-番外編2- 能力者達の戦い(3)
「ユイ、着いたぞ」
あの後、大量の荷物を抱えてる途中でユイの体力が限界に達し、ユイは大量の荷物の内の一つとなって路地裏へと進んで瞬間移動を使った。
「大変ご迷惑をお掛けしました」
『ソーヘー、悪いんだがユイの大掃除を手伝ってやってくれ』
ユイの部屋はネットショッピングサイト『ユニゾン』のダンボールが溢れかえっていて床には小説やゲーム機、カセット等が散乱してる。
「冗談ならやめてくれ。あれは相当な時間が掛かるぞ」
「ソーヘー……」
『買ってきた物はやっておくから』
俺は溜息混じりにユイの部屋へ向かった。
「ちょっ……まっ、待ってください」
俺がドアノブに手を掛けようとした所でユイに止められた。
「なんだ、見られて困る物なんてないだろ?」
「いや……その……」
──なんだ、この反応。
「ちょっとだけ、自分でやらせてください」
「まあ、いいけど、別に俺が中に入ってでも問題は──」
「大ありです!」
ここまで完全否定することは今までで無かったんだがな……。
「分かったよ、外で待ってるからさ」
「分かりました。覗かないでくださいね」
「そんなに見られたく無いものでもあるのか?」
するとユイの耳はみるみる赤くなっていき、その小さい口を開いた。
「見られたら恥ずか死にます」
──恥ずか死ぬだと……これは見ねば。
紙人形を放つか召喚獣を召喚して忍ばせるという方法もあるが、でもなんなら生で、自分の目で確かめたい!
という訳で……。
俺は瞬間移動を発動。ユイの目の前から消えた。
「え、ちょ、ソーヘー?」
──悪い、後で謝る。
まあ、いけないのはユイがもったいぶって更に可愛いのが元の原因だ。
出入口を防壁で封鎖。
部屋の中は真っ暗で何も見えない。スイッチを入れて明かりが灯る。
「あ……」
ゴタゴタな部屋。机の上には最新型のパソコン一式。更に散乱したお菓子の袋やエナジードリンク。そして積み上げられた小説が埋めつくしている。小説の中にはマンガもあるようだった。
視線を床へ持っていくと、そこには幾つものダンボールの箱。そしてそこに積み上げられた小説。別の所には少女マンガが幾つもの積み上げられていた。
本がギッチギチに詰まった本棚。コーヒーの染みの残ったマグカップ。開けっ放しのタンス。そこから覗く薄いピンク色の布。っと、あれは見ちゃいけないやつだな。
そして俺は、ユイが部屋に入れたがらなかった理由を知った。
ベッドの上に散乱した幾つもの服……と下着。っと、これも見ちゃあかん。これってラノベとかマンガとかアニメとか、そういうののラブコメとかで、着ていく服で悩んでるヒロインみたいな?
──まさかユイが……。
そして不意に訪れた罪悪感。俺は防壁を消した。
ゆっくりと扉は開き、俺は胃を握りしめられている気分だった。
「──ソーヘー」
「はい」
「見たんですよね?」
「な、何をですか?」
「言わなくても分かるでしょ! この散乱した服の数々! そして部屋のあちこちに置いてある小説と少女マンガ!」
服だけじゃなかったか。マンガも見られたら恥ずかしかったのか。
「あ、あと……その、下着とか……」
「下着は極力見ないようにしたよ」
「そういう問題じゃないのです!」
「じゃあ見なかったことにしたから」
「もっとタチが悪いです」
──これは相当怒ってるな……。
「ああ、悪かった。俺が悪かったって……」
「嫌です。許しません」
まずいな……想像以上にお怒りのようだ。どうするべきだ。
「ゲーム一緒にしてあげるから」
「今は大掃除が優先です」
「一緒に鈴カステラ食べるか」
「…………」
冗談で言ったが、まずかっただろうか。
「分かりました。でも今後はこういうことしないでください」
「分かりました」
「取り敢えず、一度部屋から出てください。その……目のやり場に困りそうなものは、退かすので」
その言葉に従った俺は、ユイの部屋から一旦出た。
***
──見られてしまった。
この散乱した部屋。だが、今日はいつも以上に散らかっている。ベッドの上には大量の書籍と衣服、そして下着の類いの布が。
今朝、私はソーヘーと出掛けるからと、着ていく服に悩みに悩んだ結果の服だった。だが、その時には家を出発する時間ギリギリとなり、片付けを済ませてないのだった。
──こんな部屋をソーヘーに見られた……死んでしまいたい……。
恥ずかしい。恥ずかしさのあまり死んでしまいそうだ。
私は手短にベッドにある衣服を畳み、タンスに押し込む。
「後は……」
溢れかえる書籍の数々。お菓子のゴミや空き缶。
「私一人では無理ですね」
片付けを私一人で行うのは不可能ということが分かった。
「ソーヘー、入っていいです。いえ、入って手伝ってください」
***
ユイとソーヘーのやり取りを書くのが楽しい。
次回の投稿は来週にしたいです。




