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天才科学者と小さなロボット  作者: 一縷さん
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千日目

「やっと…完成した」


 千日目。僕は博士と共にいた。


 博士は感涙かんるいを流しながらそうつぶやいた。何度も正対してきた機械に突っ伏し、嗚咽おえつしながら何度も「やっと」と呟く。


 どうやら待ちに待った"ココロ"が完成したようだ。あれから千日。ずっと心待ちにしていた"ココロ"。あまりの歓喜かんきの思いに飛びねたい気持ちになるが、もちろんそんなプログラムはない。


 僕は博士の足に抱き着いた。少しでも喜びの念を伝える為に。


「待たせてごめん」


 博士はその場に膝をつき、僕を強く抱きしめる。僕も博士をぎゅっと抱きしめたく思ったが、どうも腕の長さが足りない。仕方なく、白衣の裾を掴んだ。


「後は君にこのプログラムをインストールするだけだ」


 博士はそう言って、僕の手を引いた。その先は起動したカプセル型の装置で、「入って」とうながされた僕はサイズの丁度いいその穴に足をはめ込み、次に体を入れてカプセル型のそれにぴったりと収まった。


「次に君が起動した時、"心"があるはずだ。その日を楽しみに待っているよ」


 博士はそういって僕の頭を撫でた。相変わらず心地ここちの良い博士の手。それがしばらく無くなってしまうと思うと悲しいが、仕方ない。


 何より、僕に"ココロ"があれば博士とずっと一緒にいられるのだ。博士の言っていた「話し、精進し、一緒に笑いあえる日」が待っているのだ。それだけではない。苦しいことも辛いことも、時には一緒に泣くような日もあるだろう。そんな日に、博士を支えられるのだ。


 その為の少しの間のお別れ。その為なら僕はどんな悲しみも我慢できる。


 博士はカプセル型の装置に付属ふぞくされている蓋を閉め、小さく笑う。それに笑い返したい気持ちはあったが、僕の口は動かない。仕方なく僕は頷いた。


 そんな博士の笑顔を最後に、僕は動作停止シャットダウンした。

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