-番外編- 新メンバーと誕生日(11)
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「という訳で、誕生日おめでとう」
「ありがとう」
既に二杯飲んだノブが声を張り上げてそういった。
「さあ、食え。これはノブの財布から出てきた金だ」
「そうだ! オレの懐から出た金だからな、味わって食うが良い! そして酒も遠慮するなよ」
流石に酒には強いノブでも度数の高い物を飲めば酔うのも早いのか、と思っていた。
「だが未成年はダメだぞ」
そういいメイとコマを除いた俺達を指さした。
──こいつ、酔ってないな。
「コマは飲まないのか?」
「いや、私は遠慮しよう……」
──まさか……。
「まさか……コマ」
「酒弱いのか?」
「あ、ああ、一度上司と飲みに行ったんだが、その時に初めて飲んで……飲んだと言っても一杯目を舐める程度しか……」
「そして……」
「盛大に吐いた。無論トイレでだ」
全員が腹を抱えて笑う。なんせ全員、一杯は飲んだことはあるからだ。無論俺もユイもリョーも。
「わ、笑うな!」
「大丈夫だよ、無理して飲めとは言わん」
コマは溜息を漏らしながら料理を口へ運んだ。
一時間程経過し、いよいよプレゼントの時間が来た。
「リョー君。君はいつも頑張っているのでさぞ大変でしょう。なので午後のティータイムの時の為にティーカップと紅茶のパックをプレゼントしよう」
「ありがとう」
なぜ、ノブは毎度飲み物なのだろう。
「マフラーだ。風邪をひくなよ」
「ありがとう」
メイはマフラーか……。
「手袋です。風邪はひかないでくださいね」
「ありがとう」
ユイとメイは考え方が似ているな。
「え、す、スノードームという物らしい」
「おお、スノードームか。ありがとう」
コマはやっぱりこういう事に慣れてないのか少しぎごちない。
「俺は小説。ごめんなこんなもので」
「いや、全然いいさ……『咲良夢希』の作品か。ありがとう」
俺はリョーに渡すと少し『咲良夢希』の作品の話になった。
***
少し、プレゼントのやり取りを見ていただけだった。
ソーヘーは苦笑しながらリョーのプレゼントを渡す。
「俺は小説。ごめんなこんなもので」
「いや、全然いいさ……『咲良夢希』の作品か。ありがとう」
『咲良夢希』の作品。人気がない訳ではなく、一部では『異様な執筆速度』だとか『毎日徹夜作家』だともいわれている。だが、作者はそんなことは気にせず作品を書き進める。
後書きも少し質素で作者の人間性等は分からない部分が多い。作者はただ『私は自分が書いて楽しい、読んで楽しい本を書いているだけです。この仕事は、私は趣味でなっています。』と作品制作は趣味で行っているという。
取材やサイン会等の公の場に出たことは、デビューから二年が経った今でもたったの一度もない。
作品の世界観もバラバラで日常から戦闘系まで様々なジャンルの作品がある。そしてデビュー作から早二年。十五作目の作品がソーヘーからリョーへ手渡された。
その作家が目と鼻の先にいることにも気付かずに。
私はなるべく気付かれないように普通にしていた。




