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能力者達  作者: 蒼田 天
第二章
16/60

-番外編- 新メンバーと誕生日(3)

     3


 その後、何人かの客の会計と本の位置を教えたり、在庫があるか確認したり、彩華からは三回程の通知と一本の電話があり、なんだかんだで五時には彩華がレジに着くことが出来た。

「本当にごめんね」

「別にいいって。どうせあと三十分で休憩入るし、それからは彩華が頑張って」

 バイト中、ずっと休憩みたいなバイトだけど。

「そうだ、猫本さんとは連絡着いた?」

「そういえば、この間結月から連絡があってよ」

 俺はあの時の状況について連絡した。

「──てな感じで連絡は途絶えたんだけど」

「それから連絡は?」

「連絡しても、現在その番号は使われてないって」

 家があった筈の場所は既に家はなく、売りに出された土地になっていた。

「学校の方は?」

「先生も詳細はよく知らないみたいで。急に引越しって驚いちゃうよね」

 ──本当にそうなのだろうか。

 俺の中で疑惑が大きくなる。

 ──『繰平君、元気?』

 ──『正解……なんだけどちょっと違うんだよね』

 ──『まあ、そのうち分かるさ。じゃ、またね』

 一番疑問なのは最後の『またね』という言葉。

 またねっていうくらいだから、また会える何かきっかけがあるって事なのか? だが、それからは連絡が取れないどころか、携帯端末を持っているかすらも分からない。

 ──だったら今、何処で何をしているのだろう。

 何より、電話先の結月の声は、声こそ結月その物だったが、漂わせる雰囲気や声色は結月の物では無かった気がした。

 いつもは子供っぽくておっちょこちょいだった感じだった。自由奔放で明るい感じ。だけど、あの声は全てを見通しているようで、何もかもを知っているようで……何故か怖い。

「──くん? 繰平君?」

 問いかけの声に我に返る。

「ふへっ」

「ちょっと、しっかりしてよ。だから、猫本さんのこと、何か心当たりあるの?」

「すまん、ちょっと考えごとを……」

 何か嫌な予感がする。

 結月からの連絡は非通知だったし、探すにも手掛かりが少なかった。紙には指紋とかも残っていなかったし。

「いや、ただこの間、結月から連絡があったんだよ。正確には結月の声だっただけで、結月とは断定は出来なんいけど……」

 俺はそこで少し間を置いて考えた。

「百パー、結月だったと思う」

 絶対なんて、この世にはないと思ってる。だけど、あの全てを見通しているかの様な声色は、何故か嫌な予感がしてならない。

「あの、店員さん。そろそろお会計お願いしてもいいかしら」

 その声で、今の自分の仕事を思い出す。

「あ、申し訳ございません」

 慌てて対応に入る。だが、女性の並んでいる会計は彩華の方だった。

「も、申し訳ございません!」

「いいのよ。私だったからよかったけど、中にはうるさいお客さんもいるからね。気をつけるのよ」

「はい! あれ、これどうやったっけ?」

 彩華はバーコードを読み取るスキャナを見つめる。

「そこに書いてあるだろ……」

「あ、本当だ。ありがとう」

 彩華は注意書きを読みながら会計を済ませた。

「ありがとうね。それじゃあ」

 女性は小説を入れた袋を持つと、店を出て行った。

「ありがとうございましたー」

 店長は「大事なのは挨拶だ!」といっていたのできちんと挨拶する。

「それじゃあ、私は点検してくるから」

「ん、よろしく」

 俺は椅子に腰掛けると本を読み始める。

「店員さん、お会計お願いしてもいいですか?」

「はいはい、すみません」

 俺はその声に顔を上げると本を閉じ、会計のデスクへと向かった。

「おやおや、これは雨宮繰平ではないか。学校退学してこんなところでバイトか?」

 そういいながら車の雑誌でデスクを叩きながら男がいってくる。

「すみません、誰ですか?」

「覚えてねーか、お前が顔面に膝を食らわされたんだよ。痛かったぜ、鼻の骨が折れてたんだからな」

 全く記憶に無いが、取り敢えず何か言葉を返しておこう。

「ご愁傷さまです」

「お前、調子乗ってんのか?」

「すみません、お腹が痛くて調子が悪いです」

「てめぇ!」

 男は俺の胸倉に手を伸ばす。

「まあ、いい。早く会計済ませろ」

 そういうと手を離し、雑誌をデスクに投げ付ける。

「本が傷んじゃいま……」

「うるせぇ! いいから早くしろ!」

「他のお客様の迷惑になる行為はお辞め下さい」

「てめぇ、本当に死なないと分かんねーのか?」

 もう一度、男が胸倉を掴むと、今度は顔を引き寄せる。

「お口が臭いですね。これ、いかがです?」

 俺は会計の場所の近くに置いてある、ミントタブレットを薦めた。勿論挑発をしている。

「はあ、まあ、いい。これも買ってやろう」

 そういうとミントタブレットを一つを摘みデスクの上に置く。掴んでいた胸倉を離すと、胸の前で腕を組む。

 ──やけに潔いいな。裏ありそ。

「合計、1188円になります」

「それはホントか? しまった金が足りねー……そうだ、雨宮繰平、払ってくれよ」

 そういうと男は財布を逆さまにする。財布からは十円玉が七枚と五十円玉が二枚、一円玉が十枚程出て来て、最後に百円玉が三枚出てきた。

「合計で、483円ですか。不足分はこれで払いますねー」

 俺はレジスタを操作し、払った金額を入れると男の財布をもぎ取る。

「ほら、こちらのカードを当店では使えるので……」

 そう伝えると更にレジスタを操作し、カードを勝手にスキャナにタッチさせた。

「お買い上げ、ありがとうございます」

「てめぇ!」

 男は俺の胸倉を再度、掴もうとした。だが、男の腕は誰かの手に止められた。

「貴様、少し現度が過ぎるぞ」

「け、警察……」

「こ、コマ……」

 何故かそこにはコマがいた。

「おい、店員。貴様も、客のカードを勝手に使うとは、どういう神経をしている!」

「え、すみません」

「金がないなら店に入るな、今回は見過ごす。店員、こいつとは知り合いか?」

 コマは俺を一瞥すると問い質す。

「あ、はい」

「なら、金を貸してやれ。後でこいつと一緒に戻ってくる。その時に貸した金額を返すようにしよう」

「あ……分かりました。お疲れ様です」

 その言葉を聞くとコマは男を連れ、店から出て行った。

「繰平君? どうしたの?」

 声の方向を見ると彩華が立っていた。恐らく、男との会話が聞こえて駆けつけたのだろう。

「いや、ただ迷惑客が来てな。そしたら警察が来て連れてった」

「ああ、そうなんだ」

 少々忙しいので、次回の投稿は三週間程後になります。

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