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能力者達  作者: 蒼田 天
第二章
15/60

-番外編- 新メンバーと誕生日(2)

     2


 本屋に到着すると、更衣室へ行きロッカーへジャンバーやパーカーを脱ぎ捨て、ラフな格好になると店のエプロンを着用し最新巻の小説を取りにいく。

 と、そのタイミングに客が入店した。

「──らっしぇー」

 いらっしゃいませ、と店員らしく挨拶をする。

 そこに立っていたのは驚愕の表情の田中彩華だった。

「そ、繰平君!? ここでバイトしてるの!?」

「あ、まさか……俺と同い年のバイトの人って──」

 店長はバイトを始める時にボソリといっていた事だ。

「ああ、多分私の事だよ。でも私のシフトは五時からだから、頑張ってね。忙しかったら声掛けてくれれば手伝うよ」

「大丈夫だ、この本屋の忙しい時間帯は五時半なのだ。そして休憩をその時間に入れている俺なのだ。助けを求めるのは彩華の方になるぞ」

「そうなの……」

 彩華はガックリと肩を落とす。

「でもなんで三十分も前に来たんだ?」

「それはね……」

 彩華は鞄から携帯端末を取り出すと、画面に表示された画像を見せる。

「この問題集と参考書を買いに来てて……」

「その参考書、名門大学じゃないか」

 画面に出ている参考書は東京都の大学だった。

「だけど、その問題集だとレベルが高すぎないか?」

 参考書はともかく、問題集はその大学よりも数段レベルの高い物だった。

「ちょっと留学も考えてて……」

「留学! 流石は成績トップの田中彩華さんだな」

「なんだけど……」

 そういうと顔を俯ける。

「どうしたんだ?」

「私、こういう入り組んだ場所が苦手で、バイト中もよく迷子になっちゃって……」

 ──店内で迷子……。

 この本屋も中々の広さがあるし、何より品揃えをよくするために棚の数が多い。確かに入り組んではいる。

 だが、店内には文庫や雑誌の種類を分ける目印となるパネルが垂れている。

「まじで?」

「まじです……」

 彩華は顔を俯けたまま左へと目を逸らす。

「まあ、流石にそろそろ慣れただろ? 場所とか分かんなくなったら連絡くれればちゃんと対処するから大丈夫だって」

「だといいんだけど……」

 そういいながら顔を上げ、辺りを見回す。

「そ、繰平君」

「なんだ?」

「あそこに行くまでには、どうすればいい?」

 そういい指を指した方向には『参考書・問題集』と書かれたパネルがあった。

「まじで、言ってる?」

「すみません。分からないんです」

 方向音痴にも程があるだろ。

「すぐそこの棚の間を右に曲がれば後はまっすぐ」

「ありがとう。本当にごめん」

 頭を九十度に下げて謝ってくる彩華に、顔を上げる様に言う。

「じゃ、なんかあったら連絡くれよ」


 ──それから一分程が経った。

 ズボンのポケットに入れた携帯端末がバイブレーションを起こし取り出す。メールが届いていて差出人は彩華だった。そして内容は……

『なんかパソコン機器とかの本が一杯あるんだけど……』

 ──あいつ……。

 本棚を横切り、本棚を十架程超える。すると参考書と問題集が置いてある棚に行き着く。

 だが、そこを素通り過ぎれば待っているのは、八架程の本棚を超えた先にある店の壁だ。その壁には当然本棚があり、パソコン機器のプログラミング等の電子機器関係の説明書等だ。

『戻れ、お前は馬鹿なのか頭いいのか分からんな』

 送信するとすぐに返信は帰ってくる。

『酷いよー、こっちは真面目に悩んでいるんだよ』

『壁が目の前にあるだろ? さっきの通路の方を向く。そしたら「参考書・問題集」のパネルがぶら下がってるからそこまで行く。そしたらそこで探せ』

『ご親切にありがとうございます』

 携帯端末に向け頭を下げる彩華の姿が想像出来る。

 ──全く。これでバイト出来るのか?

 俺は不安になった。

次の投稿は一月二十五日前後になります

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