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ソロモン七十二柱

一瞬過ぎて理解出来なかった。

髪の長い男の右手に水で出来た刃が出た途端、狼耳の男は口から上を切られ、地面に倒れこんだ。死んだのだ。


「お怪我はありませんか、お嬢さん」


いきなり髪の長い男、フォカロルは右手に作られていた水の刃を消しながら話しかけてきた。

この場合どうしたらいいんだ…取り敢えずお礼はしとかないとな。


「………どこの誰かは存じませんが、助かりました。ありがとうございます」


俺はそう喋ると、悠々とお辞儀した。

これなら怪しまれはしないだろう。


「あーいいよいいよ。僕も助けたかったんやからさ」


男はそう言うと、一拍置いてから再び口を開いた。


「それと、そんな喋り方せんでもええで?マグナさん」


………なんて言ったんだ?

コイツは今、なんて言ったんだ?

名前…を言ったのか?

誰の?誰の名前だ?

俺だ。俺の名前だ。

俺がスケルトンの時の名前だ。


「…根拠はありますか?」


「それも説明するんで、まずは質問タイムといきましょうや。聞きたいことあったら言ってください」


「ならお言葉に甘えて………どうして私がマグナという人物と言えるのですか?それと貴方の目的と、貴方がたの『ソロモン七十二柱』について。そして貴方がたの目的は、なぜこの街に来たのかもお聞きしておきます」


「うーん………質問が多いんで、僕なりの順番にお答えさせて貰います。まずは、ワシら『ソロモン七十二柱』についてお話ししますわ」


髪の長い男はそう言うと、口を開いた。


「『ソロモン七十二柱』って言うのは、旧約聖書に現れるソロモンっていう人物に使役された悪魔の事。まぁ、ソロモンの方についてはそれぐらいやけど、僕らのはちょっと違うねん」


「と、言いますと」


「さっき僕は名乗ってたけど、あれは僕の名前ちゃうねんな。悪魔の皮を被った人間。僕らは悪魔の名義を借りてるだけ…って言ったら聞こえがええかな?」


「具体的には?」


「ソロモン七十二柱に出てくる悪魔は王や侯爵や騎士。言うなれば、全員が家の紋章みたいなのを持ってるってわけや。んで、僕らは自分たちの体のどっかにその紋章を入れる。そうしたらその紋章を持つ悪魔と同等の力を引き出せんねん」


「それが貴方たちですか…では、この街に来た理由と目的についてお聞きしたいです」


「わかってるって、お前が聞きたい事話たるから、僕の順番で言わせてや」


「僕が今回来た理由は、この一件が魔王によって引き起こされてるって踏んだからや。アイツらがやったってのを確認できたらそれでええし、なおかつ奴らの足を掴めたら万々歳やな。そんで、ソロモンの目的はこの世の統括者的存在になる。聞こえは悪いけど、簡単に言ったら世界平和みたいなもんや」


なるほどな。世界平和を目指す人物か。普通にいい奴だと思うけど…


「お前さんはいい奴と思ったかも知れへんけど、一番の問題があんねん。ソロモンは確かに平和を目指してる。けど、手段がめちゃくちゃや。自分の障害となる存在は徹底的に潰す。それが民間人だろうと、この世界だろうと、しまいには自分の仲間でもやで?」


「………ご冗談ではないので?」


俺は少し冷や汗をかきながら聞いた。

目的の邪魔になる存在は潰す…まるで独裁者じゃねぇか…

そんな奴がこの世を握っても良いのか?


「さぁね、僕は気に留めてないよ。世界がどう傾こうが、僕はいきてたらそれで満足やで。んで、あんたの聞きたかったもんは全部話したで。これでええか?」


俺はその言葉を聞くと、無言で頷いた。

男はそれを見た後、俺のすぐ横を通り過ぎる…ついでに俺の尻を右手触ってきた。


「それとさっきから思ってたんやけどさ、結構エロい格好してんねんな。僕みたいな奴やったらイチコロかもな」


あまりにも恥ずかしかったので、半分涙目で顔を赤くしながら男を睨みつけた。

男は笑い声をあげながら路地裏の向こうへと消えようとしていた。

「あっ、そうそう。なんで正体がわかったか言わせて貰うで」

後一歩で影の向こうに消えようとしていた男が話しかけてきた。

「姿変えれても、魔力は抑えられへんみたいやな」

その言葉を吐くと、男は影の中へと消えていった。


さて、なんとか終わった。後はここから出れば

と思った時に、尻の方から変な感触を感じた。

何か硬いものを後ろから押し付けられてるようなそんな感じだ。

触ってみると、何かが俺の下着の中に入り込んでいた。

アイツ…人の尻触るついでに下着の中に変なもの入れやがって…

そう思いながら下着の中にあるもの取り出した。

それは紙だった。

いや、厳密に言うと何かを紙で包んでいるものだ。

なんだろうと思って紙を開けると、何か文字で書かれた紙と、謎の木の板があった。

紙にはこう書かれていた。

『もしこの紙を開けてるんやったら、その木の板を耳に当ててください。少し、面白いこと話しますわ』

訳がわからなかったが、俺はこの手紙に書かれた通り、中に一緒に入っていた木の板を耳に当てた。

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