑な人がいるものだ……。そんな事を考えていると、丁度通り過ぎていった奴の腕を掴む馬鹿が一人……結月はいつもいつも、面倒事に首を突っ込む。
なんて事を思っている俺を他所に「貴方、人に迷惑を掛けている癖にそのいいぐさは何よ?」と、おもいっきり自分の考えを素直にいうことはいい事だが、時と場合というものがある。
「あ"!? このガキが! お前に俺の何が分かる!? こっちとて気分が悪いんだ! 痛い目見たくなけりゃとっとと帰りな!!」
うん気分が悪いのか何なのかは知らないがおっさんのいっていることは正しい。なにもおっさんのことは知らないし、面倒なことになる前に撤収しよう。
だから結月、辞めとけって。
「そう……私はとても気分が悪い。理由は貴方! 迷惑を掛けていること分かってる? 分からないならなら家にでも篭ってなさい!!」
結月……それは正論だが……火に油を注いでいるってことを分かって欲しいな。
「このガキ! 調子に乗りやがって!!」
すると嘲笑していた結月の胸ぐらを掴むや否や……やべぇめっちゃ怒ってる。そろそろ酔いが覚めて欲しいな。
「すいません、俺の連れが……さぁ結月謝るんだな。すいません、俺達が悪かったということで」
「うるせぇ、てめぇは黙ってろ!!」
せっかく仲裁に入ったというのに、このいわれようとは、俺、虚しい。
そんなこんなをやっているうちに揉み合いになり始めた。周りもざわつき始め俺が困っているとき、悲劇は起きた。
結月はホームから足を踏み外し、今にも線路の上へ落ちようとしていた。気づくと電車も見える場所まで近づいている。
──やばい、このままだと。
咄嗟に俺は結月の手を取りをホームへ引き戻した。だがもう遅かった。
普段から引き篭もりがちだった華奢な身体は、引き戻す事は出来ても自分の身体を支えることが出来なかった。
そうしてホームから落ちていく俺を見て、顔面蒼白で走り去るおっさん。
すぐそこまで来ている電車に轢かれるのだろうと考える。
この時変なことを思い出した。
──思い出した?
暗い部屋? 突然現れた《願いを叶える神》と名乗る、中性的な顔立ちの奴。突如問われた《願い》。俺は……大切な人を守る力が欲しいと言った。
──これは前世の記憶? フラッシュバック?
色々な考えが交差する中、気づくと暗い場所にいた。
「ここは……」
「久しいな」
声のする方へ目を向けると、そこにはぼんやりと記憶に残っている《願いを叶える神》の姿。
「お前は父親と母親、右目と左耳を失った。失った物と引き換えに四つの《能力》を与えよう」
失った物と引き換え? 物って者も入るのか? ふざけるな。そんなものの為に、《能力》を手に入れて何になる。
「与えるのは《瞬間移動》、《透明化》、《超筋力》、《時戻し》だ。どう使おうがお前の自由。存分に使うが良い。失ってしまった物は取り戻せない。だが今から失わないよう、その《力》を使うが良い……」
そういいまばゆい程の光を放ち、光源の中に消えていった。
4
気づくと目の前には電車が迫って来ている。
このままだと轢かれて死ぬ。やべぇ。どうしよう。
こんな大勢のところで《瞬間移動》を使えば大騒ぎだし、着地してから《超筋力》で飛ぶとか……も目立つ。あぁそういえば《時戻し》とかいう能力があった。よし、《時戻し》を……使い方は? あぁぁぁぁ! どうしよう? つかこれ重要だよ。使い方教えろよ《願いを叶える神》様はよぉ! えっと……集中して……戻れ!
俺は心の中で強く念じた。
5
思わず目を瞑ると目眩に似た感覚を味わい目を開く。
そこには先程と同じように揉み合いになっている結月とおっさんが。
──成功したのか……。
やばい、このままだと俺また死ぬ。ちょっと不機嫌な俺はおっさんの腕を強めに掴むと……。
「──って、馬鹿っ! 痛え! は、離せ!」
おっさんは慌てて手を振りほどくと俺を睨む。
あぁ、そういえば《超筋力》とかいう能力あったわ。
そんな事をしている間に電車が到着。
「じゃあなおっさん。迷惑かけんじゃねえぞ」
そういい残し俺は結月を手を引き、電車に乗り込んだ。
「ありがとう」
急にそんな事をいう結月に、驚く俺が滑稽だったのか、結月はクスクスと笑う。
「何が?」
「いや別にー」
そんなやり取りをしていると3つとなりの駅に着いた。
6
何をすればいいかなー、なんてことを考えていると「そこの君、ちょっとちょっと」という声に俺は振り返った。
そこにはマンガの主人公みたいなイケメンさんがいた。ちなみにこんなイケメンさんとの交流は生まれてこの方無いはずだが……。
「オレだけど……覚えてない? 覚えてないよな。分からないよね。ごめんごめん。オレ、君と同じ保育園だったんだけど……覚えてないかな?」
「はい、貴方の様なイケメンさんは知りませんが」
つい本音が出てしまった。だが、年齢がまず俺より高そうだ。そして保育園の頃に仲が良かった相手は結月を除いて一人もいない。多分。
そんなことも気にせずこのイケメンさんは話を続ける。
「まぁ、家に帰って卒アル見てみればさ、オレいるから。ちなみにこれオレの名前と……電話番号。はい、じゃあオレ用事あるから」
卒アルなんて物は、元々のお家と一緒に真っ黒に焼け焦げてしまっただろうからないのです。
そう思いながら、イケメンさんがポケットから出したメモ帳に、何か書き書きした物を俺が受け取ると、人混みの中に走って行った。
丁度トイレに行きたいので、結月に一言掛けお手洗いに。
用を足すと、俺は先程渡された紙を目にすると、そこには《能力》とか《願いを叶える神》とか書いてあった。そこにはこう記されてある。
『大嶺縦野武
090-1×××-4×××
お前の能力について話したい事がある。お前の事は願いを叶える神から聞いた。今日の十六時、家に迎えに行く』
そう記されている。直ちに俺は『大嶺縦野武』に連絡した。
『どうしたんだ?』
「どうしたんだじゃない! どういう事か説明してもらわないと……」
『それが出来ないから後で迎えに行くと書いてあるんだろ。そこでゆっくり話す』
大嶺縦野武は落ち着いた口調でそういった。
「分かった。ちゃんと説明をしろよ」
そう言い電話を切った。
久々の外での休日を満喫し家に帰ると、大嶺縦野武はそこにいた。
「よお」
「挨拶は後でいいだろ」
「まあ、落ち着け。今から連れて行くからさっ」
そう言うと、急に俺の身体が浮き出した。
「うわぁ! なんだ!」
「これはオレの能力。今からオレ達《能力者達》の基地に行くから。ちなみにオレの名前はノブって言ってくれればいいよ」
ノブはそういい、俺の身体を巧みに操作した。
ここから俺と、《能力者達》の戦いが始まるのを、俺はまだ知らなかった。
内容はこれから少しずつ濃くしていきます。
説明の文章が多くなってしまう可能性もありますが、そこはなるべく気を付けます。読者に分かりやすく、面白い作品を書けるように。