情報収集
情報屋の男は、俺から金貨を受け取ると部屋を出て行った。しばらくして、男は俺に紙を渡してきた。
その紙には、よく出来た似顔絵が五枚ほど左側にあり、その横には年齢や身長、氏名などが細かい詳細が書かれていた。
話が進むに連れて、段々と俺が知ろうとしている人物たちの趣味などが分かってくる。
例えばこの一番上の男。何処にでもいそうな顔をしているが、実際はこの国の王様の友人だと言う。
で、性癖まさかの同性愛者だった。
と、こんな感じで色々と理解して行った。
どうやらこの紙に載っているコイツらが常に行っている店はこの街にあるらしい。探すのは自分でしろとのことだ。
俺は感謝の言葉を送ると、情報屋の男から袋を受け取り、店を出た。
袋の中を確認した時は、払った時とは別に金貨が二十枚ほど消えていたが…今は気にしないでおこう。
この中にいる人物たちは、皆夜にしかその店に行かない。そして今の時間帯は昼下がり。かなりの時間を待っておく必要がある。その間にできることと言えば、素顔隠すものを用意したりとか、体の体系をわからない様にするローブとかだな。
それは用意しておくとして、後は待つだけだ。
さてと、夜に一人一人聞いてみるしかな?
しばらくたち、夜になった。
街の中で夜になると、ユリンがいるあの街を思い出す。アイツは今頃元気に酒でも飲んでいるのだろうか。
いや、それを考えるのは後でいいか。
今は店の前で奴が出てくるのを待っておくだけだ。
俺が今狙っているのは情報屋の男から貰った紙に書かれていた、一番上にある似顔絵の男だ。
名前は忘れてしまっているが、まぁなんとかなるはずだ。
そうこうしているうちに、男が出てきた。
何処にでもありそうな顔立ちに猫っぽい耳を生やし、高そうな雰囲気の服を着ていた。
お偉いさんは変装するのが下手くそなのだろうか。
それも後で聞いておこう。
男がこちらに背中を向けた瞬間、俺は物陰から飛び出した。ちなみに俺の姿は、フード付きのローブを上からはおり、右手にナイフを握りしめている状態だ。
背後を取るとそのまま後ろから体当たりする様な体勢で体をぶつけた。俺はそのまま、人気のいない路地の壁に男をぶつけ、喉元にナイフを突き付けた。
「死にたくなければ、私の質問に答えてください」
「あ、貴方は一体誰なんだ⁉ぼ、僕を脅して何になるんだ‼︎︎」
「黙ってください。今の立場、貴方はご理解しているはずです。今からでも話すと言うのなら、なにも危害を加えません。言わなければ…お分かりでしょう?」
俺はそう言うと、首にナイフを少しだけ刺し込んだ。首元から赤黒い液体が流れ出始めてきた。
「わ、わかった。言う通りにするよ。だから殺さないでくれ!頼む!」
「…では質問を。貴方はこの国の王様とはどの様な関係に至るのですか?」
「し、親友だ…ぼ、僕と彼は、小さい頃からの幼馴染で…」
「なるほど…では二つ目です。この国での異変、貴方はお気づきになられていますか?」
「彼の長女さんが、急に独裁者の様に変貌した事だろ?し、知っているとも」
「そうですか。では三つ目です。この国の王様は、今どうされているのですか?」
「城から次女と共に逃げた事は知ってる。けど、何処に行ったのかはわからないんだ。本当なんだ!」
「………いえ、大丈夫です。そして、すみませんでした」
俺はそう言うと、『テレポーテーション』を使い、その場から去った。
移動した場所は、さっきの男を襲った裏路地の屋根の上だ。
一人目ではビンゴにならなかったか。
後四人、どうなるのかな?
その後二人目、三人目、四人目と聞いたが、返答は一番目の男と似ていた。
違うところを言えば、性別が違ったりとか、王様との関係が違ったりするだけだった。
そして今、後ろから喉元にナイフを突き付けているのは五人目の人物だ。特徴といえば、牛の様な角を生やした男だということぐらいだろう。
「三つ目です。この国の王様は今何処に?」
「すまねぇが…俺はこれ以上のことは知らねぇ…」
五人目もハズレときたか…となれば、また情報屋に聞きに行かないとな。
などと考えていると、
「あ、アレです!アレが王様です」
牛の角を生やした男は、慌てた様な口調で言い出した。
それを聞き、俺は男が向いていた裏路地の入り口を見た。けど、それが間違えだった。
目を動かし必死になって探している途中、不意に自分の体が宙を舞ったのだ。
それが左手を両手で掴まれて振り下ろされる………つまりは一本背負いを食らっていたのだと、地に仰向けの状態で叩きつけられた時に知った。
体全体に痛みが走る。すぐさま起き上がろうとすると、男に上から馬乗りにされる。
「油断し過ぎてんだよ。ナイフ突きつけられたからって怖くはなんともねぇよ。さて、テメェのそのフードの下にはどんな顔が待ってるんだろうなぁ?」
男はニヤニヤしながら俺の顔に向けて手を伸ばしてきた。
なんとも恐ろしいことに、こいつは男も女も両方いけるというとんでもない奴だ。
女なら犯し、男でも犯す。本当に都合が悪すぎる。
かと言って抵抗すれば腕を折られてもおかしくない。
相手は闘牛並みの力を持ってる。男の片手で俺の両手を折られてもおかしくねぇ。
逃げる為にテレポーテーションを使えばこいつごと移動しちまうし、万が一オクルスのいる舟にこんな奴を送りつけたら尚更悪い。
そう考えていると、男の手によってフードが剥がされた。女の顔立ちになっている俺の顔が露わにされる。
「…良い顔だな。マジで可愛がりたいぐらいの可愛い顔立ちだ」
「やめて!離して!」
俺は躍起になってそんな声を出したが、ふとナイフを持っていたことを思い出すと、俺は男の右太ももに突き刺そうとした。
だが、ナイフが刺さる前に男の手によって右手を押さえつけられてしまう。
「そう慌てるなよ。それによく見たら、胸もデカいんだな。これなら俺がしたいことが出来るなぁ」
不気味な笑みを浮かべながら、男は俺を見下ろした。
ナイフは使えない、魔法も使えない。
完全に手詰まり、為す術が無い。
クソっ……どうする…どうする!?
「貴方達、一体何をなさっているのですか?」
いきなり路地の奥から女の声が聞こえてきた。
………誰だ?
そして段々と、足音が聞こえてきた。
徐々にその足音は、こちらへと近づいていく。
路地の暗闇から出てきたのはウェーブがかかった赤い長髪、狐のような耳を生やした女だった。
「誰だ?」
俺に馬乗りをしている男は、その女に向けて声を掛けた。
すると女は、その言葉に返答するように口を開いた。
「ネフィルス第4代国王、グリス・ヴォートの次女。ソラ・ヴォートです」




