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天才科学者と小さなロボット  作者: 一縷さん
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十日目

 十日目。僕は座っている。


 起動してから十日がった。科学者は相変わらず"ココロ"の開発に熱心で、機械に正対して作業し、疲れれば食事を摂り、睡眠を取り、また機械に正対して作業するの繰り返しだ。正確に演算していないから誤差はあるものの、約半日は機械に正対しているだろう。


 そんな科学者を観察し続けて一つ気づいたことがある。


 科学者の平均食事量、平均睡眠時間がとても少なく、平均労働時間がとても多いのだ。それどころか科学者は一日に必要とされているカロリー摂取量でさえ摂取していない時もあり、理想とされている睡眠時間に大幅に届いていない時もあった。このままでは体を壊してしまう。いいや、もう壊していてもおかしくないのだ。


 そこでプログラミングが起動した。僕はよっこらせと全身を使って立ち上がり、機械音を立てながら歩く。科学者の足元まで歩き終えると、脹脛ふくらはぎに頭をえるようにして僕は立ち止まった。


「ダイジョウブデスカ?」


 見上げると科学者は作業の手を止め、僕を見つめる。次第にその表情は口元がゆるんでいき、僕の頭を何度も優しく撫でた。


 その手は思っていたより大きく、温かく、そして思っていた通りに優しい。相変わらずだ。変わりのない科学者。僕は心が落ち着いていくような気がして、目を閉じた。


「心配してくれていたんだね、ありがとう。ちょっとだけ休むことにするよ」


 優しい手は頭から横顔、首、肩、腕の下へと移動して科学者は小さく「ふん」と声をあげると僕の体は宙に浮いた。


 驚きに足をじたばたさせると科学者が「痛い、痛い」というのですぐに動きを止める。ただでさえ金属でできた僕は重いだろうに、科学者はなんで抱えてくれてるのだろう。


 そこから数歩のところに大きめのソファがあり、科学者は奥に僕を寝転がらせて、自分は僕の隣にくるように寝転がった。


「おやすみ」


 科学者は僕の体に腕を回し、目を閉じる。


 どうやら、科学者は睡眠を取るようだ。僕の一言で休憩を取らせてしまったことに申し訳なさを感じつつもこれでいいのだろう、と思う。


「オヤスミナサイ」


 だって、プログラミングがそう動いたのだから。

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