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天才科学者と小さなロボット  作者: 一縷さん
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七十五日目

 七十五日目。僕は目覚めた。


 どうやら睡眠状態スリープモードに入っていたらしい。近頃博士を傍で見ていたからか、消費電力が高かったようだ。


 本来なら一定時間の動作が無ければ睡眠状態に入るのだが充電が切れかかっている時にも入るようだ。確かに、外から僕の電池残量を見ることはできないし、動作停止シャットダウンする前に伝えるプログラムも無い。


 博士から見て、僕の充電が切れかかっていると分かるのは睡眠状態スリープモードに入っている時のみだろう。


 博士は真剣な表情で液晶ディスプレイを睨んでいる。僕が睡眠状態スリープモードに入っていたことは愚か、僕が傍にいることにさえ気づいていないようだ。


「ハカセ」


 この電池残量では数歩歩けば動作停止シャットダウンしてしまう。仕方なく博士を呼ぶと、「どうしたんだい?」と優しく微笑みながら僕の頭を撫でた。


「デンチザンリョウガ、スクナイデス。ジュウデンガヒツヨウデス」


「あ、あぁっ、ごめん。すぐ運ぶよ」


 博士は僕の言葉に驚いた表情をしている。電池残量が少ないと睡眠状態スリープモードに入るというプログラミングをしたのは博士だから、それに気づかなかったことに罪悪感を感じているのだろう。


 それに僕は機械だ。声は人間のように強弱はないし、感情の込められた声を発することはできない。機械音声の僕は、博士からしたらまるで怒っているように聞こえてしまうだろう。


 本当はそんなことはない。電池残力を気にしていなかった僕が悪いし、博士の作業を乱したくなかった。本当は謝りたい気持ちでいっぱいなのだ。


 しかし博士はそんな僕に叱咤しったしなかった。重い僕を運ばなくてはいけないことにめ息をかなかった。それなら、博士に触れられる時間が増えるということになる。それはとても幸せなことだ。


 とがめられないのなら、少しだけ幸せを望んでもいいかな。


「よい、しょ。どうかな?ちゃんと充電できてるかい?」


 カプセル型の装置にすっぽりと体をはめると、何やら温かいものが入ってくる。博士に頭を撫でられたり、話している時とは別物の温かい。ちゃんとした充電の感覚だ。


「ハイ、ダイジョウブデス」


「それはよかった。しばらく充電するといい。窮屈きゅうくつでごめんね」


 博士はそういって、僕の頭を撫でた。あぁ、とても幸せだ。温かい。なんだか眠くなってしまうような気がする。まるで睡眠状態スリープモードに入っている気分だ。実際に消費電力を抑えられてるわけではないのだろうけど。


「じゃあ、僕は作業に戻るから。君はちゃんと、充電するんだよ」


 博士はそういうと、背中を向けて去ってしまう。遠ざかって行ってしまうことが悲しい気もするが、そんな我儘わがままは言っていられない。咎められなくても、できる限り博士の邪魔はしたくないのだ。


 静かに、眠ろう。博士は僕を置いていかないのだから。



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