娘を名乗る女
女の姿の俺が、牛の角を生やした男に馬乗りにされているときに、狐の耳を生やした女がやってきた。
彼女は、自分の事をこの国の王の二番目の娘と名乗っていた。
嘘だと思いながら、俺はその女を見ていた。
「む、娘様⁉︎どうしてここに!」
男が慌てた口調になった。
コイツも確か、王様との関係者だったっけ。
「生活に必要なものを集め、帰る途中にあなたに出会いましたが……一体何をなさっているので?」
王の娘は、牛の男を少し睨みつけた状態で話した。
男が慌てて理由を考えているとき、俺の右手を押さえるのを忘れていた。
今なら逃げれると考えると、俺は男の太ももにナイフを突き刺した。
咄嗟の痛みに叫び声を上げそうになった男だが、その前に俺は男の胸ぐらを両手で掴み、自分の顔の所まで勢いよく引き寄せた。そしてこちらに近づいてきた男の頭に目掛け、自分の頭をぶつけた。
男の体が反り返る。俺は自分の体を横に倒すように起こした。体が地面に落ちる。
「散々やってくれましたね………何されても、文句は言えませんよ」
俺は背中についた砂を手で払いながら、男に向けて喋りかけた。
自身の危機を知ったのか、体を引きずるように後ろに下がった。
立ち上がろうともしたが、右の太ももに刺さったナイフが邪魔をし、うまく立ち上がれなくなっている。
足を縛り上げ、取り敢えずは逃げれないようにした。
なんとかなったが、コレも王の娘さんのおかげだな。礼でも言っておこう。
そう思い辺りを見回したが、娘さんは何処にもいなかった。
また路地の中に戻ったのだろうか。
追いかけても怪しまれるだけだし、今日はもうやめておこう。
「つまり、かなり危なかったと…」
船に戻った俺は、オクルスに今回のことを報告した。
「………今度からは無茶をしないように。話は変わりますが、その王女様はどう見つけるつもりで?」
「『全てを知る者』にどういう人物かを洗ってもらう。そしたら今あの人達が何処に居るのかがわかるようになる」
「居場所が分かるのは、どれほどかかりますか?」
(……どうなんだ?)
『本来ならすぐに分かるのですが…何やら魔術的に小規模の妨害が入っているようです』
(妨害?)
『はい。おそらくですが、3日程かかります』
3日か……別に支障が出るってわけではないか。
あっ、そういえばクリスとパトリアが街に行きたいって言ってたな…
オクルスと行くのはアリか。
「オクルス、クリスとパトリアが街に行きたいって言ってたから、服と下着を探しに行かないか?」
「別に構いませんよ。舟は今のところ大丈夫ですからね。それと、出来れば男の姿でお願いします」
「……考えとくよ」
俺がそういうと、オクルスは少しだけ笑っていた。
服作らねぇとな……




