壁を殴って破る
白くてデカい壁にぶち当たり、入り口が何処にもないという現実を突きつけられてはや三十分。
俺は、この状況をどう打破するかを考えていた。
まず思いついたのはよじ登ると言うことだ。
一番やりやすいものだと思うが、よじ登るのはほぼトラウマなのでやりたくない。
次に考えたのは穴を掘り、下から通り抜けると言うことだ。
が、『全てを知る者』から聞いた話によると、耐震のために二百メートルの場所から土台を作っているみたいなので、それよりも深く掘らなければならない。
しかも俺の手はモグラみたいに土を掘るために特化しているわけではないので、この考えは無しだ。
となれば最後に残った、壁を突き破ると言うことだが……この壁を本気で殴ってしまうと、手首が折れる。
………どうする事も出来ないんじゃね?
だって殴ったら折れるんだしな。
ここは大人しく、引き返した方が───
『この壁を超える方法がもう一つあります』
………あるんだったら言えよ…どんなのがあるんだ?
『あなたが翼竜を倒した時に所持したスキル、「部分硬化」と「突貫」があると思われます。それを使用してみてはいかがでしょうか?』
そんなスキルあるのか?
そう思い、俺は記憶の中を探る様に、スキルを見た。
確かにそこの中に、「部分硬化」と「突貫」というスキルがある。
けど、どこで入手したのか憶えていない。
…………得体の知れない物だけど、使ってみるか。
早く砂漠から出たいしな。
俺はそう考え、スキルを発動させた。
すると右腕が、徐々に光沢の無い黒色に変わった。握ろうとすると、いつものように滑らかに曲がるのではなく、こどものおもちゃの関節みたいに、ガチガチと曲がった。
多分だけど、硬化はその部位を炭素に変化させて硬くしていると思う。
炭素は、鉛筆の芯やシャープペンシルの芯などに使われていて、とても脆い。けど、重力や圧力によって圧縮されると、地球上の鉱物の中で最も硬いダイヤモンドになる。
だから硬度を変えることによって、ダイヤモンドと同等の硬さになれる。
これを使って「突貫」をするのか……これなら、壁に穴をあけるぐらいは簡単だな。
俺は右手を強く握りしめると、「突貫」を発動させた。感覚的には何も変わらなかったが、行ける気がした。
俺はそのまま、勢いよく壁に向けて拳をぶつけた。
途端、壁が内部から爆発するかのように、白い粉と破片が飛び散った。
粉が消えた後、そこに広がっていたのは、大人二人が横に並んで通れそうな穴が開いていた。
とりい、このスキルを組み合わせれば強いことがわかった。今後の戦闘にも、役にたつだろう。
…………壁に穴を開ける用のスキルにならなければ良いけど…




