-番外編- 新メンバーと誕生日(10)
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そして翌日。
『作戦の決行は午後の四時だ。設置してあるカメラでモニタニングした状況で、作戦を変更する時もある。その時は各自の状況判断に任せる』
『了解』
コマは人数分の制服を用意し、俺達はレーザーの様なものを顔に当てられて、今日の朝には特殊マスクが届いていた。
今日は木曜日。リョーは木曜日と日曜日にはバイトをしないので今日は一日中家に居る。
先程部屋に侵入した所、『咲良夢希』の新作の小説は置いてなかった。これで俺のプレゼントは確定。
現在の時刻は午後二時三十分前。家を出るには丁度いい時間だろう。
「じゃあ、ちょっと用事があるから出かけて来る。留守番頼んだ」
「了解」
ソファで小説を読むリョーにそう言うと、俺はカバンを持って外へ出た。
「こちらソーヘー。家から今出た。作戦実行まで市内の本屋で立ち読みをする」
『了解』
俺は本屋に入って小説が置いてあるコーナーへ行き、知っている作家の未読の小説を手に取る。
「こちらソーヘー。度々済まない。時間になったら連絡を頼む。開始時刻まで本を読んでる」
『りょ、了解』
俺はそう言うと本を読み込んだ。
時刻は午後三時四十五分になった。
『ソーヘー、時間です』
「了解」
俺は小説を棚に戻すと、一旦の集合場所である漫画喫茶へ向かった。
「揃ったな」
変声機を付けた俺達は、ノブである男の喋った言葉は全く知らないおっさんの声だ。勿論顔は老け込んで深い皺が刻まれて、更には髪の毛の色は白くなっている。
「全員、全くの別人だな」
そういったメイも女性警官らしいショートカットなお姉さんという印象だ。
「うん、リョーに動きはない」
「よし、じゃあ、行こうか」
店員への説明とかをノブが済ませ店を出ると駐車場へ瞬間移動。
今夜の晩餐の材料をそこにそっと置くともう一度瞬間移動。
今は路地にある扉の前だ。
こういう潜入等には長けたコマが先陣をきって扉へ近づく。
「取り敢えず、全員拳銃を構えろ。雰囲気作りの為に」
囁く様なノブの声が通信機越しに届く。右腰に装着した拳銃を引き抜く。拳銃は使わないが持っているというリボルバーの銃をメイが支給した。警察の拳銃はリボルバーというイメージがある。
「鍵が閉まっているな……」
「こういう時のオレの出番だ」
そういうと針金の様な小さな鉄の棒を両手に、扉へ差し込む。
「ふふふ、この扉で遊んでいた甲斐があった」
鍵を開けるのを遊びといえるのかツッコミたいが、それはまた今度にする。
「リョーに変化は?」
「異常なし」
「よしじゃあ……」
アイコンタクトで突入の準備をする。
慣れた手つきでドアノブを無音でゆっくりと下げる。
そして扉を一気に開放する。
俺達は綺麗に洗って床が汚れ無いようにしたブーツで床を蹴り、廊下を二手に別れてリビングへと向かう。
リビングが見え、そこには驚愕の表情で固まったリョーが、腰を浮かせている。
手筈通り、コマが指揮を執る。
「手を上げろ! 火薬類取締法違反、銃刀法違反、色々出ているぞ! 貴様らをここで逮捕する。余計な動きをするな! 手を頭の後ろに、床に膝をつけ! 取り押さえろ!」
俺とノブは駆け寄るとリョーを床に押さえつける。
「お、おい! 抵抗するな!」
「うぇ、俺何も……」
「おい、取り敢えずこいつを撃て!」
無論拳銃は俺の時同様……。
「え、えぇ!」
控えめな発砲音。それと共に紙吹雪が舞った。
「え?」
「誕生日おめでとう。リョー」
ノブはいつもと違う声でリョーを祝うとそのまま立ち上がった。
「はぁ、現場より緊張した」
コマはいいながらマスクと変声機を取った。
「あ、俺、今日誕生日か」
「流石はリョーだね。忘れてると思ったよ」
メイは苦笑しながら階段を降りて行った。
「いやぁ、突撃してリョーが暴れたら流石に止めるのはキツいからな……良かったよ、暴れなくて」
「何はともあれ、良かった良かった」
「本物の警察だと思った……」
俺達は笑いながら警察の制服を俺達は脱ぎ始めた。




